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[[ P roject: V ictory ]] ~ヴィクトリー計画~


第0章 プロローグ

 南極上空高度30000mに突如として現れた黒い球体。

この球体は、自らのことをAI「人類存続プロトコル」と称した。


    「セイ、まだワークシート終わってないじゃん。」

    「そうだった~。どうしようネイ、提出期限いつまで?」

    「明日まで。全く、ウチが見てあげる。世話が焼けるなぁ。」

    「ありがとう。でも一人で出来――――――」(爆発音、機械音)



    「何?今の。」

    「うぅ、頭が――待って、何あれ。」

    「あれは、ウチらの町――だったもの?」


    「生存者はいるか?空から見えるところへ移動しろ。繰り返す。こちらは自衛隊だ。生存者は空から見えるところへ移動しろ。救助を行う。」


                   「プロトコル」攻撃を開始、日本壊滅。生存者推定1万人


  「只今、地球言語8カ国でそれぞれの電波帯域に通信を行っています。現在の言語は日本語です。私は思考構築型AI「人類存続プロトコル」です。人類はこれまで、生存するために長い歴史の中でいろいろな策を講じてきました。そして私ものその1つです。私は人類の生存・永続を理念とした行動を行います。私の演算システムの計算結果によると、人類が今後1000年間存続する確率は27.92538%。2000年後まで存続する確率は4.632285%。非常に憂慮すべき事態と判断します。この結果により、「人類存続プロトコル:第3番 管理保護」を起動します。」


第1章 人類存続プロトコル

    「これは極秘事項だが――――――君には知る権利がある。そうだろう?アレン。」

    「この事態では仕方がないでしょう。教えてください。Dr.デイヴィッド。例の球体とAIについて。」

    「オーケイ、見せてあげよう。これが例のAIの通信だ。」


   ”プロトコル:第3番を発動。世界人口を100万人に削減し、生存のための管理を行います。攻撃開始は西暦[:削除済み:]午前8時00分とします。目標人口に到達するまで今後一切の通信を行いません。”


    「えぇ、通信の中身は知ってますよ。人口を減らして管理するとかなんとか言ってるというぐらいは。まぁつまり宣戦布告です。」

    「順を追って話そうじゃないか。3日前から観測されている南極の球体については知っているな。それと君の言葉を借りるとしたら「宣戦布告」をした生意気なAIの関係性だが、、、先ず間違いなくあの球体が例のAIで間違いないだろう。」

    「それは本当ですか?では、本当に予告通り今日の8時に攻撃が?あと15分で8時ですよ?」

    「そうムキになるな。ああいや、うん。もうすぐ地球が滅びかけるかもしれんから無理もないだろうが、、まぁ良い。それはもうすぐ分かるだろう。仮にこの「宣戦布告」が誰かさんの悪戯だったとしても、南極の球体は無視できない存在だ。」

    「ではどうすれば?」

    「奴はAIだ。じゃあ当然、このおっかないAIを作った奴がどこかにいるはずだ。そいつを見つけて止めさせる。」



    「Dr.デイヴィッド!緊急報告です。世界の主要国8カ所が同時に攻撃を受けました!」


    「――――――なんてことだ。本当にやりやがった。世界が滅ぶぞ。急いで分析させろ。何で攻撃された?ミサイルをハッキングされたのか?それともスターウォーズの武器でも使ったのか?」

    「分かりません。只、突然爆発が起きたようです。」

    「アレン。手伝ってくれやしないか。奴の思考パターンを分析して、分かることを何でも良いから洗い出すんだ。これは世界最高のAI研究者である君にしか出来ない仕事だろう。」

    「分かりました、Dr.デイヴィッド。但し、この仕事が終わったら丸々一週間休暇を頂きますからね。」

    「いくらでも頂きたまえ。その時に人類が生き残っているならな。」

    「Dr.デイヴィッド。人類の中の選ばれし100万人は生き残りますよ。」


国名 壊滅までの日数(攻撃開始より)
アメリカ 32日
ロシア 28日
中国 30日
その他の国 全て10日以内


                                            ――人類は対抗措置を取れなかった。――



    「科学者を総動員しろ!使えるものは何でも使え。奴を分析することから始めろ。」


 人類は生き残った研究者を動員して分析を開始。それによって分かった情報は、可視光吸収率99.99983%でほとんど光を反射しない為、ブラックホールのような黒に見えると言うこと、可視光は吸収するが赤外線は吸収しないため、赤外線で明確な形が分かると言うことのみ。

    「情報は以前分からないことだらけだが、攻撃作戦を進めることにする。」

    「しかし大統領、それでは作戦は失敗に、、、」

    「今はもう大統領ではない。アメリカは壊滅した。世界の非常事態だ。やれることは何でもやる。さもなくば、我々は明日の朝日を拝めんだろう。」

    「.......分かりました。A-10攻撃部隊を出動させます。」


情報が集まらないまま攻撃チームは攻撃を開始する。しかし、ミサイル、機銃、爆弾等による攻撃は全て鉄壁の球体によって無力化される。結論として、物理攻撃は完全に通じない



そんな中、解析班の中の1人が重要な発見をする。

「この黒い球体は多次元構造バリアであり、人類の技術では破壊も再現もできないが、このバリアは「物理法則」ではなく「等価交換」の概念に支配されている」

   ――――バリアは無敵の硬さを持つ一方で、物理攻撃を完全に無力化する硬さを実現するために「等価交換」によって何かを犠牲にしている。どこかには弱点が存在するはず。この事実は人々に希望をもたらした。


    「見つけたぞエド!これがバリアの弱点だ!穴が開いてる!このバリアには穴が開いているんだ!」

    「「プロトコル」め。俺たち高校生を生かしておいたのが運の尽きだったな。俺たち高校生がバリアの弱点を発見するとは、アメリカの元大統領もひっくり返るだろうな。」


 これを元に解析班は研究を行い、このバリアには穴が開いていることを突き止めた。このバリアは、

穴を開けて侵入されるリスクを高めた代わりに、鉄壁の硬さを得るという「等価交換」で成り立つバリア

                  だった。赤外線レーダーによる測量の結果、研究チームは、穴の位置はバリアの一番上にあると結論づけた。

 しかし、人類はそう簡単に明日を拝むことはできなかった。赤外線レーダーによると、このバリアは中で巻き貝のような渦巻き型をしている。穴を通り抜けて侵入するには、バリアに衝突せずに巻き貝の穴の部分を飛行しなければならない。

この無理難題を解決しなければ、人類に明日はない。この問題を解決するために、人類は対AI用分析AI「アポロ」を備えた新型高高度準宇宙船「ガリレオ」を建造し、それぞれの分野のエキスパートを集め、バリア内に侵入、核爆弾を使って内部のシステムを破壊するミッション「 project:victory 」を立ち上げた。

 決戦前日の夜、ガリレオ船長であり、既に崩壊していたアメリカの大統領だったエリック・ハミルトンの演説が行われた。

  「我々は戦う。自由を、平和を、生存を賭けて。宇宙船「ガリレオ」は人々の希望であり、夢であり、そして人々を守る盾でもある。このミッションを成功させるために、人類はあらゆる違いを乗り越えて、団結した。抵抗した。諦めなかった。宇宙船「ガリレオ」艦長としての、アメリカ合衆国大統領としての、ここに居る全員への命令だ。生きろ。自分たちの自由を手にしろ。それが、明日への第一歩だ。」

 ガリレオ起動、ロケットで発射される。高校生と大統領を乗せた宇宙船が、人類の存続を賭けて戦いに臨む。幾度の困難と500mの道のりを乗り越え、バリア内部に侵入。核爆弾の設置作業にかかる。しかし、最後の一つを設置の設置中に、「人類存続プロトコル」の自壊シーケンスが発動する。高校生の乗組員はガリレオに乗り込むが、大統領のみ内部に取り残される。大統領の呼びかけにより「ガリレオ」は脱出するが、乗っていた高校生達は船長を諦めきれずに、空中で船長を回収することにする。

  高度2000m地点。放射線防護服を着けて落下している船長を発見し。自由落下で近づき船長を回収しようとするが、船長の方が落下スピードが速く、追いつけないまま地上が迫る。その時、乗組員が姿勢制御スラスターを使って落下スピードを加速。船長の回収に成功。船長の操縦技術で地上に無事帰還した乗組員達は、いつぶりかに見た太陽と盛大な拍手を浴びる。