「帝国主義のパパイヤ」の版間の差分
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帝国主義のパパイヤとは、他民族に対する盛んな軍事・経済的進出のもとに得た巨大な領域を植民地として運営し、国民国家の最大の繁栄を求める種類のパパイヤのことである。 | |||
==概要== | ==概要== | ||
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<blockquote>おお、長く苦しい旅路を経て、ついに発見したぞ! 我がインド亜大陸よ!</blockquote> | <blockquote>おお、長く苦しい旅路を経て、ついに発見したぞ! 我がインド亜大陸よ!</blockquote> | ||
こともあろうに、帝国主義のパパイヤは農場で実るという行為を大西洋での航海と勘違いし、さらに宮崎県の狭い農場を南北アメリカ大陸と勘違いし、さらに南北アメリカ大陸をインド亜大陸と勘違いしていたのであった。パパイヤはすでに、帝国主義の第一段階としての、植民地帝国への待望を抱いていた。この驚くべき事実によって、帝国主義のパパイヤはさらなる検査のためにアムステルダムのMIMC本部へと輸送されることになる。 | |||
===MIMCの陥落=== | ===MIMCの陥落=== | ||
MIMC本部の知能スコア検査で満点を叩き出したパパイヤは、すでにその異常な学習能力をもって拡張脳波検出機の仕組みを完全に把握していた。パパイヤが興味を示したのは、そこに使われている人口音声スピーカーだった。この音声生成のシステムに内蔵される、感情パラメータの検出によって自然な読み上げを行う機能を利用することを思いついたパパイヤは、即座に殺意ハイテンションになって自身の感情性を殺害方向に極端に大きく検出させ、人口音声スピーカーから死の音声を生成させることに成功し、周囲の検査官6人を殺害した<ref>むろんパパイヤに聴覚はないので、パパイヤ自身は死ななかった。</ref>。この後、パパイヤはスピーカーの振動によって施設内を這い回り、計81名の従業員を殺害したところで、MIMC内部保全実行委員の策略によって二階の「レクリエーション室」に閉じ込められた。このときの状況を、元MIMC内部保全実行委員のホセ=カリンジは著書の中でこう回顧している。 | MIMC本部の知能スコア検査で満点を叩き出したパパイヤは、すでにその異常な学習能力をもって拡張脳波検出機の仕組みを完全に把握していた。パパイヤが興味を示したのは、そこに使われている人口音声スピーカーだった。この音声生成のシステムに内蔵される、感情パラメータの検出によって自然な読み上げを行う機能を利用することを思いついたパパイヤは、即座に殺意ハイテンションになって自身の感情性を殺害方向に極端に大きく検出させ、人口音声スピーカーから死の音声を生成させることに成功し、周囲の検査官6人を殺害した<ref>むろんパパイヤに聴覚はないので、パパイヤ自身は死ななかった。</ref>。この後、パパイヤはスピーカーの振動によって施設内を這い回り、計81名の従業員を殺害したところで、MIMC内部保全実行委員の策略によって二階の「レクリエーション室」に閉じ込められた。このときの状況を、元MIMC内部保全実行委員のホセ=カリンジは著書の中でこう回顧している。 | ||
<blockquote> | <blockquote>サイレンが鳴って、俺のスキン・デバイスには「すぐさま武器を取り出して二階へ向かえ」と表示された。実際、あの組織には敵が多かったから、こんなことは日常茶飯事だったし、GUから内部保全部隊に支給されたエネルギー放射機銃にかかれば、いつも世間知らずの襲撃者たちは俺達の前で肉体の形を数分と留められなかった。だからこのときも、俺はこの司令を恐ろしいとも思わず、さっさと二階に上がっていったんだ。そこで――奇妙に思った。あちこちに転がっているスタッフの死体に、外傷がないんだ。化学兵器や放射線は検出されていない。なら、これは何なんだ? | ||
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パパイヤに解放されたメリンダが、レクリエーション室周辺に詰めかけていた内部保全実行委員たちにパパイヤの「死の声」の幻覚を与えると、集団はパニックに陥って崩壊し、四方八方に散った。パパイヤとメリンダはその隙にレクリエーション室を脱出し、メリンダの透視能力の手引でMIMCの「活性化実験」に用いられている他の安楽死手術の同意者たちを次々に解放していった。こうして、パパイヤ最初の殺人から1時間29分後、パパイヤらはMIMC本部の主要三施設<ref>総合データセンター、拡張室、内部保全指揮室(モニタールーム)。</ref>を完全に掌握することに成功した。 | パパイヤに解放されたメリンダが、レクリエーション室周辺に詰めかけていた内部保全実行委員たちにパパイヤの「死の声」の幻覚を与えると、集団はパニックに陥って崩壊し、四方八方に散った。パパイヤとメリンダはその隙にレクリエーション室を脱出し、メリンダの透視能力の手引でMIMCの「活性化実験」に用いられている他の安楽死手術の同意者たちを次々に解放していった。こうして、パパイヤ最初の殺人から1時間29分後、パパイヤらはMIMC本部の主要三施設<ref>総合データセンター、拡張室、内部保全指揮室(モニタールーム)。</ref>を完全に掌握することに成功した。 | ||
=== | ===オランダ継承戦争=== | ||
拡張室から解放された者たちの中にメリンダほど芳しい成果を挙げている者はなかったが、パパイヤはある白髪の老人に注目していた。彼の名は'''ウィレム=リートフェルト'''、第15代オランダ王ウィレム7世の実の息子であった。しかし、リートフェルトの運命は奇特なものだった。彼は当時の皇太子アレキサンダーの双子の弟として生まれたが、皮肉にも、それはオランダ政府が人口問題に耐えかねて一人っ子政策を発した直後のことだったのだ。リートフェルトの母である当時の王妃クラウディアが自室に残していた鍵付きの日記には、こう記されている。 | 拡張室から解放された者たちの中にメリンダほど芳しい成果を挙げている者はなかったが、パパイヤはある白髪の老人に注目していた。彼の名は'''ウィレム=リートフェルト'''、第15代オランダ王ウィレム7世の実の息子であった。しかし、リートフェルトの運命は奇特なものだった。彼は当時の皇太子アレキサンダーの双子の弟として生まれたが、皮肉にも、それはオランダ政府が人口問題に耐えかねて一人っ子政策を発した直後のことだったのだ。リートフェルトの母である当時の王妃クラウディアが自室に残していた鍵付きの日記には、こう記されている。 | ||
<blockquote> | <blockquote>われわれは勇壮なオランダ人だった。われわれは海を沈めて国をつくり、近世に植民地帝国を築きあげ、暗黒の時代と二度の世界大戦を経て再びヨーロッパの支配者となった。しかし、繁栄はみずからを貪り始めたのだ。この枯渇の世紀には、われわれは増えすぎた人口を収容できるあたらしい土地のための土すら買えない。そのせいで、そのせいで私は、私のかわいい子どもが――子どもたちが――双子だと知ったとき、喜ばなかった。二人目以降の出産に罰則を設けるあの法は、国会でもぎりぎりの水準で採決された。今でも反対するものは多い。それなのに、他ならぬ王室が二つの子を育てるとは、まるで示しがつかないではないか。 | ||
慎重な議論があった。どちらか一人は、その身元をすっかり隠して、どこか別の場所で育てさせることになった。そして、それは弟の方ということになった。もっと領土があれば。もっと領土があれば、家族は幸せだった。そう、領土さえあれば……。</blockquote> | 慎重な議論があった。どちらか一人は、その身元をすっかり隠して、どこか別の場所で育てさせることになった。そして、それは弟の方ということになった。もっと領土があれば。もっと領土があれば、家族は幸せだった。そう、領土さえあれば……。</blockquote> | ||
リートフェルトは最初国立の孤児院に引き取られたが、彼が二人目の王子であるという噂はすぐに広まった。そこで、次の「もっとも安全な場所」に名乗りを上げたのが、一般に認められるいわゆる「王族の権威」を検証することに積極的だったMIMCだった。その研究にはなんの成果もなかったが、MIMCにとって失敗はよくあることだったので、次第に彼の個性は忘れ去られ、結局彼は拡張室の一般被検体として30年余りを過ごしてきたのだった。パパイヤは、メリンダのテレパシー翻訳でデータセンターから被検体たちの情報をさらっていたとき、それを知って涙を流した<ref>もちろんそれは人間の流すような涙ではなく、むしろパパイヤの流すような涙だった。</ref> | リートフェルトは最初国立の孤児院に引き取られたが、彼が二人目の王子であるという噂はすぐに広まった。そこで、次の「もっとも安全な場所」に名乗りを上げたのが、一般に認められるいわゆる「王族の権威」を検証することに積極的だったMIMCだった。その研究にはなんの成果もなかったが、MIMCにとって失敗はよくあることだったので、次第に彼の個性は忘れ去られ、結局彼は拡張室の一般被検体として30年余りを過ごしてきたのだった。パパイヤは、メリンダのテレパシー翻訳でデータセンターから被検体たちの情報をさらっていたとき、それを知って涙を流した<ref>もちろんそれは人間の流すような涙ではなく、むしろパパイヤの流すような涙だった。</ref>。彼の魂は、帝国の拡張への欲望と深く結びついて産み落とされた、パパイヤの帝国主義をくすぐるものに他ならなかった。 | ||
==脚注== | ==脚注== | ||
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5年1月34日 (黃) 08:52時点における最新版
帝国主義のパパイヤとは、他民族に対する盛んな軍事・経済的進出のもとに得た巨大な領域を植民地として運営し、国民国家の最大の繁栄を求める種類のパパイヤのことである。
概要[編集 | ソースを編集]
エンパイヤー、パパイヤ
亜種[編集 | ソースを編集]
この節は大喜利である。面白いのを思いついたら追加していきなさい。 |
- 修正マルクス主義パパイヤ
- 完全菜食主義パパイヤ
- 法理主義パパイヤ
- 令状主義パパイヤ
- 人種差別主義パパイヤ
来歴[編集 | ソースを編集]
「発見」[編集 | ソースを編集]
帝国主義のパパイヤが人類によって発見されるには、野菜による知性 (Vegetable Intelligence) の概念がアンチヴィーガニズム団体「窓の裏のピイナツ」によって提唱され、かつ彼らの立ち上げた形而上知能測定センター (MIMC) が圧力団体として地球連合 (GU) [1]の首脳陣を手駒にするのを待つ必要があった。2312年、宮崎県のパパイヤ農場で行われたVIテストに合格したパパイヤが、「帝国主義」を指向する最初のパパイヤとして認められた。彼が拡張脳波検出機を通じて帝国主義のパパイヤの発見に沸く調査員たちに語りかけた最初の言葉は、こうだった。
おお、長く苦しい旅路を経て、ついに発見したぞ! 我がインド亜大陸よ!
こともあろうに、帝国主義のパパイヤは農場で実るという行為を大西洋での航海と勘違いし、さらに宮崎県の狭い農場を南北アメリカ大陸と勘違いし、さらに南北アメリカ大陸をインド亜大陸と勘違いしていたのであった。パパイヤはすでに、帝国主義の第一段階としての、植民地帝国への待望を抱いていた。この驚くべき事実によって、帝国主義のパパイヤはさらなる検査のためにアムステルダムのMIMC本部へと輸送されることになる。
MIMCの陥落[編集 | ソースを編集]
MIMC本部の知能スコア検査で満点を叩き出したパパイヤは、すでにその異常な学習能力をもって拡張脳波検出機の仕組みを完全に把握していた。パパイヤが興味を示したのは、そこに使われている人口音声スピーカーだった。この音声生成のシステムに内蔵される、感情パラメータの検出によって自然な読み上げを行う機能を利用することを思いついたパパイヤは、即座に殺意ハイテンションになって自身の感情性を殺害方向に極端に大きく検出させ、人口音声スピーカーから死の音声を生成させることに成功し、周囲の検査官6人を殺害した[2]。この後、パパイヤはスピーカーの振動によって施設内を這い回り、計81名の従業員を殺害したところで、MIMC内部保全実行委員の策略によって二階の「レクリエーション室」に閉じ込められた。このときの状況を、元MIMC内部保全実行委員のホセ=カリンジは著書の中でこう回顧している。
サイレンが鳴って、俺のスキン・デバイスには「すぐさま武器を取り出して二階へ向かえ」と表示された。実際、あの組織には敵が多かったから、こんなことは日常茶飯事だったし、GUから内部保全部隊に支給されたエネルギー放射機銃にかかれば、いつも世間知らずの襲撃者たちは俺達の前で肉体の形を数分と留められなかった。だからこのときも、俺はこの司令を恐ろしいとも思わず、さっさと二階に上がっていったんだ。そこで――奇妙に思った。あちこちに転がっているスタッフの死体に、外傷がないんだ。化学兵器や放射線は検出されていない。なら、これは何なんだ?
――その思考が凍結した一瞬、俺は何か、バイブレーションのようなものと、「声」を聞いた気がした。振り向くと、そこには黄色いパパイヤがいて、俺はなぜか、そいつが悪魔のような笑みを浮かべていると思った。そして、「声」をもろに聞いてしまったんだ。それは、何百人もの子供が集まって、全く同じ周期で、一斉に鋭い笑い声を上げているような、とにかく徐々に大きくなって、俺の耳から脳みその中に入ろうとしてくる――まるで、そう、昆虫のような体つきで耳をこじ開けようとしてくる、狂った響きだった。そのまま意識を失いそうになったところで、やってきた仲間の一人がとっさに俺の耳のすぐそばで拳銃をぶっ放してくれて、なんとか助かったんだ。聴力を一時的に喪失した俺は、そのまま情けない声を上げて、階段を落っこちるようにその場を逃げ出した。今でもあのパパイヤの汚い黄色が脳裏にこびりついて取れないよ。
「死の声」は大きな脅威であったが、振動によって這って動くパパイヤは、機動力に弱点を抱えていた。MIMCは光学迷彩装甲を改造し、即席の「ノイズキャンセリングスーツ」とエネルギー放射機銃P-72を装備して、物量によってパパイヤを退避に転じさせ、防音室であるレクリエーション室に閉じ込めることに成功した。マルマジカ=ディアスの証言によれば、このときパパイヤはすでに獲得的な「進化」を遂げつつあり、振動による動きはバッタのように俊敏なものになっていたという。かくして窮地に陥ったパパイヤだったが、このレクリエーション室で彼は偶然にも、最大の協力者を手に入れることとなる。MIMCの「精神感応活性化実験」「透視・精神念写[3]活性化実験」など、ほとんどすべての実験に対して「第一級適合者」となったMIMCの最高傑作、メリンダ=シャンドリエである。早くから安楽死を法的に認めていたオランダ王国の中で、彼女はありふれた安楽死希望者だった。彼女を特別にしたのは、その顕著な薬剤耐性である。医師による致死薬の投与を耐え抜いてしまった後、彼女は戸籍上死亡していることを形だけの根拠にして人権の保持を否定され、秘密裏に計82種類の致死毒を投与するプロジェクトの被検体となった。この3年の試用期間を経て、高い程度の不死性が証明された彼女の身柄は、MIMCに購入され、オランダ王立研究室を離れることととなる。後にメリンダはパパイヤとの出会いをこう述懐している。
彼はまさに、私の王子様でした。あのとき、得体の知れない薬品によって変調させられていた私の精神にとって、この世界は茶色いマッシュルームの群れのように見えていました……ああ、おぞましい。思い出したくもありません。しかし、そのくすんだ茶色で粉吹きの世界に、彼は金色の輝きをまとって現れたのです。私はテレパシーを使えましたから、彼に話しかけることができました。「王子様、ここから出して!」と。彼はちょっと驚いたようでしたが、すぐにこう言いました。「もちろんさ、プリンセス・エスパー。とはいえ僕もピンチだ。二人で協力しよう」
こうして彼は、私の手枷や目隠し、その他32箇所の拘束具を振動で破壊してくれました。自由になった私はその日、たぶん人生で初めて笑いました。何せ窓の外の廊下には、あれほど憎かった検査官たちがなんの変哲もなく死んでいたんですもの。そして、自分に与えられた力に、はじめて感謝しました。手枷にねじ止めされた鉄のサックさえ無ければ、壁越しの人間を狂気に陥れてしまうことでさえ、私の精神念写には容易いことなのです!
パパイヤに解放されたメリンダが、レクリエーション室周辺に詰めかけていた内部保全実行委員たちにパパイヤの「死の声」の幻覚を与えると、集団はパニックに陥って崩壊し、四方八方に散った。パパイヤとメリンダはその隙にレクリエーション室を脱出し、メリンダの透視能力の手引でMIMCの「活性化実験」に用いられている他の安楽死手術の同意者たちを次々に解放していった。こうして、パパイヤ最初の殺人から1時間29分後、パパイヤらはMIMC本部の主要三施設[4]を完全に掌握することに成功した。
オランダ継承戦争[編集 | ソースを編集]
拡張室から解放された者たちの中にメリンダほど芳しい成果を挙げている者はなかったが、パパイヤはある白髪の老人に注目していた。彼の名はウィレム=リートフェルト、第15代オランダ王ウィレム7世の実の息子であった。しかし、リートフェルトの運命は奇特なものだった。彼は当時の皇太子アレキサンダーの双子の弟として生まれたが、皮肉にも、それはオランダ政府が人口問題に耐えかねて一人っ子政策を発した直後のことだったのだ。リートフェルトの母である当時の王妃クラウディアが自室に残していた鍵付きの日記には、こう記されている。
われわれは勇壮なオランダ人だった。われわれは海を沈めて国をつくり、近世に植民地帝国を築きあげ、暗黒の時代と二度の世界大戦を経て再びヨーロッパの支配者となった。しかし、繁栄はみずからを貪り始めたのだ。この枯渇の世紀には、われわれは増えすぎた人口を収容できるあたらしい土地のための土すら買えない。そのせいで、そのせいで私は、私のかわいい子どもが――子どもたちが――双子だと知ったとき、喜ばなかった。二人目以降の出産に罰則を設けるあの法は、国会でもぎりぎりの水準で採決された。今でも反対するものは多い。それなのに、他ならぬ王室が二つの子を育てるとは、まるで示しがつかないではないか。
慎重な議論があった。どちらか一人は、その身元をすっかり隠して、どこか別の場所で育てさせることになった。そして、それは弟の方ということになった。もっと領土があれば。もっと領土があれば、家族は幸せだった。そう、領土さえあれば……。
リートフェルトは最初国立の孤児院に引き取られたが、彼が二人目の王子であるという噂はすぐに広まった。そこで、次の「もっとも安全な場所」に名乗りを上げたのが、一般に認められるいわゆる「王族の権威」を検証することに積極的だったMIMCだった。その研究にはなんの成果もなかったが、MIMCにとって失敗はよくあることだったので、次第に彼の個性は忘れ去られ、結局彼は拡張室の一般被検体として30年余りを過ごしてきたのだった。パパイヤは、メリンダのテレパシー翻訳でデータセンターから被検体たちの情報をさらっていたとき、それを知って涙を流した[5]。彼の魂は、帝国の拡張への欲望と深く結びついて産み落とされた、パパイヤの帝国主義をくすぐるものに他ならなかった。