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二・零零事件
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==事件の経緯== ===11月24日~25日=== 生き残った少年のクラスメイトは、「少年は事件の前々日から様子がおかしかった」と証言している。 <blockquote><span style="font-size:105%"><font face="Times New Roman">彼(引用者注:「少年」を指す)は2日前の水曜日からなんか様子がおかしかったんです。社会のテストが終わった頃だから2時間目くらいか、その時からなんか思いつめたような顔して、なんかブツブツつぶやいてました。翌日はもっとひどくなってて、つぶやくというよりうなってました。頭を抱えたりなんかして、なんかもう一人の自分と戦ってるみたいな。一度「大丈夫?」と声をかけたんですけどね、力無く生返事が返ってきただけでした。いつもの様子に比べたら、明らかに異常ですよ。<br>〜生き残った少年のクラスメイト</font></span><ref name="anohi">『二・零零事件 あの日何があったのか』毎日新聞社</ref></blockquote> また、少年は事件前日の11月25日、[[Sisters:WikiWikiオンラインボード|ある掲示板]]に奇妙な投稿をしている。少年の当時の不安定な心理状態が見てとれるが、明瞭な動機には言及されておらず、少年がなぜ事件を起こしたかについての説得力のある考えは未だない。 ===11月26日=== ====事件発生前==== 少年は7時25分頃に登校し、中学3年1組の教室に入った。この時包丁を机の引き出しに隠したと思われる。クラスメイトの証言によると、登校後少年はずっと顔を伏せ、何か小声で唱えていたという。<ref name="anohi"/> ====中学3年1組での凶行==== 8時10分、早朝講座を始める号令の最中、少年は振り返って後ろの席の生徒の腹部に包丁を突き立てた。少年は素早く更に後ろの生徒の腹部も刺し、次いで右横の列に標的を移した。初めの凶行が為されたのは教室の後方だったため、クラス全体が危機を察知したときには、既に10名ほどが刺されていたという。<ref name="sin">「沖縄無差別殺人 生存者に緊急取材」『週刊新潮2021年1月号』掲載</ref> 教室はパニックに陥った。多くの生徒が手前のドアから逃げようとしたが、建て付けが悪かったためになかなか開かなかった。その間に少年は包丁を低く振り回すようにしてクラスメイトを切りつけていった。教室に居た社会担当教諭が少年を拘束しようとしたが、少年の振り回した包丁が首に当たり頸動脈が切断、失血死している。<ref name="anohi"/> ある生徒は、少年が「きしょい」「ゲロ」などと呟いていたと証言している<ref name="kei">「二・零零事件から3ヶ月--警視庁資料から判明した事実--」『朝日新聞』2022年2月26日朝刊3面掲載</ref>。ただ、パニック状態の中、発言の断片を聞き取っただけであり、信憑性には疑問が残る。 結果として、教室に居た38人(少年を除く)のうち、8人が死亡、18人が負傷した。 ====中学3年2組での凶行==== 中学3年1組から逃げ出した生徒の幾人かは、隣の中学3年2組に駆け込んだ。危険な状況であることを伝えたものの、すぐに避難する者はいなかった。教室内の人々は、悲鳴などを耳にし不審に思っていたものの、事態がこれほどまでに深刻だったとは思っていなかったという。<ref name="sin"/> 8時12分、少年が中学3年2組の教室に飛び込んできた。少年はすぐに前方の生徒に向かって包丁を振るった。立っていた生徒は腹部を、座っていた生徒は肩や首を次々に傷つけられ、数人が死亡した。教室は1組と同様にパニックに陥り、逃げようとした生徒が後方の出口に殺到した。このとき、授業を担当していた教師は足がすくんで動けなかったが、少年は一瞥をくれ何かを小声で呟いただけで、攻撃しようとはしなかった。<ref name="sin"/> この時、1人の男子生徒が少年の包丁を奪おうと試みた。振るわれた凶器を避け、手を捩り上げると包丁は床に落ちたという。別の生徒がそれを拾い上げ、走って逃げた。しかし少年は暴れて手を振り払い、近くの机を男子生徒に叩きつけた。少年は何度も机を男子生徒の胴に振り下ろした。男子生徒は内臓破裂による失血性ショックで死亡した。遺体はマスクから溢れた吐瀉物と血液で見るも無惨な状態だったという。<ref name="kei"/> だが、その間に多くの生徒が教室から避難することができた。中学3年2組では、5人が死亡、13人が負傷した。 少年は教室に残された筆箱からカッターナイフを奪い、更に隣の中学2年2組に押し入った。 ====中学2年2組での凶行==== 8時15分時点で、事態は周りにある程度伝わってきていた。中学3年の2クラスから逃げてきた生徒が職員に危険を報せていたためである。しかし職員室から大人が駆けつけるより少し早く、少年が中学2年2組の教室にカッターナイフを持って侵入してきた。 教師が状況を明確に把握できておらず、生徒たちの避難はまだなされていなかった。そんななか少年が教室に押し入り、危険を察知した生徒たちは教室後方の出口に殺到した。そして授業の担当教師が少年をなだめようと声をかけた。しかし少年は構わず生徒を追いかけようとしたため、教師は腕をつかんで止めようとした。すると少年は次のような行動を取ったという。 <blockquote><span style="font-size:105%"><font face="Times New Roman">犯人は『邪魔するな!』と叫んで腕をぶんぶん振り回した。すると運の悪いことにカッターが先生の首を切り裂いてしまった。先生はそのまま倒れました。血で真っ赤に染まった先生の姿を見て、『ああ、これはもうだめだ』と思った。先生も死ぬし、私もすぐに死ぬんだと。でも、犯人はそこで呆然としたように先生の死体を見下ろしてたんだ。返り血で真っ赤になって、そうして死体を見ながら、薄笑いを浮かべたんだ。そしてなにか小声でつぶやいて、ゆっくりとこっちを見たんだ。怖くて、慌ててみんなを押しのけて外へ出て、一目散に逃げ出した。後ろでさっき押しのけた友達の悲鳴を聞きながら。あいつは、人間じゃない。人間の皮をかぶった鬼だったんだ。<br>〜生き残った中学2年2組の生徒</font></span><ref name="sin"/></blockquote> 少年は、先の2クラスとは異なり、カッターで首筋を重点的に狙って生徒たちを殺傷していった。中学2年2組の生徒たちは、より死に至る確率の高い傷を負わされていったため、このクラスではより多い12人が死亡、4人が負傷した。 ====中学2年1組での凶行==== 隣の中学2年2組への襲撃を受け、中学2年1組では教師によって避難するよう指示が出された。しかし、目の前の廊下を中学2年2組の生徒が半狂乱になって逃げていくこと、何より教室を出れば少年と鉢合わせしかねないことから、避難しようとする生徒はほぼいなかった。そこで、担当教師は教室の扉・窓をすべて内から閉め、少年を中に入れまいとする指示を出した。施錠が完了したとき、中学2年2組の生徒・教師と他のクラスから逃げて来て急を伝えた生徒の合わせて43名が教室内にいた。 ほどなくして8時21分、少年が教室の外に現れた。扉に手をかけ、続いて窓を見、全てに鍵が掛かっていることを悟ると、廊下に立てられていた傘を取り、突き刺すようにして窓を破った。そして手を差し込んで解錠し、教室に侵入した。生徒たちは反対側の窓から逃げようと詰めかけたが、耐震用に金属製の棒がはすかいにつけられていて出づらかったこともあり、数人しかそこから脱出できなかった。逃げ場を失った生徒たちに少年は襲いかかり、次々と殺害していった。しかし教師には中学3年2組の場合同様、殺意を向けなかったという。 当時の少年について生存者は、『機械的に、事務的に殺してまわってい』たと話している<ref name="sin"/>。 結果、このクラスでは最多となる20名が死亡、9名が怪我をした。 ====事件の終結==== その頃事態を知った職員たちは、はじめの現場である中学3年の教室で救命活動にあたっていた。負傷者があまりにも多かったためにその救護で手一杯になり、少年の拘束が遅れることにつながったとされている。 一方、中学2年生の隣に教室がある中学1年生と上の階に教室がある高校1年生は、中学2年生が襲撃され始めた頃には避難を開始していた。両学年とも最初の凶行の現場である中学3年の教室から離れた方向に避難していたが、少年の移動方向と一致していたため、最後尾が少年と鉢合わせする結果になってしまった。 8時29分、高校1年生の生徒が少年と遭遇している。そのときのことを、次のように回顧している。 <blockquote><span style="font-size:105%"><font face="Times New Roman">私の教室は一番端だったから、結果として逃げ遅れることになったんです。(中略)教室は2階でしたから、階段を降りていたんです。そこでブレザーが手摺に引っ掛かってしまい、焦ってたから余計に取れなかったんです。中一の子も手伝ってくれて、ようやく取れたときに、犯人の子が教室から出てきたんです。(中略)もう足が竦んでしまって、二人で固まっていたんですけど、犯人の子はこっちを見ただけで横の棟に行ったんです。ふと我に返って中一の子と逃げ出したんです。その時背後で何人かの先生の怒鳴り声が聞こえました。ああ、これでもう大丈夫だとひどく安心したのを覚えています。<br>〜当時の開邦高校1年生</font></span><ref name="anohi"/></blockquote> 4人の教師たちが遅ればせながら駆けつけ、少年を発見した。その時も少年は、教師に気づいたものの無視して横の棟へと歩を進めた。そこで教師たちは一斉に飛びかかり制圧しようとした。しかし少年は抵抗、カッターナイフを振り回した。だがカッターナイフは切れ味が悪くなっていたこと、服を掴まれ腕があまり動かせなかったことから、2人が軽傷を負うだけに終わった。 だが取り押さえるまでには至らず、少年は着ていたジャージを脱ぐことで拘束から逃れ、教師たちから距離を取った。すると突然、少年はカッターナイフの刃を目一杯出し、自らの腹部に突き立てた。刃は胃を貫通、背中の静脈にまで達し、少年は失血性ショック死した<ref name="kei"/>。こうして二・零零事件は、8時31分、少年の自決で終結した。 ====事件直後==== *8時19分 - 那覇市消防局に最初の119番通報。 *8時21分 - 那覇市消防局から救急各隊に向け、最初の指令が出される。 *8時34分 - 現場に始めの救急車が到着<ref group="注">通勤ラッシュと時間が重なったことから、到着が遅れたという。</ref>。多数の負傷者を確認、増援を要請。 *8時38分 - [https://ja.m.wikipedia.org/wiki/トリアージ トリアージ]開始。 *8時59分 - 赤(重症)のトリアージ判定完了。 *9時00分 - 負傷者の病院搬送開始。 *9時13分 - 黄(中等症)のトリアージ判定完了。 *9時14分 - 「沖縄の高校で無差別殺人」というニュース速報が各局で流れる。 *9時19分 - 緑(軽傷)のトリアージ判定完了。 *9時36分 - 赤判定の重傷者の搬送完了。 *9時52分 - 黄判定の中等症者の搬送完了。 *10時01分 - 全負傷者の搬送完了。 *12時24分 - 犯人を除いた37人目の死亡が確認。日本最悪の殺人事件であることが確定。 最終的には救急車のべ55台、隊員73名が動員された。
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