「Sisters・トーク:WikiWikiオンラインノベル/顔面蒼白」の版間の差分

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そして話の流れを紙に書き出す段階となった。その時点で、強盗の仕業ではないとバレるロジックを、「室内には土足の足跡がなかった」というものにするつもりだった。犯人は庭へ出るまではしなかったという設定である。
そして話の流れを紙に書き出す段階となった。その時点で、強盗の仕業ではないとバレるロジックを、「室内には土足の足跡がなかった」というものにするつもりだった。犯人は庭へ出るまではしなかったという設定である。


[[ファイル:顔面蒼白メモ.jpeg|サムネイル|中央|話の流れを書いたメモ。]]
[[ファイル:顔面蒼白メモ.jpeg|200px|サムネイル|話の流れを書いたメモ。]]
[[ファイル:顔面蒼白ノート.jpeg|200px|サムネイル|執筆ノートの写真。川上が前日に森宅を訪れていた設定が、後付けのものであることがわかる。]]


しかし、よく覚えていないが、「護身用の木刀が残されていた」というロジックを思いついた。なんか寝転がってるときに思いついたような気がしないでもない。とりあえず、天啓であった。[[Sisters:WikiWiki麻薬草子#徒然草@ミステリ執筆|草子]]にも書いたが、私はこのロジックを結構気に入っている。死角からのロジックの不意打ちができててほしいという一念である。この思いつきがなければ、『顔面蒼白』の質は数段落ちていたと思う。
しかし、よく覚えていないが、「護身用の木刀が残されていた」というロジックを思いついた。なんか寝転がってるときに思いついたような気がしないでもない。とりあえず、天啓であった。[[Sisters:WikiWiki麻薬草子#徒然草@ミステリ執筆|草子]]にも書いたが、私はこのロジックを結構気に入っている。死角からのロジックの不意打ちができててほしいという一念である。この思いつきがなければ、『顔面蒼白』の質は数段落ちていたと思う。

2年9月21日 (I) 15:57時点における最新版

執筆の背景などを書こうと思います。ネタバレが含まれますので、『顔面蒼白』を必ず読んでから、この先をお読みください。 --Notorious (トーク) 2年9月21日 (I) 15:52 (JST)

『顔面蒼白』は、文芸部の文集に載せるために書いたミステリである。「文芸部に入って文集にミステリを載せる」というのは中学校以来の夢であった。

テーマが「青」と判り、ふと「人を刺し、出血多量で顔が蒼くなる。その後、犯人も自らが犯人であることが露見し、顔を蒼くする」という大枠が浮かんだ。つまり、倒叙ものである。あとは骨を考えればいいのだが、あまりいいものが浮かばずに苦戦した気がする。

その後、ラストに露見するきっかけ、「殺害方法に関する秘密の暴露」を始めに思いついた。多分。押し込み強盗のシナリオならば、「撲殺と思うはず」という布石を簡単に張れるだろうという目論見があって、舞台設定をした。

そして話の流れを紙に書き出す段階となった。その時点で、強盗の仕業ではないとバレるロジックを、「室内には土足の足跡がなかった」というものにするつもりだった。犯人は庭へ出るまではしなかったという設定である。

話の流れを書いたメモ。
執筆ノートの写真。川上が前日に森宅を訪れていた設定が、後付けのものであることがわかる。

しかし、よく覚えていないが、「護身用の木刀が残されていた」というロジックを思いついた。なんか寝転がってるときに思いついたような気がしないでもない。とりあえず、天啓であった。草子にも書いたが、私はこのロジックを結構気に入っている。死角からのロジックの不意打ちができててほしいという一念である。この思いつきがなければ、『顔面蒼白』の質は数段落ちていたと思う。

そして、語り手である犯人の動きを図にめっちゃ描いた。色ペンまで使って可読性を良くしている。図の後は話の流れもざっと書いた。その過程で、スリッパのロジックを削り、血痕についてのロジックも付け加えた。スリッパのロジックは、「森のスリッパは白いと警部補が断言しておく。その後、警部補が(黒い)スリッパに血が付いていたことを言う。あれ、普通白と思うでしょ? どうして来客用スリッパが白くないと知ってたの?」というものである。あまりに弱かったので削り、その代わりに血痕についてが入った。メモを見れば、二重線で消したり中途半端なところにぶっ込んだりしていることが一目瞭然である。

遂に執筆に入った。執筆用ノートに書いていき、不備があればどんどん書き足していった。そのため、メモにない要素も作品にはそこそこある。

メモの書き出しと執筆開始は、一日目の夜で行った。翌日、執筆を再開。流れをメモに書いていることも幸いし、するすると書けた。ラストの方は、語り手に感情移入しながら書けたので、ある程度緊迫感を出せたかなあと思っている。

ところで、最後に犯人にとどめを刺す巡査。当初、巡査は何も喋らず、警部補が全部言って終わりにしようとしていた。しかし、書いているうちに、「証拠がねえから足掻けるな……巡査は周りを観察してたことにするか!」と考えて、あのような役回りとなった。

こうして、『顔面蒼白』は公開に漕ぎ着けた。それから文芸部への提出の前後に修正を施し、現在の形となっている。

今まで私はミステリを書いてきたように思っていたが、

  • "The Tragedy in the Plastic Bag" → 拙い英語
  • 『田中邸事件』 → 小説っぽくない
  • 『叙述トリック』 → あくまで記事
  • 『陽成祭事件』 → 未発表

である。というわけで、『顔面蒼白』は案外私のちゃんとした推理小説第一号なのかもしれない。

また、文芸部での披露では、「推理小説を読んでるみたい」といった概ね好評(と信じれば好評になるんだよ!)をいただけ、満足である。この作品がきっかけで文芸部九州大会の散文の部出場のお声掛けをいただけたし、割と嬉しい結果となった。あとは、いつか文集に載れば完璧かなと思っている。

次作の『疑心暗鬼』と合わせて気づけたことだが、骨ではなく枠から決めた方が、書きやすい気がする。推理小説はあくまで小説、小説の面白さを決めるのは枠である。『顔面蒼白』でも『疑心暗鬼』でも、まぐれかもしれないが、枠を決めれば骨が後からついてきてくれた。骨のストックを貯めつつ、いい枠を思いついたらそれに合った骨を取り出してくる。そんな形が理想かもしれない。

この作品は、常習者でない外部の人に見せた初めての作品であり、様々な影響・気づきを与えてくれた。私の中で、里程標的な作品だ。