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{{基礎情報 生物|生物界=動物|通称=トンデヒニイルナツノムシ|画像=コクゾウムシ 外村康一郎.jpg|分類=
'''ハルス動体液'''(ハルス運動体液とも)は、[[ププニュレキアラーラ]]が実的存在モデリングによって生物の脳を再構築して作り上げる意識性存在である。物質存在であり、[[スジンハスガーク]]には含まれない。
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{{!}} 界:動物界 Animalia
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{{!}} 門:節足動物門 Arthropoda
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{{!}} 綱:昆虫綱 Insecta
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{{!}} 目:コウチュウ目 Coleoptera
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{{!}}亜目:多食亜目 Polyphaga
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{{!}}上科:ゾウムシ上科 Curculionoidea
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{{!}} 科:オサゾウムシ科 Dryophthoridae
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{{!}}亜科:オサゾウムシ亜科 hynchophorinae
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{{!}} 族:コクゾウムシ族 Sitophilini
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{{!}} 属:コクゾウムシ属 Sitophilus
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{{!}} 種:トンデヒニイツノムシ S. tondenheinuits
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{{!}}亜種:'''トンデヒニイルナツノムシ''' '''''S. tondenheinuits lunas'''''
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|ICUNレドカテ='''Least concern'''
|分布状況=地球全土、および月面|生息年代=新生代|学名=''Sitophilus tondenheinuits lunas''|和名=''屯田兵イヌイット<ruby>月<rt>ルナ</rt></ruby>ツノムシ''|英名=''Tondenheinuit luna weevil''}}
'''トンデヒニイルナツノムシ'''は、「自分から危険な事に進んで関わった結果自滅してしまう」ことを意味することわざ、またはコクゾウムシ科コクゾウムシ属の昆虫の一種、トンデヒニイツノムシの亜種である。


==生態==
==概要==
トンデヒニイルナツノムシは、イネ科の穀物を食害することで知られる'''コクゾウムシ(ツノムシ)'''の一種であり、生態は一般的なコクゾウムシとほとんど変わらない。ただし、トンデヒニイルナツノムシはイネ科穀物に限らず植物や肉などあらゆる食物を見境なく食い荒らし、さらには衣服等の繊維はもちろん木材や石材、時には金属まで食害するという異常な食性を持っている。体長は0.7~1.5mmほどであり、小さな隙間でも侵入してくる。
ヒトを始めとする'''認識性存在'''(Cognitive entity)<ref>類人猿などの高い知能を持つ動物はもとより、走化性を持つ原核生物や人工的なセンサーまでもが認識性存在というカテゴリに含まれるが、その中でも認識能力の度合いは大きく異なる。なお、認識能力は認識を行う度に対数関数的に減じていくため、例えば同種のヒトであっても基本的に新生児と老人(認知能力に問題がない者でも)とでは認識能力は倍ほどに違う。</ref><ref>ウイルスは認識性存在ではない。</ref>が何らかの存在を認識する方法には、感覚器官を介して間接的に認識する方法と、感覚器官を介さず直接認識する方法の二つがあるが、ハルス動体液は元となった生物の脳の意識上に前景化していた[[ププニュレキアラーラ]]を含む意識上存在を内部に保存し、ラプラパー状態の生物にこれを継承させることで、その意識上に後者の方式によるこの[[ププニュレキアラーラ]]の直接認識を引き起こすものである。


トンデヒニイルナツノムシは非常に優れた環境適応能力を持っており、-200度の低温から、1000度近い高温まで耐えることが出来る<ref>このため、トンデヒニイルナツノムシは仮に火の中に入ったとしても何のダメージもない。</ref>。真空状態でも生存できるほか、毒性のある化学物質や放射線、物理的な衝撃に対しても非常に高度な耐性がある。そのスペックは[[筋トレするクマムシ]]と互角とされるが、乾眠という特殊な状態に移行してようやく優れた耐久性を発揮できる[[筋トレするクマムシ]]と違って、トンデヒニイルナツノムシはこの耐久性を常時発揮していること、また先述の異常な捕食能力を有していることから、総合的にはトンデヒニイルナツノムシの方が優れた生命力を持っているとされる。
===間接認識と直接認識===
間接認識は、実的存在であるような特定の認識性存在が、'''物質存在'''(Substance entity)すなわち<ruby>虚的<rt>オスォナ</rt>意識下存在を自身の意識上存在として移し替えようとする操作である。ほとんどの場合において虚的意識下存在(物質存在)は虚的意識上既確存在に対応するものであり、認識性存在は、自身の感覚器官<ref>感覚器官の中でも、認識に繋がる鋭敏さには違いがあることが多い。ヒトの感覚器官の内で最も鋭敏なものは口であるが、これは口が味覚の他にも嗅覚や触覚、温度感覚といった様々な感覚と密接に関係している上に、視覚や聴覚と違って感覚する対象と粘膜によって直接接触する必要があることと、頭部に位置していることがかみ合って、対象を脳(認識機能の中枢)に物理的に近づけることで対象の認識線(後述)の強さを増大させるからである。[[ナトゥカドゥンヅヅ]]は、これを利用してヒトに自身を効率的に間接認識させている。</ref>を通じてその特定の物質存在がそれ自身の周りに放射する'''認識線'''を十分な量検知することで、まず'''意識上未確存在'''(Supraliminal uncertain entity)を意識上に急激に得る。このとき意識上未確存在は前景化しておらず、認識性存在はその存在を覚知しないが、自身の認識能力と対象から受ける認識線の強さ<ref>これは基本的に対象の'''存在量'''に比例し、認識能力の中枢と対象との間の物理的な距離に反比例する。</ref>に応じて、意識上でこの意識上未確存在の「確認」に要する時間とその結果が定まる。定まった時間が有限であれば、認識性存在はその時間の経過に伴ってその意識上未確存在から確認結果としての'''意識上既確存在'''(Supraliminal certain entity)を構成し、その時間の終了とともに完成させる<ref>確認に要する時間が無限であってもその意識上既確存在の構成自体は微かに進展するが、自然に完成はしない。</ref>。意識上既確存在は、意識上で完成してからは半永久的に前景化する。一方、虚的意識下存在が虚的意識上混濁存在に対応している場合もある。この時、認識性存在は十分な認識線を検知すると意識上未確存在の代わりに'''意識上混濁存在'''(Supraliminal obscure entity)を急激に得る。後述する意識上混濁存在のコヒーレンスにより、この(実的)意識上混濁存在は虚的意識上混濁存在と同一の存在になる。意識上混濁存在は、意識上に現れた時点で、半永久的に、しかも意識上既確存在を飛び越えて前景化する<ref>あらゆる生物は直接認識によって得た意識上既確存在として「理性」や「本能」を保持しつつ、間接認識によって得た意識上既確存在を集積して環境を把握し、これらに基づいて自身の行動を決定しているが、意識上混濁存在はこれらを飛び越えて前景化することができるために、生物に対する絶対的な'''命令能力'''を有する。意識上混濁存在である[[キュアラプラプ]]が自信を認識した生物をラプラパー状態にすることはその典型的な例である。これに対して、意識上既確存在の生物に対する性質は'''事実能力'''と呼ばれる。</ref>。


==進化史==
それに対して直接認識は、感覚器官の関与しない全ての認識の方法であり<ref>幻覚や単に病理的な妄想を通じての認識は間接認識である。これらの症状は認識能力のプロパティに過ぎない。</ref>、大きく分けて四つの種類がある。
===第一の試練・北海道===
[[ファイル:分析性.png|右|サムネイル|意識上既確存在の分析性。]]
コクゾウムシは古くから北海道にも分布しており、クリやドングリを食害していたが、それは人間が整備した温暖な住環境あってのものだった<ref>小畑弘己. (2022). コクゾウムシと縄文人 世界最古の貯蔵食物害虫の発見. ''文化財の虫菌害''. ''83''. 3-8.</ref>。このため、明治期に屯田兵制が開始し、北海道が開拓されて急速に農村化・都市化が進行すると共に、そこにおいて収穫された大量の作物が貯蔵されるという好条件がそろうと、コクゾウムシはこの時期北海道において一気に繁殖することとなる。しかしそれも長くは続かず、明治政府が大発生したコクゾウムシによる食害を問題視して農村や都市において積極的な防除等の対策を行ったことで、多くのコクゾウムシは人間の整備した環境を離れざるを得なくなった。厳冬の北海道の奥地に移動したほとんどのコクゾウムシは寒冷な環境に耐えられず死滅していったが、ごく少数のコクゾウムシは寒冷な気候に適応した。個体数の母数が十分あったために、この適応した個体群はそのまま北海道の森林地帯に定着し、コクゾウムシから分化して'''トンデンヘイツノムシ'''という種を成した。
'''出生'''は、最もよく見られる形態の直接認識であり、ある認識性存在の意識上において、既存の意識上存在から新たな意識上存在が生み出される、すなわち意識上に現れ出ることで、直ちに認識性存在がこの新しい存在を認識するものである。'''子'''である意識上存在に対して、これを生み出した既存の意識上存在は'''母系存在'''(Matrilineage entity)と呼ばれるが<ref>ある子に対して母系存在がただ一つ存在することが知られているとき、母系存在は特に'''母存在'''と呼ばれる。</ref>、多くの場合それは意識上既確存在である。意識上既確存在は'''分析性'''を有し、全体として意識上既確存在であることを保ちながら、その部分がそれぞれ別個の意識上存在として成立しうる。このため、意識上既確存在の出生による子は、母系存在に包含されるか、あるいは子もまた意識上既確存在である場合に限り、時に母系存在を包含して存在する<ref>例えば、物質存在であるリンゴの間接認識によって得た意識上既確存在を母系存在として、これに包含される「赤色」や「丸み」といった要素に相当する子の意識上既確存在が出生しうる。また、複数のリンゴから得た複数の意識上既確存在を母系存在として、これを包含する抽象的なリンゴの概念に相当する子の意識上既確存在が出生しうる。</ref>。意識上未確存在や意識上混濁存在のように分析性の無い存在が母系存在になる場合、子との両立が不可能であるためにこれらは子のみを残して出生と同時に意識上から消滅する。第二に、意識上混濁存在だけが対象になりうる直接認識の形態の一つとして、'''下方へのミーム跳躍'''がある。意識上混濁存在の特殊な性質は後に詳説するが、大まかに言えば、これは意識上混濁存在が意識空間を一時的に平行移動することで、遡上する意識上混濁存在から見て下方(<ruby>虚<rt>オスォ</rt></ruby>軸の負の方向)の末梢虚的意識下に、コヒーレンスを外れた'''跡意識上混濁存在'''を出現させることで直接認識を引き起こすものである<ref>意識上混濁存在である[[キュアラプラプ]]は、[[スジンハスガーク]]の存在量の増加を察知して下方へのミーム跳躍を行うことで、各生物に自身の直接認識を引き起こしている。</ref>。


トンデンヘイツノムシは、寒さへの高い耐性を獲得し、体長はコクゾウムシよりも一回り小さくなったが、食性は変わらず草食だった。コクゾウムシは気温が20℃以上の状況でのみ活発に飛翔し、また飛翔したとしてもその範囲は400mほどであるが<ref>宮ノ下明大, 佐野俊夫. (2016). 一般住宅地の屋外に設置したフェロモントラップに捕獲されたコクゾウムシの記録. ''ペストロジー''. ''31''(2). 61-64.</ref>、トンデンヘイツノムシは-47~8℃までの非常に寒冷な環境でも飛翔が可能になり、また飛翔の範囲も4~5kmまで伸びた。これによってトンデンヘイツノムシはサハリン島やクリル列島、アリューシャン列島を経由して北進し、シベリア周辺の亜寒帯に分布域を広げていくことになる。
以上の二つは認識性存在の意識に焦点のあるソフトウェア的な直接認識だったが、認識性存在の物理的な性質に関連するハードウェア的な直接認識も存在する。'''生得認識'''(デザイン認識とも)は、認識性存在の認識能力の中枢に物理的なパターンによって記録されている情報を、認識性存在自身が'''参照'''することによる第三の直接認識である。認識能力の中枢は、認識性存在に認識性を与える本質的な構造であり、具体的には、例えば動物においては脳の生物学的構造<ref>DNAに含まれる情報は、この脳の構造を概ね規定しているとはいえ、それ自体は認識能力の中枢ではない。</ref>、電子機器上の認識性存在においては内部の電子的な記録にあたる。認識性存在は、これらに内在する情報を参照することで、広い意味での「コーディングされた命題」を生得認識し、意識上存在として得ることができる。一般に、ある認識性存在について、その生得認識の対象となる意識上存在を追加することは、その認識性存在の認識能力が高ければ高いほど難しくなることが知られている<ref>例えば何か電卓の機能を持つアプリケーションのプログラムを改変して新機能を追加するのは容易だが、それに比べて生物の脳を外科的に操作して新しい「本能」を追加することは本質的に難しい。生得認識という名前は、このような高い認識能力を持つ認識性存在におけるこの種の直接認識の性質に由来するものである。</ref><ref>生得認識の対象を減耗させることは、その認識性存在の認識能力によらず容易である。ヒトにおける例では、[https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%89%8D%E9%A0%AD%E8%91%89%E7%99%BD%E8%B3%AA%E5%88%87%E6%88%AA%E8%A1%93 ロボトミー手術]による実現がよく知られている。</ref>。四つ目の直接認識である'''継承認識'''は、複数の認識性存在がそれぞれの認識能力の中枢を物理的に合一させて一つの新しい認識性存在に変化したという特殊な条件の下で、その新しい認識性存在が、発生すると同時に自身の''''''となった認識性存在の個別意識上にあった意識上存在を継承し、意識上において直接認識することによるものである。認識能力の中枢の合一は破壊的な再構築によって行われるため、これにより生成される新しい認識能力の中枢は元となった認識性存在のそれのいずれとも異なるものとなり、必然的に元の認識性存在は新しい認識性存在と両立できず、認識性を完全に滅失する。なお、認識能力の中枢が合一するためにはそれらの間に物理的な親和性があることが必要であるために、認識能力の中枢の合一は、認識能力の中枢の材質や仕組みが十分近い認識性存在の間でしか起こらない<ref>[[食パン]]のヒトに対する捕食行動は、認識能力の中枢の合一を伴うが、これは食パンとヒトがともに生物であることにより可能となっている。なお、捕食行動の中で、食パンはヒトを完全に覆って形状を記憶した後に体を分解・吸収し、そのままヒトの脳と自身の体組織の一部を合一させることで新たな認識能力の中枢を生み出すが、この組織が食パンの生体内で発現し、かつ食パンの機能として還元されるために、発生する新しい認識性存在は分類上食パンに他ならない生物となる。この食パンは、認識性存在としてはヒトを捕食した食パンの一個体と連続性が無いが、その生体を完全に継承するうえ、継承認識によってその個体の記憶や個性をも、捕食したヒトの個体のそれが混交するとはいえ一定程度継承する。新しい認識性存在は、自身の新しい認識能力の中枢から生得認識で得た命題と、元の食パン、そして元のヒトがそれぞれ生得認識によって得ていたものを継承認識した(注:生得認識ではない)命題を「本能」として持つことになるが、前者二つ、特に食パンのそれが基本的な概念であるのに対して、ヒトのものはそれらを意味的に包含しつつもさらに高度なものであるため、その生物としてのあり方はこの条件を反映してヒト的なものとして特徴づけられる。この性質に、元の食パンから継承認識したヒトの形状に対応する意識上既確存在と、食パンが生物として有する擬態能力が結びついた結果、この新しい食パンは「ヒトの形状をした食パン」となり、自身をヒトと規定して生きていくことになる。一方、この新しい食パンから出芽によってさらに新しく生まれた娘細胞である食パンは、認識能力の中枢の構造がヒトのそれとの合一によって作られた全く新しいものとなっているために、生得認識によって本来の食パンとは違った「本能」を得る。その内容は「ヒトになる」というようなものであると推察されており、多くの食パンがヒトを好んで捕食しようとする性質を見せるのは、これを通してヒトの形状の完全な情報を得(注:母細胞である食パンが意識上にヒトの形状に対応する意識上既確存在を有することは述べた通りだが、一般に生物は親から子に具体的な意識上存在を受け渡す方法を持たない)、その形状を元に擬態能力を使用することによって、生得的命題の規定を達成しようとしているからであると考えられている。</ref>


===第二の試練・アラスカ~カナダ北部===
===意識上既確存在による直接認識の利用===
1924年頃になると、トンデンヘイツノムシの生息域の限界は北極圏周辺にまで拡大していた。寒帯地域に生息したトンデンヘイツノムシは少なかったが、ツンドラ地帯に僅かに自生するイネ科植物を食物とし<ref>トンデンヘイツノムシにはコケ植物や地衣類を消化する能力がなかった。</ref>、限られた資源のために激しい種内競争が発生した。この競争を淘汰圧として登場したのが、雑食化したコクゾウムシの一種'''トンデヒニイツノムシ(トンデンヘイイヌイットツノムシ)'''である。トンデヒニイツノムシは外見こそトンデンヘイツノムシと顕著な違いは無かったが、従来の草食性に加えてコケ食や肉食が可能になり、また獣毛を食することもあった。ほとんどのツンドラの植生、さらに動物の死骸を栄養源と出来たことから、トンデヒニイツノムシはトンデンヘイツノムシに変わってツンドラ地帯で台頭することになり、シベリアから西進して北アメリカ大陸北部にも進出した。
 
トンデヒニイツノムシを最初に発見したのは、特に伝統的な生活様式を保っていたイヌイットの集団だったとされる。イヌイットの伝統的な衣服はアザラシなどの動物繊維から作られており、以前は食害の被害はごく稀だったが、トンデヒニイツノムシがカナダ北部に広がり始めた1949年頃から、未知の昆虫による衣服の食害の報告が相次ぐようになった。これを受けてアメリカ合衆国の研究者らが調査を行った結果、トンデヒニイツノムシは公式に新種として認められることとなった。トンデンヘイツノムシとの近縁性から、研究チームはこの昆虫の通称として "Tondenhei weevil" に「イヌイット」を付け加えた "Tondenhei inuit weevil" というものを当初用いていたが、次第にこの名前は短縮されて "'''Tondenheinuit''' weevil" となり、この省略形がそのまま正式な学名にも適用された結果、日本語の名称も英語の発音に準じて「トンデヒニイツノムシ」と表記されることが一般的になった。
 
===第三の試練・月面===
トンデヒニイツノムシの分布域は基本的に北アメリカ北部に留まり、それ以上自然に南下することは無かったが、アラスカ周辺のエネルギー資源をカナダの都市部や南方48州に輸送する長距離トラックや船舶、飛行機などに偶発的に侵入して、個体群レベルで南方に移動した例はしばしば確認されていた。このようにして運ばれてきたトンデヒニイツノムシも南方の既存の生態系に定着することはなく、ほとんどの場合自然に排除されたが、やはりコクゾウムシの一種であるゆえに家屋などの人工的な環境に住み着いて数世代の間繁殖することが稀にあった。このような例の中で最大の規模感を誇ったのが、テキサス州に存在するNASAの宇宙センターの一つ、ジョンソン宇宙センターにおける事例だった。ジョンソン宇宙センターは最大の有人宇宙飛行の訓練施設であったが、1968~69年ごろここに住み着いたトンデヒニイツノムシが配管等の内部で秘密裏に増殖し、ひどい時にはどの部屋に行ってもこの昆虫がいるという有様だったという<ref>この時期のアメリカ合衆国は、宇宙開発競争においてスプートニク1号を打ち上げたソ連に後れをとっていたために、一刻も早い月面着陸の実現を強硬に推し進めていた。そのため、宇宙センターの衛生環境へは十分なリソースが割かれていなかった。1969年までにセンター内のトンデヒニイツノムシは完全に駆除されたが、NASAはアメリカの科学技術の信用を守るためこの出来事を半世紀の間公表しなかった。</ref>。この研究施設内で人工的に再現された、放射線の暴露等を含む疑似的な宇宙環境の中で、一部のトンデヒニイツノムシが変異的に異常な耐久特性を獲得したことが示唆されている。例えばある職員は、数匹のトンデヒニイツノムシがEVA(宇宙船外活動)訓練のために疑似真空状態となった船室で活動していたと記録している。
 
1969年、アメリカ合衆国がアポロ計画の完成としてアポロ11号を打ち上げる際、数十匹のトンデヒニイツノムシがアポロ11号司令船船内の保管庫に紛れ込んだ。アポロ11号はサターンV型ロケットに搭載され、NASAが有するロケットの打ち上げ施設であるケネディ宇宙センターにおいて地球を離れたが、これらのトンデヒニイツノムシはNASAの何らかの輸送手段に侵入して、ジョンソン宇宙センターからケネディ宇宙センターに直接移動したと見られている。これらのトンデヒニイツノムシの中には、ジョンソン宇宙センターの環境下で異常な耐久性を獲得した個体が複数存在した。このために当該集団の一部は宇宙空間への適応に成功し、人類初の月面着陸が成功裡に終わった背後で、何らかの経路によって司令船を脱出、月面に降下して、そのまま月面に定着することができたとされる。この集団は月面に放置されたゴルフボールや旗といった繊維質の記念品はもちろん、変異した食性によって宇宙船の破棄された部品や月面探査機のデブリなどまで捕食するようになり、特に後者の食物の定期的な供給によって安定的な繁殖を可能とした。こうして、トンデヒニイツノムシの月面に分布する地理的品種である、'''トンデヒニイルナツノムシ''' (英: Tondenheinuit '''luna''' weevil) という亜種が登場した。トンデヒニイルナツノムシは生命の存在しない月面環境で完全な優位を得<ref>[https://ja.wikipedia.org/wiki/月面のクマムシ クマムシの群れが突如やって来たこと]もあったが、<ruby>乾眠<rt>ねむ</rt></ruby>っている隙に残らず捕食し絶滅させて難を逃れたという。[[筋トレするクマムシ|筋トレ]]しないクマムシの物理攻撃への弱さがはっきり出た形となった。</ref>、最終的に月面全土に分布するようになったが、探査機の映像技術で捕捉できないサイズだったことや<ref>トンデヒニイルナツノムシの体長はトンデヒニイツノムシよりもさらに小さくなり、前述の通り0.7~1.5mmに落ち着いていた。</ref>、月面の岩石を回収するローバー等を本能的に避けていたために、地球に持ち帰られるサンプルに混入することも無かったことから、人類は月面に降りることをしなかった半世紀の間、この亜種の存在に気が付くことはなかった。
 
===ボーナスステージ・地球===
2027年、アポロ計画以来の有人月面着陸計画である[https://ja.wikipedia.org/wiki/アルテミス計画 アルテミス計画]の大詰めとしてアルテミス3号が打ち上げられ、1972年のアポロ17号による調査以来55年ぶりの月面有人探査が行われると、トンデヒニイルナツノムシの存在は初めて人類に知られるところとなった。この報告は、初めての地球外生命体の発見として地球上にセンセーショナルな反応を巻き起こした。アルテミス3号は詳しい調査のために15匹のトンデヒニイルナツノムシを生きたまま採取して地球に持ち帰ったが、その金属食性が知られていなかったために、船員らはこれらのトンデヒニイルナツノムシを地学的試料を入れるための金属製カプセルの予備の中で保管してしまった。地球に帰還した船員たちがカプセルを確認すると、トンデヒニイルナツノムシはみな既にカプセルを食い破って脱走していたという。昼は110℃、夜は-170℃という月面の過酷な環境に適応していたトンデヒニイルナツノムシは瞬く間に地球環境の中で侵略的外来種として大繁殖し、再び捕捉される頃には既に地球環境からの完全な除去が不可能な状況になっていた。トンデヒニイルナツノムシは地球の生態系を塗り替え、少なくとも212種の生物種を絶滅させたほか、人類にも未曽有の規模の食害被害をもたらした。トンデヒニイルナツノムシは文明社会の衣食住の供給全てに深刻な打撃を与え、人類を飢餓に陥れ、社会活動を停止させた。この結果、世界人口はトンデヒニイルナツノムシ飛来前の2/3にまで落ち込んだとされる。
 
==ことわざ==
このように、人類は別に行かなくても良かったのにわざわざ月に行った結果非常に凶悪なミュータント昆虫を作り出し、しかもそれを自分たちの星に解き放って途轍もない被害を被った。これを教訓として、「トンデヒニイルナツノムシ」は「'''自分から危険な事に進んで関わった結果自滅してしまう'''」ことを意味することわざとしても知られるようになり、社会再建を試みる人類の間で警句として流行したのであった。


==脚注==
==脚注==
<references/>
{{foot|ds=とんてひにいるなつのむし}}
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