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Sisters:WikiWiki麻薬草子/記事再定義考
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===記事の独自性=== 第一回WikiWiki情報局大会において、筆者は「ノベルに傾かない記事の良さ」として「情報集積性」「共同性」「労働性」の三つを挙げた。本項ではその考えを発展させ、さらにビジュアル表現に関する特長を加えた四つの特長を記事の独自性として挙げ、それがいかなる種類の「物語を書く」に留まらない素晴らしい創作活動を生み出すのか、また物語を記事の形式で書く時にそれがいかなる利点をもたらすのかを論じる。便宜上第一から第四の特長とするが、順番に意味はない。 第一の特長は、説明性である。前節でも述べたように、記事は主題に関する情報をフラットかつ網羅的に書き記すことを本質としている。このような意味での説明性はWikiWikiオンラインニュースやYGT財団にも期待することができるが、長大な情報の全体像を書き出すことにおいて記事は当然ニュースという媒体よりも優れており、YGT財団とは世界観的な棲み分けが存在するため、記事の独自性として挙げた。この性質により、記事が新概念の導入に最もよく適したメディアとなっていることは明らかだろう。加えて、一つのコンテンツにつき一つの独立したページが存在するという性質上、記事は内部リンクやカテゴリといった機能にも非常によく馴染むため、このような説明的な記事は相互に繋げることによってより大きな設定や深い世界観を創出することにも長けている。以上のように、説明性は新しい概念の発表やその概念同士の結びつけ、それによる世界観の創出といった創作行為の源となる。物語を記事の形式で書くにあたっては、説明性に付帯する客観性や簡潔さの要請により、人一人をクローズアップせずその等身大の感情や目線を描かないことになるが、あえてそのように物語を表現するゆえの儚さやおかしみといった味わいの変化を生むことが期待できる。国家の歴史のようなスケールで起きるあまりに大きな物語に関しても、俯瞰的に表現することによってある種のリアリティをもたらすことができるだろう。 第二の特長は、協働性である。専門化した姉妹プロジェクトらは個人がそれぞれで創作した作品を展示するという形で運営されており、「[[Sisters:WikiWikiリファレンス/『海と夕焼』に関する探究|『海と夕焼』に関する探究]]」など協働して制作されたものが稀にあってもその協働制作のプロセスがWikiWiki上で行われることは今までに皆無だったと言っていい。その点において、標準記事はもともと内容を充実させるべく協働編集に開かれたものとして作られており、複数人が協働して活動するのに適っている。この性質によって、これまでにもいくつかの、特に現実の出来事にまつわる記事が複数人の共同作成や編集によって充実してきたほか、言葉遊び系を含む様々な記事において、大喜利テンプレートの下で自由に回答を追加して記事に「参加」することが行われてきた。このように、協働性は常習者が協働して行う創作行為を可能にする。それによって作られ充実するコンテンツはもちろん、その協働的な取り組みへの参画自体に大きな価値があるといえよう。ただし、物語を協働的に書くにあたっては、[[多目的C教室]]にもある「一行詩」のような形式が考えられるが、最初に述べたような独立した個人の創作物としての物語を表現することには、この協働性という性質は馴染まないだろう。 第三の特長は、労働性である。記事における「労働」の概念は草子「[[Sisters:WikiWiki麻薬草子#労働と自由|労働と自由]]」に詳しいのでそちらを参照されたいが、簡単に説明するならば読者が記事に対して何らかの形で働きかけることであり、それを記事のあり方に組み入れたものは「労働記事」と呼ばれる。このような「労働」を取り入れたコンテンツの作成が可能であることが、第三の記事の特長として挙げた労働性である。先にも述べた記事の一コンテンツ一ページという性質が、節リンクでのページ内の移動を基本とする労働への反応に適していることが重要なのだが、実際のところこのような労働コンテンツはむしろWikiWikiオンラインコード上のゲーム作品が専門とするところであり、労働性が記事の独自性であるとは言い難い面もある。しかし、そのようなコンテンツをオンラインコードで発表するのにはWikiテキスト/HTMLやCSSを超えるより[[ヘルプ:チュートリアル/高度なコード|高度なコー]]ディング技術が必要であるという敷居の高さや、そもそもオンラインコードは姉妹の中でも特殊であることを鑑みて、ここでは記事の特長として挙げた。これにより可能になるのは、もちろん「[[ルービックキューブ]]」のようなゲーム的コンテンツの(比較的簡単な形での)制作である。物語を表現するにあたっては、「[[便所の落書き]]」のようにインタラクティブ性によって読者を没入させ、ただ読むのとは違った体験を生み出すことができるという明白な利点がある。 第四の特長は、ビジュアル性である。画像を使ったコンテンツを作れるというだけでは、構談社RAWはもちろんWikiWikiオンラインショップやWikiWikiオンラインDIYにおいても同じことが言えるが、ここでのビジュアル性はむしろ画像(あるいはCSSで描写されるオブジェクト)をいかに一つの要素としてコンテンツの中で活用できるかを問題にするものであり、それは画像がコンテンツそのものであったり、また画像の扱いに自由度が無いようなこれらの姉妹プロジェクトには無い、記事の明確な独自性の一つである。記事の中では、画面全体の中に画像を自由に配置してキャプションや本文で説明することを基本として、「[[鬱]]」や「[[創作漢字]]」、「[[ドア派]]」のように大喜利と組み合わせたり、「[[クーネル・サンダース]]」や「[[寿司]]」のように単にビジュアル表現を連ねたりして、印象深い作品を作り出すことが出来る。記事のビジュアル性は、単に画像の一枚一枚をコンテンツとして扱うことを超えて、画像やCSSのインパクトを最大限利用する作品を生み出すことを可能にするのである。物語への利用に関して、特に初期のオンラインノベルには挿絵やCSSデザインが利用されている例もあるが、記事のビジュアル性は単なる挿絵や装飾以上の重みをもつ視覚的要素を活用して物語の表現にインパクトを与えることができる。「[[空耳]]」や「[[ビタ眠剤]]」のようなラストを締めくくる働きもあれば、「[[将棋]]」や「[[バイクに乗るゴリラ]]」のような物語の経緯全てをビジュアルで描写するようなものもあり、いずれにしてもより視覚的で直接的な形で物語を見て楽しむことができる。 以上のように、記事には「説明性」「協働性」「労働性」「ビジュアル性」という、他の姉妹プロジェクトに無い(労働性に限っては他の姉妹プロジェクトで扱うのが難しい)独自の四つの特長が存在し、これらがそれぞれ記事でしかできない、物語とは違った形の素晴らしい創作活動を行うことを可能にしていること、さらにまたこれらの特長(協働性を除く)によって、ノベルではなく記事で物語を表現する積極的な利点が生まれることが明らかになった。姉妹プロジェクトが創作活動のメディアとして各々で専門性を持ち独立していく中で、全ての創作活動を包含する舞台だった記事はその役割を失ってしまったが、代わりに新たな輪郭を得、新しい姿で常習者の元に現れたのである。
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