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Sisters:WikiWiki麻薬草子/叙述トリックについて
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{{警告|内容=この文章には記事「[[叙述トリック]]」のネタバレが含まれています。<br>必ず当該記事を読んでから、この文章をお読みください。}} {{格納|名前=「[[叙述トリック]]」を読んだ人のみ、続きをお読みください。|中身= {{格納|名前=最後通牒です。ほんとに読みましたね?|中身= 拙作「叙述トリック」を執筆するにあたり、私はあることを意識した。それは、'''あくまで記事であること'''である。 単に叙述トリックの使われた物語になってしまえば、それはノベルという方が相応しくなってしまう。物語の形式を取っていても、あくまで叙述トリックとは何であるかを解説する文章であろうとした。 その出来はともかく、そうしようとすると、やはり各種叙述トリックを実践したくなる。一例を挙げるだけでは弱い。では、叙述トリックにはどんな種類があるのだろうか? 私は、2つの観点から、それぞれ2つに大別できると思う。 1つ目の観点は、'''トリックの意義'''。そう、記事中でも述べた、'''意味あり叙述'''と'''意味なし叙述'''である。詳しい説明は記事中にあるため、割愛させていただく。 では、作中のどれがどっちに当たるか。言うまでもないかもしれないが、「兄は2人いた」という叙述トリックが意味あり叙述、「語り手たちは囚人だった」という叙述トリックが意味なし叙述である。前者はプリン盗み食い犯人当てに関わるが、後者は全くの無関係だからだ。 2つ目の観点は、'''伏線'''だ。いや、伏線という観点から叙述トリックを分類するのではなく、叙述トリックという観点から伏線を分類すると言った方が適切かもしれない。その前に、叙述トリックの伏線について少し書こうと思う。 叙述トリックは伏線なしでは語れないほど、両者は密接な関係にある。まあ当然なことではあるが。叙述トリックでは、作者が故意に記述をコントロールすることで、読者になんらかを誤認させる。だが、読者が誤認するということは、その誤った解釈をする方が自然ということである。だから、何も工夫がされていなければ、読者は怒るだけである。「いや、どう考えてもこの解釈が正しいだろう!」と。それを防ぐのが伏線の役割だ。「いいえ、あなたの解釈はあり得ない。だってここにこう書いてあるじゃないですか」と、納得させるのだ。このように、叙述トリックには伏線が必要不可欠なのだ。伏線が効果的かつ自然であればあるほど、それはいい伏線だと言える。 閑話休題、ならば伏線はどのように分類できるか。私は、その特性ならびに発動する時によって、2つに大別できると思う。その2つとは、'''論理的伏線(解決編伏線)'''と'''感覚的伏線(再読時伏線)'''だ。ただし、意味あり・なし叙述とは違い、これらの概念は完全に私のオリジナルである。 では、詳細について述べていこうと思う。まず、論理的伏線とは、'''それが伏線であることに気づくには、論理立てて考えないといけない'''ものだ。わかりにくいから、「叙述トリック」から例を出そう。例えば、部屋のドアの開き方のくだりである。これは、まず記述から「ドアの開き方が違う」ということに気づき、そこから「部屋が別」「つまり人も別」と考えを働かせていかねばならない。また、お誕生席云々も同様である。このような伏線は、模範解答を示さないと、そもそも伏線であることに気づいてもらえない。そうなっては伏線の役割を果たせない。だから、'''解決編で回収が行われる'''。そのため、驚きは解決編を読んでいるときに訪れる。これが、論理的伏線ないし解決編伏線だ。 もっとも、いわゆる<ruby>最後の一撃<rt>フィニッシング・ストローク</rt></ruby>のために、種明かしを必要最低限にし、詳しい説明を解説がやるなんて作品もある。解説がついてない単行本じゃあ売れなかったのもわかるよ。だって意味不明な終わり方だもん。 では次に、感覚的伏線。これは、論理的伏線とは反対に、'''理解に論理的な思考がいらない'''伏線だ。なら読まれた瞬間見破られるんじゃないかって? いや、他の記述によって、誤った解釈に誘導されてしまうのである。そのため、誤認が明らかになった後、もう一度読んでみると、「どう考えてもこう解釈する方が普通じゃないか、なぜ気づかなかったんだ!」と歯がみすることになるのである。[[楽しい楽しい|楽しい]]。この瞬間のために生きてるまである。 このように、再読時に効果を発揮するから、再読時伏線と命名した。逆に、このような伏線は'''あまり解決編で回収されない'''。なぜなら、作中人物は至って当たり前の言動をしているだけで、読者が勝手に勘違いしているだけだからである。非叙述トリック、例えば密室トリックなどは、解明されれば登場人物も驚く。しかし、叙述トリックは違う。かかっているのは読者、かけているのは作者であり、登場人物は一切関わっていないからだ。 これも「叙述トリック」で例を挙げるなら、語り手が労働について話す場面や、登場人物がガールフレンドに「面会」しに行く場面だろうか。成否はわからないが、作者としては、再読時の驚きが増すよう意識した。単に「働いた」と書けば、まさかそれが刑務作業だと考える人はいるまい。見破られないようにするにはこれが一番確実だ。でも、驚きという面ではよろしくない。先入観なしに読めば真相が丸わかりであるような記述であればあるほど、読者の驚きは増し、叙述トリックの質は上がるのだ。 [[余談だよ|余談]]だが、個人的には論理的伏線が上手いのがとある大御所作家、感覚的伏線が上手いのがとある寡作な作家だと思っている。前者の某作品の、あまりの伏線量とスケールのデカさ。後者の某作品を読んだ時の、感嘆と多幸感、そして伏線の大胆さ。忘れがたい体験だ。叙述トリックが仕掛けられていると言ってしまった時点でネタバレになるため、大々的に言えないのが悲しい定めだ。そのくせ、あらすじや本の帯なんかには「驚異のどんでん返し!」「世界が一変!!」などと書いてある。[[死ね]]。だが、知らずに不意打たれた時の衝撃や、薄々わかっていても想像を超えられた時の感覚は素晴らしい。 追記になるが、某作を読んで、叙述トリックの可能性を最近感じた。叙述トリックは、読者に何かを誤認させるものだ。だから、読者が勘違いして思い描く「虚像」と、真相たる「実像」があるわけである。そして、この両者の間の隔たりが大きければ大きいほど、驚きは増す(傾向にあると思う。一概には言えないけど)。桃太郎が仲間を連れて鬼退治に行く物語だと思っていたのに、実は亀に連れられて竜宮城で享楽に耽る話だったらびっくりするだろう。しかし、限界というものがある。亀に連れられて竜宮城で享楽に耽る話を、桃太郎が仲間を連れて鬼退治に行く物語に見せかけるのは至難の業だろう。どんなトリックを使えばいいのか見当もつかない。 しかし、しかしである。私は先日、某作を読んだ。<s>君も読め!</s> その作品は終盤、怒涛の展開を迎えた。私は何が起こっているのか、しばし理解できなかった。ありえないことが語られているのである。しかし、混乱した頭でなおも読み進めると、朧げながら別の「像」が見えてきた。ありえない像だった。そこで私は焦ってページを巻き戻した。なんとなんと、ありえたのである。まさに離れ業であった。唖然呆然、世界が見事なまでのシライ3を決めたのである。 この離れ業を成り立たしめたのは、叙述トリックの組み合わせ技であった。明言は避けるが、二つのトリックを用いて二つの誤認を生じさせ、実像とはねじれの位置にある虚像を、読者の目に映し出したのである。叙述トリックは、あまり種類があるわけではない。亀を雉に、玉手箱をきび団子に、乙姫を鬼に見せかけるトリックは存在しない(いやあるかもしれんけど)。だが、たとえ単純なトリックでも、それらを組み合わせることで、全く違う虚像を見せることができるのだと、私は知った。叙述トリックが10しかなくても、そこから二つ選ぶ組合せは45にものぼる。叙述トリック界の未来は、まだまだ明るいなあと、私は嬉しくなったものである。 ここまで、私が叙述トリックについて考えることを書いてきた。「叙述トリック」を書いてみて、やはり名作と言われるものには到底及ばないなと感じた。発想もそうながら、驚きを演出するための筆力と大胆不敵さ。プロの作家はやはり物凄いと思い知った。拙作は優秀な叙述トリックものとは言えないだろう。でも、もしあなたがこれをきっかけに、叙述トリック作品に興味を持ってくれたなら、そしてあの驚きを味わってくれたなら、これほど嬉しいことはない。でも、「叙述トリック 名作」とかでググってくれるなよ? 絶対な? 広範にミステリに手を出して、偶然ぶつかるのが一番幸せな読み方だぞ?? では、あなたが、ついでに私も、これからいい叙述トリック体験ができることを祈り、締めさせていただく。 }} }}
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