利用者:キュアラプラプ/サンドボックス/乙

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しわくちゃ

 前の人の焼香が終わり、一歩進み出た。目線の先には、ずらりと一列に並ぶ何十枚もの遺影がある。俺が弔いにきた友人の遺影は、右から五番目にあったから、そこを向いて一礼して、香を炉の中に落とした。こういう「集団葬」は、ほんの数年前から普及しはじめた。高齢化に伴って葬儀件数が増加する一方で、社会関係の希薄化というやつなのか、参列者は年々減少し、葬儀の規模は大きく縮小していたらしい。葬儀社は、儲からない割には時間と場所を食う大量の仕事によって、パンク寸前の状況に陥っていた。これを解決するために始めたのが、この格安プランの「集団葬」というわけだ。これなら施設を改修する必要もなく、効率的に死者を弔える。さながら今の社会の縮図だと、俺は思った。