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「
トンデヒニイルナツノムシ
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===第一の試練・北海道=== コクゾウムシは古くから北海道にも分布しており、クリやドングリを食害していたが、それは人間が整備した温暖な住環境あってのものだった<ref>小畑弘己. (2022). コクゾウムシと縄文人 世界最古の貯蔵食物害虫の発見. ''文化財の虫菌害''. ''83''. 3-8.</ref>。このため、明治期に屯田兵制が開始し、北海道が開拓されて急速に農村化・都市化が進行すると共に、そこにおいて収穫された大量の作物が貯蔵されるという好条件がそろうと、コクゾウムシはこの時期北海道において一気に繁殖することとなる。しかしそれも長くは続かず、明治政府が大発生したコクゾウムシによる食害を問題視して農村や都市において積極的な防除等の対策を行ったことで、多くのコクゾウムシは人間の整備した環境を離れざるを得なくなった。厳冬の北海道の奥地に移動したほとんどのコクゾウムシは寒冷な環境に耐えられず死滅していったが、ごく少数のコクゾウムシは寒冷な気候に適応した。個体数の母数が十分あったために、この適応した個体群はそのまま北海道の森林地帯に定着し、コクゾウムシから分化して'''トンデンヘイツノムシ'''という種を成した。 トンデンヘイツノムシは、寒さへの高い耐性を獲得し、体長はコクゾウムシよりも一回り小さくなったが、食性は変わらず草食だった。コクゾウムシは気温が20℃以上の状況でのみ活発に飛翔し、また飛翔したとしてもその範囲は400mほどであるが<ref>宮ノ下明大, 佐野俊夫. (2016). 一般住宅地の屋外に設置したフェロモントラップに捕獲されたコクゾウムシの記録. ''ペストロジー''. ''31''(2). 61-64.</ref>、トンデンヘイツノムシは-47~8℃までの非常に寒冷な環境でも飛翔が可能になり、また飛翔の範囲も4~5kmまで伸びた。これによってトンデンヘイツノムシはサハリン島やクリル列島、アリューシャン列島を経由して北進し、シベリア周辺の亜寒帯に分布域を広げていくことになる。
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