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非自己叙述的
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==物語(二人の若者の会話)== ある日の涼しい午後のこと。<ruby>比路子<rt>ひじこ</rt></ruby>さんは言った。 <br>「ねえ、『<big>'''非自己叙述的'''</bIg>』ってどういう意味?」 <br>「『'''ある言葉の意味がその言葉自身に反していること'''』さ」<ruby>十萩<rt>じゅってき</rt></ruby>君が得意げに答えた。 <br>「ちょっとよく[[分かんな〜い|わからないわ]]。たとえば?」十萩君の説明に納得しなかった比路子さんはさらに訊きかさねる。 <br> 十荻君は少し考えてから、丁寧に答えた。「うーんと、たとえば、『動詞』という言葉<ruby>それ自体<rt>・・・・</rt></ruby>は動詞ではない。名詞だ。あとまあ、英語だと、"hyphenated(ハイフンでつながれた)"という言葉のどこにも、ハイフンなんて無いんだ<ref>ちなみに"non-hyphenated(ハイフンでつながれていない)"という言葉それ自体は、ハイフンでつながれている。よってこれも、非自己叙述的な言葉の一つである。</ref>。つまりこれらの言葉はみんな、意味がその言葉自身に反しているから、非自己叙述的だというわけだ」 <br>「なるほどね」 <br>「わかったようだね。じゃ……」 <br>「あ、帰らないで。また一つ疑問が湧いてきたの」 <br>「ええ、なんだって?」 <br><big>「『非自己叙述的』って言葉は、非自己叙述的なのかしら」</big> <br>「えっとね……うーん? もし'''非自己叙述的だとする'''と……」 <br>「つまり、『非自己叙述的』という言葉はその意味がその言葉自身に反する、ってことだから……」 <br>「'''『非自己叙述的』は非自己叙述的でない'''、ということか」 <br>「ええ? でも……」 <br>「うん、仮定(注*四行上太字部を参照)と噛み合わないよね」 <br>「そんなことがあるの?」 <br>「いやいや、仮定がつねに正しいとは限らないじゃないか。もし仮定が間違っていたならば、矛盾が起こってもおかしくはないだろう?」 <br>「確かに。じゃあ仮定を変えてみよう。もし'''『非自己叙述的』が非自己叙述的でないとする'''と……?」 <br>「『非自己叙述的』という言葉はつまり、意味がその言葉自身に反しない、ということだね……」 <br>比路子さんは結論を導いた。「そうね。つまり、'''『非自己叙述的』は非自己叙述的である'''……」 <br>「何だって? <ruby>こんなこと<rt>・・・・・</rt></ruby>はありえないのに」ここへきて十荻君はうろたえた。 <br> <ruby>そのこと<rt>・・・・</rt></ruby>に気づいて彼女もつぶやき返す。「これって……嘘……」 <br> そして彼らは言うのだった。「「私たち、入れ替わってる?」」<ref>ええっ、どこで入れ替わったのでしょうか? もう一度読んで考えてみましょう。</ref>
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