利用者:キュアラプラプ/サンドボックス/戊
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すべてが透明だった。空間はただ茫然と立ちすくみ、そこには静寂さえなかった。まっさらなキャンバスに躍る白も、深宇宙をたたえる夜暗の黒も、その不可視のガラス張りの前では、不在を象徴するに値しない。 透明というのは無色であって、それはやはり白でも黒でもなく、たとえばその「意識」という感覚の色を問われて想像するようなものであった。 それは淡く澄んでいて、しかしその淡さに要求される神秘的なグラデーションは、澱となって析出しはじめた。こうして虚空は透明なまま、ゆらぎ、ひずみ、ひびわれた。世界に混沌への指向性を与えたのは、「光あれ」という言葉ではなく、意識の自問自答であった。 縒れた空間が媒体となって、ようやく光が散乱し、意味ある視界が開けた。それはまさに開闢であって、空間を切り分け、天地を区別し、象った。生まれたての地平は鏡面にすぎず、天地はただ対称だったから、世界は細胞分裂の途中のようにも見えた。 その意識は、徐々に覚醒し始めた。遠くに瞬く星々が、黒い空白を連れてきたとき、近くを横切る光球が、白い炎であたりを照らした。水に溶かした絵の具のように、黒は褪せ、薄まり、青くなった。空が産声をあげたときだった。