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多目的C教室
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==一枚小説== 文芸部室にある、一行詩とかにも使われる例の紙を、一面ちょうど埋めるくらいの量の文字で物語を書くという催しである。[[利用者:キュアラプラプ]]が勝手に開始した。 ===健康な細菌「冶金」=== <div style="border:1px solid #c0c0c0; padding:0 1em; width: fit-content"> いくばくかの空間を不定形に占めて存在する彼は、今日も宇宙のどこかの惑星に根を張る知的生命体のもとで厚遇の限りを受けていた。彼の表面には光沢が見え、質感としては我々の知る真鍮に近いものがある。彼は、少なくともいまは逆三角錐のような形状をとっていて、これは丁度その知的生命体をデフォルメしたように感じられるのだった。 彼はもちろん知的生命体のうちの一人だとか、また別種の知的生命体だとかいうわけではなかったのだが、どういうわけか我々が感情だとか言うところの概念を保有していた。彼は、自分をきらびやかに飾りたてられた台座に設置して取り囲んだり、またある時には自分を熱と光が激しく反応する小さい洞穴に放り置いて形状をつくり変えたりするその知的生命体の奇妙な行動を、怪訝に思うばかりであった。 ある時、今度は円盤を象っていた彼のとなりに、白く輝く円柱様のオブジェが設置された。彼女は彼同様に、その知的生命体たちに不可解な崇拝と融解を与えられる立場にあったが、彼から彼女に自身同様のいわゆる感情があることを確認する術はなく、 じっさい彼女にそういうものがあると確認する手段は世界のどこにもなかった。しかし彼は、これが他ならぬ彼自身にも当然適応される事実であることに気づいてからは、角度によっては虹色にも輝いて見える彼女のその美貌にたじろぐばかりであった。 知的生命体の一個体が、彼と彼女を同時にその小さい洞穴に入れることを思いついた。炎が焚かれ、そのゆらぎの度に彼は彼女との境界を失くしていった。彼女の居たはずの空間を新たに占領してしまったせいで、彼女は存在として消滅してしまったのではないかと彼は不安になったが、すぐにそれは杞憂だったと分かった。彼はこのとき、彼女と意志を疎通させることに成功したのであった。彼らは二重らせんの形状をとって、知的生命体の、我々の言うところの歓声に相当する祝福を受け、すこし照れてしまったのであった。 </div> ===阿久名喬「雨滴」=== <div style="border:1px solid #c0c0c0; padding:0 1em; width: fit-content"> 雨が止みつつあった。その季節には珍しい長雨で、数多の水滴が家々の瓦を柔らかい黒に濡らしたが、それもようやく終わって日が少し弱いながらも街を照らしはじめた頃だった。 その雫はしばらく街路樹の高い葉の上にいた。雨にも落とされそうにない固く生命力に溢れた一枚の葉に、他の多くの雫と寄り集まって球となり乗っていたが、そこに一陣の湿った風が葉をざわめかせて過ぎ去り、雫たちは車道にできた小さな水たまりに落ちて互いに溶け合った。 アスファルトの上で出会った新たな友と交歓する間もなく、一台の車が水たまりの上を走り抜け、飛沫を派手に跳ね上げ、幾多の水滴がほんの一刹那、光を反射して煌めいた。その雫もその一つだった。彼は歩道を越えて小さな公園の芝生にできた小さな水たまりに落ちた。 数え切れない雫たちが集まり、風に揺らされて常に位置が変わり続ける水たまりの中、彼は隣にいる雫が彼女であることに気がついた。 彼は夢中になって彼女に声をかけた。どんなことを話そうだとか、彼女は彼を覚えているだろうかだとか、そういうことは全く考えなかった。ただ、また巡り会えたことが燃えるほど嬉しかった。 彼を見た彼女は、一瞬怪訝な表情をし、驚きと満面の喜びがすぐに取って代わった。それを認めた彼は、空の彼方へ飛んでいってしまいそうな嬉しさをまたも覚えるのだった。 「ぼくだ、ぼくだよ。憶えているかい」 「ええ、ええ、もちろん。あの日のことは忘れないわ」 気が遠くなるほどの、同時に昨日のことのように思い出せる以前、ある岩山で二人は出会った。別々の岩から滲み出てきた彼と彼女は、ざらつく窪みで二人きり過ごし、今まで見た景色を語り合ううちに時間はあっという間に過ぎ、鏤められた星々の下、体が気体となって澄み切った大気と一つとなって離れ離れになる直前には再会を約したこと、そういったことを二人は水たまりの流れに揉まれながら身を寄せ合い、息せき切って確かめ合った。 「ようやく会えた。君には話したいことが山ほどあるんだ。氷になってずっと山を流れていたことはあるかい」 「わたしもよ。信じられないくらい小さな部屋を行き来したことはあって」 世界が大きく景色を変えるほどの時を経て、また彼女と言葉を交わせることに、彼はこの上ない幸福を覚えていた。同時に、どんなに長い時をともに過ごした他の雫よりも、ずっと強い気持ちを抱いてしまう彼女が、自らにとって計り知れないほど大切であることを、認めざるを得なかった。 しかし、蜜月はほんの少しすら続かないようだった。公園に子供とその母親が入ってきた。黄色の雨合羽と空色の長靴のその女の子は、歓声をあげて水を跳ねさせている。近くの水たまりに片っ端から跳ね入り、その新しい雨靴で飛沫を舞い立たせる彼女は、二人の雫がいる水たまりに近づいてくる。 彼は運命の残酷さに深く悲しんだ。二人は既に、互いがまた離れ離れになることを悟っていた。しかし、彼女は笑った。 「わたし、待ってるわ。どんなに途方もない時間が経っても。だから、あなたも待っていてね」 二人は同じ気持ちだったから、多くの言葉は要らなかった。その時、子供がはしゃいだ声をあげて水たまりに跳び込み、彼と彼女は別々の方向に舞い上がって日に照らされ、ほんの一瞬、同じ色に輝いた。雨は止んでいる。 </div>
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