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概要
鶴九皐号集団失踪事件 | |
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場所 | 伊豆・小笠原海溝深海(詳細な座標等は不明) |
日付 | 2021年2月24日 |
概要 | 有人深海探査艇とその乗組員の失踪 |
原因 | 不明 |
行方不明者 | 40名 |
損害 | 有人深海探査艇5隻や各種備品 |
鶴九皐号集団失踪事件とは、有人深海探査艇「鶴九皐号」[注 1]の全5隻と、その操縦士と研究者によって構成される乗組員それぞれ1隻8名ずつ、計40名全員が謎めいた失踪を遂げた一連の事件である。
その5隻は有限会社HLHSガス[注 2]の所有であり、事件当時は日本近海に埋蔵されるシェールガスについての調査のために伊豆・小笠原海溝の深海約1200m地点まで派遣されていた。
しかしながら、事件の始まりを告げた不明な原因による第五鶴九皐号の陸上データベース側との連絡の途絶は、それが探査艇側と陸上データベース側を双方向につなぐ通信機器を搭載している唯一のものであったことによって、この事件の詳細を全くの未知のものとした。
尤も、それ以外の4隻にも、それぞれ1台ずつ陸上データベース側との通信機器が搭載されていたものの、技術的制約によってこれはそれぞれ累計2048ビット(=256バイト)までの、そのうえ探査艇側から陸上データベース側への一方的な情報の送信しかできないという代物であった。
このため陸上には断片的な情報しか届いておらず、さらに2021年3月1日にHLHSガス社は無関係な形の債務不履行で倒産し、当時の資料等の大部分が行方知れずになってしまっているため、今やこの事件は完全に迷宮入りとなっている。
なお、その"断片的な情報"には不可解なものが多くあり、乗組員は錯乱状態に陥っていたのではないかともいわれている。少なくとも、彼らが何か脅威にさしあたっていたのは間違いないだろう。
一方、行方不明となった乗組員の親族等は、使用されていた通信機器のずさんさ、深海・地上間の連絡の脆弱性や連絡途絶後のHSHLガス社の尋常ではないほどの対応の遅れなどを指摘し、HSHLガス社に訴えを起こした。これは和解金の支払いによってあっけなく解決されたが、[注 3]深海市場の拡大による大規模な事業参入が行われる中、この事件は結果としてそれに携わる人々の意識を高めることに繋がった。
失踪の経緯
潜水開始
2021年2月24日午前9時00分、第一鶴九皐号~第五鶴九皐号の計5隻が伊豆・小笠原海溝上海域から潜水を開始した。その約36分後、全隻は水深1200mまで到達し、伊豆・小笠原・マリアナ島弧周辺の探索に入った。
当初の予定では、片道4時間、計8時間で指定の海域を往復しながら資源埋蔵状況を調査・記録し、午後6時には海上に帰還する手筈であった。
事件発生
順調に進んでいた調査であったが、午前11時57分ごろ、突如として第五鶴九皐号からの位置情報連絡が途絶した。
前述の通り、探査艇側と陸上データベース側との通信はすべてこの第五鶴九皐号が担っていたため、これによって地上から5隻の位置や安否などを確認することは不可能となる。
ただ、鶴九皐号同士の、狭い範囲での通信は可能であったため、これを介して各探査艇の通信機器からこの事態についての報告が行われることが期待されていた。
しかしながら、最初の通信はこれよりおよそ8時間も後に入り、それも報告の体をなさないものであった。
第二鶴九皐号からの通信
午後8時23分ごろ、第二鶴九皐号から次のような通信がなされた。[注 4][出典 1]
おあなああなかすいあたああいああたいいあいたいいたいあい
あいあああおいいたいたすけていいたすけてあおなああかすいたいたいたいたいいやだいあやいあやいやだあいたすけたすけて
これによって事態の明らかな深刻さが伝わり、HSHLガス社はすぐに海上保安庁に通報、捜索を要請した。文字列はちょうど256バイトであったため、第二鶴九皐号からのこれ以降の通信は無かった。
第一鶴九皐号からの通信
それから約2時間後の午後10時35分ごろ、第一鶴九皐号から次のような通信がなされた。[注 4][出典 2]
普通、人間が数時間で餓死するか?食料はもうすっからかんだ。なのに全員が栄養失調。あのグロい化け物のせいなのか?もう5人も餓死した。死体はまだ痙攣してる。エンジンも動かない。
この通信から、少なくとも乗組員の身には確実に何か危険が迫っているということが判明したが、詳細は依然として不明確だった。文字列はちょうど256バイトであったため、第一鶴九皐号からのこれ以降の通信は無かった。
第四鶴九皐号からの通信
午後10時38分ごろ、第四鶴九皐号から次のような通信がなされた。[注 4][出典 3]
考察を残す。あの微生物が皆に寄生して栄養を吸い取って肉体を奪っている。感染したのが1人なら操縦席に隔離できるが、2人以上ならもう希望はないな。
ただ奴らは何を媒介して来たんだ?
この数分後、海上保安庁の潜水指定船が鶴九皐号の潜水地点に到着し、数km先にかなり深くから浮上してくる船影を目撃している。これも文字列はちょうど256バイトであったため、第四鶴九皐号からのこれ以降の通信は無かった。
第三鶴九皐号からの通信
午後10時49分ごろ、第三鶴九皐号から次のような通信がなされた。[注 4][出典 4]
5号通信途絶1号救助に向かうも5号乗員は化け物に変貌1,2号の援護の下4号が周辺海水を採取し未知の微生物を発見
全艇浮上する事になるが1,2,4号エンジン故障し通信も途絶
以上事件の流れ
これによって、初めて一貫した事件の流れとされるものが伝えられるも、情報量の制限にも助けられるそのあまりの不明瞭さと信じがたさによって、HLHSガス社、海上保安庁共に混乱をきたす形になった。
なお、この文字列は251バイトであったため、5バイトながら何かしらの更なる情報の通信が期待されることとなる。
いっぽう、海上保安庁側では先述した船影がはっきり目視可能な距離まで浮上してきており、船体に記されていた管理番号によってこれが第三鶴九皐号であることが判明した。
そして約7分後、午後10時56分ごろ、第三鶴九皐号から再び、次のような通信がなされた。[注 4][出典 5]
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この通信は、何かの暗号であるという説や、錯乱状態にあったがための意味のないものだという説などがあるが、真相はまったくもって不明である。
ちょうど5バイトであったこの文字列を最後に、鶴九皐号全隻はすべての地上との通信能力を喪失した。海上保安庁側では、浮上してきていた第三鶴九皐号が再び潜水または沈没していく様子が確認されている。
これを最後に、鶴九皐号は完全に姿を消すこととなった。海上保安庁による深海1750mまでもの捜索は功を奏せず、海底付近の捜索はそもそもそこに到達する技術がないことによって一向に目途が立たない状況にある。
脚注