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多目的C教室
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===阿久名喬「ミセス・ブラウン」=== {{あまコン|賞=作文部門創作文の部優良賞|第=一|ミニ=あ}} <div style="border:1px solid #c0c0c0; padding:0 1em; width: fit-content"> 「それじゃあお爺さん、また明日ね」 そう言うとミセス・ブラウンは上体を乗り出して、車椅子に乗ったミスター・ブラウンの頬に軽く口づけした。ミスター・ブラウンの気難しげな表情は動かない。何十年と連れ添っている老夫婦に特有の、乾いていながらも暖かい空気をぼくは感じる。 ベテラン介助士のクリスさんがミスター・ブラウンの車椅子を押して男性棟へと戻っていく。一方のぼくはミセス・ブラウンが立ち上がるのを手助けし、彼女が女性棟の自分の部屋へと歩いて帰るのを片腕を添わせて介助する。 この老人ホームが男性棟と女性棟に分かれているのは、当たり前だがハイスクールの学生寮とは理由が違う。入居者によっては、しばしば暴力的な傾向を示す方もいる。そういうときには性別によって生活スペースが分かれていた方が都合がいいのだ。二つの建物は共用棟でつながれていて、体調が許せば夕食後にそこのロビーで会ってともに時間を過ごすのが、ぼくがここで働きはじめるよりずっと前からのブラウン夫妻の習慣らしい。 ミセス・ブラウンはぼくに体重の一部を預けながら一歩一歩を慎重に進めていく。 「あなたは力が強いし頼りになるわね」 「ありがとうございます。なんでも頼ってくださいね」 「可愛い顔してるし。若い男の子がくるなんて久しぶりだから、あなた私たちの間で大人気よ」 「ええ?」 「からかい甲斐もあるしね」 悪戯っぽい笑みを浮かべたミセス・ブラウンに、ぼくは苦笑を向けるしかない。ぼくは年上の女性に気に入られることが多い。ただし、四十歳以上年上に限り、だが。友達には「生まれるのが半世紀遅かったな」と言われた。 人生の酸いも甘いも嚙み分けてきた年上の人にからかわれて、新米のぼくが敵うわけもない。だが、今日はちょっとした反撃の材料がある。 「そういえば、クリスさんが言ってたんですけど」 「なに?」 「旦那さんのことです。旦那さんはちょっと気難しいところがあるじゃないですか」 「そうね。迷惑かけてなきゃいいんだけど」 「迷惑ではないですよ。仕事ですから。ただ、ときどき機嫌がよくなくて、素直に自分の部屋のベッドに戻るのを拒まれることがあるそうです」 「あら」 「でもですよ」 ぼくはちょっと言葉を溜めてミセス・ブラウンと目を合わせる。 「ロビーであなたと会って、別れるときにあなたがキスをしてくれた日は、旦那さんはまっすぐベッドに戻ってくれるそうですよ」 ミセス・ブラウンはどんな反応をするだろうかと思っていると、ミセス・ブラウンは「あら」と一言呟くと、突然ぼくに体を近づけて、ぼくの頬に口づけをした。 ぼくが呆気にとられていると、ミセス・ブラウンは平然と言った。 「じゃあ、これであなたはわたしのベッドに来てくれるかしら?」 言葉に窮したぼくは、やっぱりおばあさんには敵わないなと思う。 何してるの、と腕を引かれてぼくは慌てて歩き出す。案外、老人ホームも学生寮も変わらないのかもしれない。 </div>
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