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トンデヒニイルナツノムシ
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===第三の試練・月面=== トンデヒニイツノムシの分布域は基本的に北アメリカ北部に留まり、それ以上自然に南下することは無かったが、アラスカ周辺のエネルギー資源をカナダの都市部や南方48州に輸送する長距離トラックや船舶、飛行機などに偶発的に侵入して、個体群レベルで南方に移動した例はしばしば確認されていた。このようにして運ばれてきたトンデヒニイツノムシも南方の既存の生態系に定着することはなく、ほとんどの場合自然に排除されたが、やはりコクゾウムシの一種であるゆえに家屋などの人工的な環境に住み着いて数世代の間繁殖することが稀にあった。このような例の中で最大の規模感を誇ったのが、テキサス州に存在するNASAの宇宙センターの一つ、ジョンソン宇宙センターにおける事例だった。ジョンソン宇宙センターは最大の有人宇宙飛行の訓練施設であったが、1968~69年ごろここに住み着いたトンデヒニイツノムシが配管等の内部で秘密裏に増殖し、ひどい時にはどの部屋に行ってもこの昆虫がいるという有様だったという<ref>この時期のアメリカ合衆国は、宇宙開発競争においてスプートニク1号を打ち上げたソ連に後れをとっていたために、一刻も早い月面着陸の実現を強硬に推し進めていた。そのため、宇宙センターの衛生環境へは十分なリソースが割かれていなかった。1969年までにセンター内のトンデヒニイツノムシは完全に駆除されたが、NASAはアメリカの科学技術の信用を守るためこの出来事を半世紀の間公表しなかった。</ref>。この研究施設内で人工的に再現された、放射線の暴露等を含む疑似的な宇宙環境の中で、一部のトンデヒニイツノムシが変異的に異常な耐久特性を獲得したことが示唆されている。例えばある職員は、数匹のトンデヒニイツノムシがEVA(宇宙船外活動)訓練のために疑似真空状態となった船室で活動していたと記録している。 1969年、アメリカ合衆国がアポロ計画の完成としてアポロ11号を打ち上げる際、数十匹のトンデヒニイツノムシがアポロ11号司令船船内の保管庫に紛れ込んだ。アポロ11号はサターンV型ロケットに搭載され、NASAが有するロケットの打ち上げ施設であるケネディ宇宙センターにおいて地球を離れたが、これらのトンデヒニイツノムシはNASAの何らかの輸送手段に侵入して、ジョンソン宇宙センターからケネディ宇宙センターに直接移動したと見られている。これらのトンデヒニイツノムシの中には、ジョンソン宇宙センターの環境下で異常な耐久性を獲得した個体が複数存在したことが確実視されている。当該集団の一部または全部は、アポロ11号が月に到着し、人類初の月面着陸が成功裡に行われる中で、何らかの経路によって司令船を脱出し、密かに月面に降下したようである。異常な耐久性を持つ複数体のトンデヒニイツノムシは、船外宇宙空間に完全に適応し、生存することができた。生命の無い過酷な環境にもかかわらず、この集団は放置されたゴルフボールや旗といった繊維質の記念品はもちろん、変異した食性によって宇宙船の破棄された部品や月面探査機のデブリなどまで捕食することで、生命活動に必要な栄養を得ていた。特に後者の「食物」は、人間の様々な月面探査プロジェクトによって以降も定期的に供給され続けたために、この集団が安定して繁殖するのを助けたと考えられている。こうしてこの集団は月面に完全に定着し、トンデヒニイツノムシの月面に分布する地理的品種である、'''トンデヒニイルナツノムシ''' (英: Tondenheinuit '''luna''' weevil) という亜種として分化した。トンデヒニイルナツノムシは他の生物種が存在しない月面環境で完全な優位を得<ref>[https://ja.wikipedia.org/wiki/月面のクマムシ クマムシの群れが突如やって来たこと]もあったが、<ruby>乾眠<rt>ねむ</rt></ruby>っている隙に残らず捕食し絶滅させて難を逃れたという。[[筋トレするクマムシ|筋トレ]]しないクマムシの物理攻撃への弱さがはっきり出た形となった。</ref>、最終的に月面全土に分布するようになったが、探査機の映像技術で捕捉できないサイズだったことや<ref>トンデヒニイルナツノムシの体長はトンデヒニイツノムシよりもさらに小さくなり、前述の通り0.7~1.5mmに落ち着いていた。</ref>、月面の岩石を回収するローバー等を本能的に避けていたために、地球に持ち帰られるサンプルに混入することも無かったことから、人類は月面に降りることをしなかった半世紀の間、この亜種の存在に気付くことはなかった。
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