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Sisters:WikiWikiオンラインノベル/賭けイクスティンクション、そして頭足類
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'''<big>1 タコ部屋は嫌だ!</big>''' 俺は大学九年目のさえないバンドマンだ。 ああ、それにしても、バンドっつーのはものすごく金がかかるものだ。 使う機材を買うために借金、それを返すためにまた借金。 借りた金には雪だるま状に利子が増えていって、今じゃもうそれはそれは天文学的な額だ。むろん、大きい方のな。 ついでに、返済期日は明日と来た。このままじゃあ、黒服の野郎どもにひっとらえられて<span class="plainlinks">[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%82%B3%E9%83%A8%E5%B1%8B%E5%8A%B4%E5%83%8D タコ部屋]</span>行きだぜ。全く笑えねぇ。 それで…俺は考えたんだ。この状況を打開する方法を… そう。ギャンブルさ。 なに、お前たちは俺を馬鹿だと思うかい?ハハ、そういうのは最初の自己紹介でさっさと気づくもんだぜ。 さて、そうこうしてるうちに着いちまった。地下賭博場だ。ここではもう日本国憲法は通用しねぇ。 「やぁ、そこの若者。」 随分としっかりスーツを着こんでるジジイだ。いかにも弱者をカネの力で弄んでそうな、といったら大体のイメージはできるかい? 「なんだい、爺さん。ギャンブルのお誘いか?」 「見たところ、アンタは金に困ってるのぉ?」 「ここに来るやつはみんなそんなもんだろうに。」 「ウァッハッハッ、ちょうどいい。ワシには金が腐るほどあるんだ…」 「『腐っても鯛』っていうだろ?捨てちまうくらいならよこしてくれよ。ああ?」 「そうはいっても、ワシの大事な箱入り娘はアンタの顔すら見たことがない。お見合いから始めるのが筋だろう?」 そう言うと、ジジイはおもむろに箱入り娘…もといスーツケース入りの天文学的な(もちろん、大きい方の。)大金を俺に見せてきた。 「アンタの[[Sisters:WikiWikiオンラインショップ/ほしいものリスト|ほしいもの]]は何だい?」 俺は絶句した。 「そ…それって…」 「んん…?よく聞こえないのぉ…」 ジジイはにやりと笑い、こう言った。 「ほしいか?」 「ハハ…当然さ…!」 「………ほう。」 「では…アンタがワシにとある『ゲーム』で勝ったら…」 「お望みの物をくれてやろう。その代わり、もしアンタが負けたら…ガハハ、タコ部屋行きにしてやろう!」 「…乗ったぜ、その勝負。」 「ウァッハッハッ!ではやろうか。その『ゲーム』とは―――」 「『[[イクスティンクション]]』だ。ルールは分かるよのぉ?」 「イクスティンクション…面白え!」 '''<big>2 賭けイクスティンクション</big>''' ハハハ…このジジイ…大誤算をしでかしたな… 何を隠そう、この俺は…『イクスティンクション・ワールドカップ』の初代王者なんだよ! しめた!タコ部屋行きの明日が来る可能性が完全に"消滅"したぜ!ヒャッハー! 「ローカルルールとして、『殲滅』で捨てる手札は三枚、それも能力カードに限るものとしよう。そのほうが愉快に違いないからのぅ!」 「よし、では…ゲームスタートじゃ…」 『独占』という声が同時に放たれた。 俺の手札は「密室」「輪廻」「6」「4」「2」の五つだ。<ruby>密室<rt>シールドルーム</rt></ruby>が出たのは幸運すぎるぜ…! 「ほう、アンタ、何を独占しとるんだね?」 「おいおい、俺が答える筋合いはないぜ。」 「ウーーーム、答え次第では『平和的なトレード』をしようと思っとったんだがなぁ…」 「3000万円、これでどうじゃ?」 このジジイ…金でゆすってきやがる…!三千万円…流石にデカすぎるぞ…!どうする…俺…どうする… 「…俺が…俺が独占しているのは『密室』だ。」 「ウァッハッハッ、ワシは『7』じゃ。トレード成立じゃのう。」 そしてジジイは紙袋を俺に投げつけてきた。中には確かに3000万円が入っていた。 大丈夫。俺は初代王者だ。シールドルームごとき、無くても余裕で勝てる…! 「ククク…では、『透視』そして『強盗』じゃ。」 「なっ…!?」 まんまとハメられた!クソ!金で判断を狂わされた!「密室」も「7」も失っちまった! 「ウァッハッハッ!!!実に滑稽じゃのぅ!!!」 「チッ…」 ―10分後― ああ、今日は、今日は…絶望的に運が悪い! 『密室』をトレードして以降、ただの一つも能力カードが出ねぇ…! 運よく『6』を二枚で独占しているからジジイは上がれていないが…リーチになるのも時間の問題だ。 「ぬぅ…『消滅』じゃ…」 素晴らしいタイミングだ! 「ハハハ、ざまぁ見やがれ!」 「おっと、いつワシが『消失』を持っていないと言った?」 「なに…待てよ、独占宣言をしていないじゃないか!」 「ウァッハッハッ、そんなもの一番最初に済ましたわい。『独占』しているカードが一種類だけだとは言っていないぞ?」 「くっ…」 「ほれ、『剽賊』じゃ。」 「ハハ…『2』と『4』か…いいチョイスじゃないか?」 「ヌワッハッハ!威勢だけは良いガキめが!」 まずい…ジリ貧だ…せめてあのシールドルームをどうにかしないと… 「よし…『一擲』だ。そろそろ運とやらが俺に味方してきたんじゃないか?送るのは『1』だ。陥落しろ!シールドルームゥゥゥ!」 「ほう…『2』と『4』と『3』か…なかなか良い選択じゃのぅ?」 「ぐぬぬ…」 このままでは…このままでは非常にまずい!タコ部屋行きの未来が息を吹き返し始めてやがる! 考えろ…この状況を打開する方法を… 「今度はワシの番じゃ…『再生』で『一擲』を入手して…アンタに送るのは『交換』じゃ。ま、この密室がある限りイミは無いがな。ガハハハハ!」 「やりやがったか!」 「ほれ、『6』二つと『2』…われながら良いチョイスじゃ!」 まずいまずいまずいまずい!俺の唯一のポテンシャル、「『6』の独占」が無くなっちまった! もう時間が残されていない…この「6」が再び山札の上に上がってくる前に、なんとか優位に立たねば… 「『輪廻』で『消失』、『剽賊』、『一擲』を入手し…『一擲』を使用する。送るのは『3』だ。」 「『強盗』と『寄生』と『5』か…チッ、ついとらんのぉ。」 「さて…じゃあ爺さんの手札の三枚の内…一つが『密室』、一つが『7』、一つが『消滅』というわけか。」 「ウァッハッハッ、よく観察しておるのぉ。しかし、『密室』の効果によって『剽賊』は使えないぞぅ?」 「ワシの番じゃ…ワッハッハ!愉快なカードを引いてしもうたわい!」 「『投下』と『消滅』…これが何を表すかわかるかね?」 「『嫌がらせドロップ』…!」 「送るのはもちろん『消滅』じゃ。」 「ほれ、『3』か…まぁ、『消失』を使わせたのは大きいぞ!」 「俺のターン…『天眼』か。」 「ああ、ちょうどいい。ちとワシはトイレに行ってくる。今はまだアンタのターンの途中だが…どうせアンタはその手札じゃ何もできんしな!」 「いや、できることならあるぜ。…イカサマさ!」 「…それをしたらどうなるか…分かるな?」 「俺は大学五留だが、『[[Sisters:WikiWikiオンラインショップ/ほしいものリスト|ほしいもの]]』をむざむざ遠ざけるほど馬鹿じゃないぜ?」 「ウァッハッハッ!」 …さて…ああはいったものの…哀れなジジイよ、イカサマ以外にも…この手札でできることならあるんだよ。 '''<big>3 逆転、そして頭足類</big>''' ―5分後― 「ウァッハッハッ!リーチじゃ!」 「もう『6』以外の全数字カードを揃えやがったか…」 「ヌワッハッハ、そのうえ『密室』もあるぞ!後は『6』が山札に上がってくる時を待つのみじゃ!」 「おっと…すまないな、爺さん。『殲滅』を引いちまった。」 「ぬう、『密室』を捨てるのは惜しいが…ローカルルールはもちろん覚えているよな?数字カードに影響はない!」 「おい、アンタ…何をぼうっとしとるんだね?早う能力カードを捨てなされ。」 「ハハハ…ハハハハハハハハハ!」 「な、なにがおかしい…」 「おいおいおいおい、いつ俺が『消失』を持っていないと言った?」 「馬鹿な!『消失』が捨てられたのは『6』が捨てられた時よりも前!それに独占宣言もしていないじゃろうが!」 「独占宣言を聞いていないのは爺さんの責任さ。なぜなら俺は『消失』を…」 「爺さんがトイレに行ってるときに手に入れたからな!」 「アンタ…ワシの忠告を聞いとらんかったのか?イカサマをするやつに与えるものは無い。帰れ!」 「イカサマ?なんのことだ?俺はちゃんと…正式なルールに基づいて、山札から『消失』を手に入れたんだぞ?」 「な、なに…!?」 「爺さんは『剽賊』と『天眼』のカードを見たことがあるかい?」 「何を言っておる、ついさっきもそのカードは見たじゃろうが。」 「うーん、爺さん、変なプライドは捨てて老眼鏡を買ったほうがいいぜ?」 {| class="wikitable" style="border:1px solid #ffffff ; background-color:#ffffff" | style="background-color:none ; border:none" |[[ファイル:剽賊.jpg|代替文=|フレームなし|リンク=イクスティンクション]] | style="background-color:none ; border:none" |[[ファイル:天眼.jpg|代替文=|フレームなし|リンク=イクスティンクション]] |} 「山札に干渉できる効果!?」 「まぁ、知らないのも無理はない。なにせ、かの[[メインページ|世界の全てを網羅するサイト]]にすらこの情報は載っていないんだからな。」 「そして俺は…『交換』を持っている。」 「そんな…馬鹿な…」 「ありがとよ、爺さん。俺のために数字カードをリーチにしてくれて。」 「クソ…ワシのカードが…まあいい、ワシの番じゃ…」 「ッ…!『6』じゃと…!?」 「ハハ、お生憎様。ああ、[[ソーイエバ(感動詞)|そういえば]]…たしか爺さんが<ruby>一擲<rt>ダンピング</rt></ruby>で俺の『6』を捨てさせたとき…」 「二枚まとめて山札に戻したよな?」 「ま、まさか…」 「俺のターンだ。そして俺が引くカードは…」 「よし、『6』だ!」 「おのれええええええええええええええ!!!!!」 「数字カードは全部そろった。俺の勝ちだぜ、爺さん。」 よし!!!これでタコ部屋行きの明日が来る可能性は…完全に"消滅"したぜぇぇぇ!ヒャッハァァァ! 「認めよう。ワシの敗北じゃ…」 「約束通り、アンタに…先程にもほしがっていたものを渡そう。」 そういってジジイは鞄をあさり出し、何やらくすんだ白色の、乾燥している扁平な何かを俺に差し出した。 「…は?約束のあの大金は…?」 クソジジイはにやけながらこう言った。 「ああ…あの時はびっくりしたよ。」 「アンタに、『ほしいものは何だ』と聞いて…『<ruby>金<rt>カネ</rt></ruby>だ』と即答すると思っていたが…」 「何やらごにょごにょ言っていて、よく聞き取れなかったから…ほんの冗談のつもりで…あてずっぽうで…」 「'''<big>『干しイカ?』</big>'''」 「なんて言ってみたら…フフ…アンタは『当然さ!』だとか言い始めるんだものな!」 「ウァッハッハッハッハッハッハッ!ウァァァァッハッハッハッハッハッハァァァァッ!」 俺は結局、ギャンブルであの「天文学的な額(もういまさら補足する必要もあるまい)」を手に入れることはできなかった。 あの三千万円だけで返済に足りるはずもなく、こうして俺は今、皮肉にもタコ部屋で働いているっていうわけだ。
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