「
古民家カフェの惨劇
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==獲物== 花火のような轟音が鳴ってから、部屋は静まりかえっていた。その後にも、ドンという音が聞こえてきた。様子を見にいった綾子さんはまだ戻ってこない。大部屋の皆は、玄関の方を中途半端に見遣って、不安げな顔で見つめ合うばかりだった。 <br> 僕の心にも、何か悪い予感が渦巻いていた。 <br>「和希……何があったのかな」 <br>「さあ……でも、きっと大したことじゃないよ」 <br> 千佳が不安そうに問いかけてくるが、ぎこちなく気休めを言うことしかできなかった。僕の脳内では、あの音がぐるぐるとリフレインしている。まるで、花火のような、爆発のような、それとも……。 その時、廊下を歩く足音が聞こえてきた。それだけ部屋は静まっていたのか、と驚く。中村さんが、廊下に続く襖を開けた。 <br>「綾子さん、何があったんで……」 <br> 中村さんの表情が変わった。目を瞠って驚いた声を出す。 <br>「あんた、種岡の倅か? どうし」 <br> 轟音と共に、中村さんの体が吹っ飛んだ。机の上にどさりと倒れ、胸に空いた黒々とした穴から血の池が広がっていく。 <br> 誰も、動けなかった。わずかな物音すらも発さず、ただ銃声が耳の奥でわんわんと反響している。 <br> ドンっと今村さんの頭が吹き飛んだ。お盆が手から滑り落ち、襖の横に立っていた体が、ごとりと崩れ落ちる。 <br> それが合図だったかのように、人々は弾かれたように動き出した。幾重もの悲鳴が交錯し、頽れ、逃げ出し、飛び退る。約半数はその場で硬直し、残り半数は縁側から庭に飛び降りた。僕は、動けなかった方の半数だった。ようやく、脳が事態を把握する。銃撃だ。廊下の奥に、銃を乱射している殺人鬼がいる。 <br> また一人、腰を抜かしていた福田さんが撃たれた。腹に風穴が空き、痙攣する体が血溜まりに沈む。 <br> 僕はやっと立ち上がった。心臓を鷲掴みにするような恐怖に襲われる。固まっている千佳を立たせる。 <br>「にっ、逃げないとっ」 <br> 縁側に走ろうとして、踏みとどまる。ここから廊下は死角になっているから、犯人が廊下のどこにいるのかわからない。もし犯人が廊下のすぐそこまで来ていたら、縁側は射角に入る。無防備な背中を、廊下に向けることになる。逃げるべきは、逆じゃないか? <br>「こっち!」 <br> 千佳の手を引いて走る。襖を勢いよく開け、大部屋から飛び出す。廊下のすぐそこに、犯人の姿はない。今のうちだ。中央廊下と部屋を挟んだ北廊下に駆け込む。 <br> 中央廊下からは死角に入った。だが、今にも廊下の先から殺人鬼が現れるような気に襲われる。 <br> 逃げろ。どうする? どうしたらいい? 逃げる? どこに? どこに逃げればいい? 外。ここから逃げないと。橋を渡って外へ。 <br>「かずっ」 <br> 何か言おうとした千佳の口を慌てて塞ぐ。こちらの位置を知られてはまずい。 <br> 玄関は廊下の正面だから危ない。靴は置いたまま、庭を走って逃げるべきか。小声で囁く。 <br>「縁側から庭に出て橋まで走る。いいね?」 <br> 千佳が頷くのを見て、縁側に続く木戸に手をかけた、その時だった。 <br> ドン! ガシャン。銃声が、木戸の{{傍点|文章=外}}から響いた。 <br> 違った。犯人は廊下を大部屋に近づいてなどいない。玄関から射撃した上で、そのまま建物の脇に回ったのだ。{{傍点|文章=人々が庭を走って橋に向かうのを想定した上で}}。 <br> 叫び声をあげながら、誰かが縁側に駆け上がってくる。千佳が横の部屋に通じる襖を開けた。カラリと木戸が開き、学さんが廊下に飛び込んでくる。 <br> 開いた木戸の隙間から、そいつの姿が見えた。種岡光。その顔に下卑た笑みを張り付かせて、銃をこちらに向け……。 <br> 強く手を引っ張られ、肆ノ間に転がり込んだ瞬間、銃声が轟き、頭上を弾が突き抜けていく。ビリビリと部屋が揺れ、ガシャリと無機質な音が聞こえた。 <br> 地面を掻くように立ち上がって、倒れるように中央廊下にまろび出る。そのまま向かいの襖を開け、厨房に入ると襖をぴたりと閉ざした。またどこかで銃声が鳴り、弾かれたようにしゃがみ込む。 <br> 千佳が僕の腕をかき抱いた。涙目で、体が震えているのが直接伝わってくる。僕も同じくらい震える手で、千佳の肩を抱いた。 <br> 種岡から隠れた途端、種岡がどこにいるかわからず、恐怖に襲われる。襖の向こうに、もう立っているのではないか。銃口をこちらに向けて、次の瞬間には撃たれているんじゃないか。いや、もう僕の後ろに……。 <br> そうだ、警察に通報しないと。僕はポケットからスマホを取り出し、110番に発信しようとして、圏外の表示に気づいた。噓だろ? 電波は通っていたはずだ。千佳もスマホを見て、首を振った。通信が途絶されている。これも種岡の仕業なのか? <br> いつの間にか銃声は途絶え、早鐘を打つ自分の心音しか聞こえない。息を殺して部屋中を見渡しながら、僕は悟った。 <br> これは、狩りだ。動物を追い詰め、一匹ずつ撃ち殺していく。怯えて隠れることしかできない僕らは、獲物なのだ。
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