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叙述トリック
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==承== 小島さんはそこまで話したところで、口を閉じた。いつの間にか京極さんと三津田さんも話に聞き入っている。 <br>「いいところだが、時間だ。続きはまた後でな」 <br> そう言って小島さんは時計を指した。6時45分。僕は大きく溜め息をつくと、顔を洗いに洗面所へ向かった。 <br>「タケ君は溜め息ばかり吐いてますねえ」 <br>「そんなんやと幸運も逃げてまうで」 <br> そう言って三津田さんは銀縁眼鏡を拭き、京極さんは赤ら顔でカラカラと笑った。 <br>「そうだぞ。みっちゃん、ゴクさん、もっと言ってやれ!」 <br> 3人のおじさんは揃って僕を子供扱いする。まあ30代の小島さんはともかく、京極さんと三津田さんは還暦が近い。年の差を考えれば当然なのかもしれない。でも、気分のいいことではないからやめてくれと言ってるんだが、本人たちは改善する気がないらしい。僕はまた溜め息を吐こうとして、慌てて口を閉じた。 それから身支度をして朝飯を食って、勤労奉仕の時間と相なった。僕たち4人は同じ工場で働いている。しかも作業するブースも大抵一緒だ。仕事は楽だし働く時間も短いが、給料は信じられないほど少ない。それに、僕は根っからの労働嫌いだ。本音を言えば働きたくないが、それができたら苦労しない。 <br> 午前10時、僕たちは作られた商品をひたすら箱に詰める作業をしていた。コンベアーに乗った石鹸を片っ端から紙の箱に入れ、蓋を閉じる。ロボットでもできるだろと思うが、嘆いても詮方ない。単純作業ここに極まれりだ。まったく、暇で暇でしょうがない。 <br>「ねえ小島さん、朝の続きを話してくださいよ」 <br> そこで僕は、小島さんに話の続きをするよう催促した。少しでもこの時間を有意義に使いたいという思いが芽生えてしまったのだ。叙述トリックの説明はあらかた終わったと思うんだが、続きとは何だろう? 横の京極さんと三津田さんも、目を輝かせて小島さんを見つめている。この人たちホントに50代か? 目の輝きは小学生のそれだぞ? <br> 小島さんは「しゃあねえなあ」と言いつつも、どこか楽しげに続きを話し始めた。
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