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==脚注== <references /> <span style="font-size:150%">音を立てるな</span> ---- とりあえずメモを残しておく。あの"耳"は自身の存在に気づいたものを逃がさない。奴は音を聞くことで俺たちを見つけるらしい。だから絶対に音を立てるな。奴はあらゆる音を聞いている。俺の家族は叫んじまって全員死んだ。 大丈夫、音を立てずにいる分には奴は気づかない。どうやら見えてはないらしい。まあ、ただの耳だもんな。まったく、音がしないキーボードを買っといてよかったぜ。 おっと、<ruby>[[トーク:空耳|会話]]<rt>[[トーク:空耳|トーク]]</rt></ruby>をするのはやめといた方がいい。あっちは"聞かれる"からな。 これはただの俺の仮説にすぎないんだが、ああ、あの「空耳」の正体についてだ。 あの"耳"は、俺たちの耳の"母体"のような存在なんじゃないか? 画面越しじゃわからないだろうけど、奴は今、俺の真上の空に浮かんでいる。いや、どうだかな、奴を知ってしまった全員の頭上にいるかもしれない。知ったこっちゃないけどな。 あの"耳"、よーく見てみるとなんだかブツブツしてたんだよ。そう、普通の耳が集まってあの大きい耳を形成してたんだ。しかも、その小さい耳は消えたり現れたりしながら、それでも大きい耳は一定の形を保ってた。 写真は音がなっちまうから取れねぇが…もし奴が近くにいるなら、音をたてないように注意して確認してみると良い。 ついさっきの話だ。弟が死んで、俺以外の家族が全滅した時。俺は奴が憎くて憎くてだな。 何を思ったか…音を立てないように自分の耳を切り落としてみたんだ。くそ痛かったぜ。 そしたら…"小さい耳"の一つが血を吹いて消えたんだ。もう一つ切り落としてみると、また小さい耳が一つ血を吹いて消えた。 それで俺はこう考えた。俺たちの耳は、一瞬ずつ"母体"と俺たちの頭の横、つまり脳ミソと接続される場所とを行き来しているんだ。 このとき"すべてを聞く耳"として一瞬機能していた俺たちの耳に残った音を、俺たちの脳ミソが周辺で起こった事象と結びつけることで生まれるのが"聴覚"となり、それとは逆に、結び付けられなかった"耳に残った音"がいわゆる幻聴にも近い"空耳"ということになる。「掘った芋いじるな」みたいなのはその中間といったところか。 それで、奴が自身の存在に気づいたやつを殺すのは、俺みたいにわざと耳を切り落とすやつをすこしでも減らすためなんじゃないか? 小さい耳、つまり俺たちの耳が全部なくなったらあいつも消えるんじゃないか? ああ、いや、やっぱり忘れてくれ。粗が多すぎるな。それに、耳を切り落とした云々ってのも嘘だ。俺にそんな度胸は無いさ。 まあしょうがないだろ。人間ってのは理不尽な化け物に対して何かと納得できる理由をつけたがるものなんだよ。 一つ大きな疑問がある。なぜあの"耳"は、俺たちの場所を音からしか見つけられないくせに、俺たちが奴を気づいていることは理解しているんだ?なぜ俺たちを見ることさえできない"耳"が、俺たちの頭の中を分かっているんだ? もしかしたら、たまたま最初に発見されたのが"耳"なだけで、実際には俺たちの"気のせい"の数だけ、目も、脳も、空に浮かんでるんじゃないのか? いや、もう考えるのはやめだ。あのニュースは全世界で報道された。きっとどこかの器用な学者が音も立てずに奴の正体を解明してくれるだろうさ。それか……どの学者も死ぬかだな。 あーあ。夢かなあ。これ。思いっきり叫んだら叫んだら叫んだら起きられるかな。 やってみようかなあ。嫌だ。怖い。あああ、怖くないけどさ。だって聞かれてるんだからそのくらいはなあ。 おかしい。絶対におかしい。空に耳が浮かんでるわけないだろ。下手なコラ画像だろ。 馬鹿なこと言うなよ。俺の家族を殺したのは俺じゃないはずだ。じゃあ何があった?音を立てずに人を殺す人がいるのか? 実はあんまり覚えてないのかもしれないな。狭い。皮膚から自由をもらいたい。 分からない。分からない。全く分からない。 死にたくない。死にたくない。俺はまだ死にたくないんだ。待ってればきっと助けが来る。まあ、知らねえけどな。そうでも思わないとやっていけない。 ああ くそ [[ファイル:空目.png]]
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