利用者:キュアラプラプ/サンドボックス/戊
例の事件_(劇作家の失踪)
例の事件 | |
---|---|
場所 | 不明 |
日付 | 例のあの日[1] |
概要 | ある劇作家が失踪した。 |
行方不明者 | 1人 |
損害 | 例のあの劇の公演が延期された。 |
例の事件とは、脚本を製作中のとある劇作家が突如として失踪してしまった例の事件である。
概要
事件が発覚したのは、例のあの日[1]である。
彼の失踪を最初に感づいたのは、例の劇の総監督兼プロデューサーを務め、異常に締切に厳しいことで知られている例のあいつであった。やつの話では、締切三日前なのに原稿が上がってこないことにブチ切れ、麻縄とアイスピックとバルサンと婚約指輪と近所の原発の燃料棒を持って例の脚本家の家を訪ね、クラッカーを鳴らしながらドアを蹴破って侵入したところ、どこにもその姿が見えなかったという。
例のあいつは脚本家の生活領域のすべてを捜索したのだが、それでも一向に見つからない。あいつは業を煮やして、ひとまず業ジャムを製造し、近所の青果店と契約を取り付けてたらふく金を稼いだあと、チョモランマからマリアナ海溝まで、その財力のすべてを用いて地球上あらゆる地域を捜索したのだが、それでもやっぱり見つからない。死体さえも見つからないものだから例のあいつも流石にビビり、近所の交番に駆け込んだ。
しかし警察の組織力をもってしてもなお例の脚本家の行方を補足することはかなわず、事件発生から二日間が経過した現在でも一切の手がかりが得られていない状況にある。
あまりに見つからないもんだから、現在世論では何かしらの陰謀が疑われており、つまりプロディーサーが業ジャム財閥の政治的癒着を利用して自身の脚本家殺害を闇に葬ろうとしてんじゃねえのかってことである。この疑いを払拭するため、プロデューサーが今から急遽会見を開くらしい。現場の安藤さん!
中継
はい、こちら安藤です! えー今から、今からですね、例のプロデューサーから説明会見があるということで、えーここに各社大勢の報道陣が集まってきている状況です!
あ、今、例のあいつが入室してきました!
一体何があったんですか! 例のお前! 例のお前!
「えー静かに、静かに! 今から会見を開始します。」
「えーでは、まず例の脚本家の消息なのですが、未だ掴めておりません。しかし我々はついさっき、いやほんとついさっき。なんなら3分前くらい。でまあ、非常に重要な彼の手がかりを得たため、そこからある仮説を立て、それを提唱させていただく所存でございます。」
では今回喋るのは仮説ということなんですか! 質問に答えてください!
「静粛に! 静粛に! 今説明してる途中だろおい! 坐せ! 坐せおい!」
「えー失礼、取り乱しました。まあ……はい、では続けますね。はい、まず、例の脚本家なんですけど、例のあの日[1]にブルジュ・ハリファで整備士のアルバイトをしてたことが分かったんですよね。でまあ、そこから考えられるものとして、拙者が提唱させていただくのがーー」
「『例の脚本家、ブルジュ・ハリファの伸長と共に遙か上空に行っちゃったのでまだ地上に戻ってこれてない』説!!!」
ふざけるな! 何言ってやがる! バカにしてるだろお前! 解散だ解散こんなの!
「静粛に! 落ち着いてください! これは数多の状況証拠から導き出された、全くの合理的で緻密で完成されたロジックに裏打ちされた仮説なのです!」
じゃあ喋れよおい! とっとと喋れ! 吐け! 吐けおい!
「ゔっ ぶぐぇっ[2]」
「え゙ぁ゙あ゙っ …ぎ ぐぷ ごえ゙ぁ゙あ゙あ゙っ …ぅ゙ぁ゙…あ゙… え゙れぇ゙っ[2]」
うわ吐いたぞこいつ! やべえ言い過ぎたっぽい! 謝るからどうか精神の安寧を取り戻してくれ!
「はい、で、まず前提として、ブルジュ・ハリファは生命体なんですよね。そんでまあ、だから成長したんでしょうね。」
ブルジュ・ハリファが生命体だあ!? 頭にゴキブリ飼ってやがるのか? この特殊性癖野郎!
「ではあなた方は化学進化説を否定するということなんですね! そもそも生命が誕生するというのはどういうことなのかあなた方はご存知ですか? 生命は生命からしか生まれないというのは明らかな誤謬です。なぜならこれが真ならば、私達が生まれてこれるわけがないからだ! 原初の生命体というのは確実に生命でないものから生まれでている……この状況であなたたちはどうブルジュ・ハリファが偶然にも生命性を帯びたことを否定できるんですか!? 少なくとも過去に一度起こったことが、二度とは起こることがないなど全くの詭弁だ! 私達人類の歴史はおよそ500万年、科学技術を把持していた時間ともなればそれはもっと短いものだ! 私達の観測において今まで一度も生命が非生命から発生していないなどという論拠は、この46億年の地球史、138億年にも及ぶ宇宙史に比べるらくもないスケールの話だ! 例のあの日[1]、ブルジュ・ハリファを構成する要素は、あまりに大きな奇跡によって、スクラップ場に吹いた風が完全なる飛行機を組み立ててしまうような奇跡によって、その内に複雑系を織りなし、生命を象ったのだ! ついに我々は、新たなる系統樹を、二本目の系統樹を目にしたのだ!!!」