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事実、シャンデリアにぶら下がってブリッジをしながら肘と膝のそれぞれ片方を用いて次々に知恵の輪を粉々にしていく彼が、よもやこの大豪邸の使用人であるとは、全く信じられないことであった。 | 事実、シャンデリアにぶら下がってブリッジをしながら肘と膝のそれぞれ片方を用いて次々に知恵の輪を粉々にしていく彼が、よもやこの大豪邸の使用人であるとは、全く信じられないことであった。 |
2年12月22日 (I) 03:26時点における版
第一章 めっちゃデカい屋敷と死体
──二月二十日・深夜──
二月二十日午前一時、めっちゃデカい屋敷に悲鳴が響き渡った。
九名しかいない屋敷の中で、その主人である律家豪の遺体が発見されたのだ。
しかし、こういうミステリー小説にありがちな探偵は―――いなかった。奇妙なことに、この屋敷での殺人劇には、事件の解決に乗り出すハッチ帽を被った紳士など終ぞ現れなかったのだ。
「えーっと、とりあえず自己紹介でもした方がいいんじゃないか?」
この屋敷・律家館のダイニングルームの静寂を破ったのは、律家豪の実弟である威山横世哉の一言であった。この部屋には、家のデカさのせいで永遠に迷子になり続けている週刊誌記者の此井江浩杉、および自室で眠っている令嬢、律家ラレを除いた、屋敷にいる七人が集合していた。
「まあ、まず俺からかな。俺は威山横世哉。……旧姓は律家世哉。知っての通り豪の弟だ。あまりに急な出来事なもんで涙も出ねえぜ。」
「こっちは妻の威山横亜奈貴。大切なお義父さんを殺した奴は、ゴリゴリの私刑に処そうと思っているわ。」
「……私は豪の妻、律家ノレよ。……とてもお喋りなんかできる気持ちじゃないわ。」
「俺ぁ有曾津王。本名はガリレオ・ガリレイだ。俺のことは信用していいぜ。」
「……あー、もしもし?聞こえてますか?電話口越しですけど、一応ワタクシも。此井江浩杉です。今一応そっちに向かってるんですけど、三回くらい同じ景色のところを通過してますね。ちゃっとこの家広すぎません?」
人々が順番に自己紹介をしていく中、突如として放たれた奇声は場の雰囲気を大きく変えた。
「ぎぁぁぁぁあじざざさざじじざじざじじぎぎぎぎかぎぎじざささぎいいいいいぃぃぃぃぃぃぃいぁぃぃぃぃぃぁあぁぁぁ」
困ったような顔をしたノレが、少し遅れてフォローを挟む。
「……彼は橘地凱。この館の使用人で……たまに発作で{{{文章}}}なっちゃうの。」
事実、シャンデリアにぶら下がってブリッジをしながら肘と膝のそれぞれ片方を用いて次々に知恵の輪を粉々にしていく彼が、よもやこの大豪邸の使用人であるとは、全く信じられないことであった。