非自己叙述的

1年6月14日 (I) 10:43時点における (トーク | 投稿記録)による版
個野記事派このきじは秀逸しゅういつ名記事なきじ
管理者かんりしゃ画位宇野駄化羅真血画位名位がいうのだからまちがいない個野記事尾差羅二このきじをさらに秀逸しゅういつ二出希流戸位宇野名羅にできるというのなら編集へんしゅう氏手未背名差位してみせなさい
和田氏派亜名田他血野個戸尾未手位流わたしはあなたたちのことをみている

 非自己叙述的とは、「ある言葉の意味がその言葉自身に反していること」を指す言葉である。本記事「非自己叙述的」では、この言葉をかみ砕いて説明するとともに、発生するパラドックスについても解説する[1]

物語(一人の老人による語り)

 君「非自己叙述的(heterological)」という言葉を知っているか? 知らないとな? 仕方のないやつめ、教えてやろう。非自己叙述的とは、「ある言葉の意味がその言葉自体と矛盾しているさま」をあらわす形容詞[2]だ。たとえば"long"という言葉は「長い」を意味するが、この言葉の綴りはわずか4文字と、決して長くない。したがって"long"という言葉は非自己叙述的だといえる。また"misspelled(綴りの誤った)"という言葉は正しく綴られている。つまりこの言葉も非自己叙述的
 君この話は飽きたか。面白くないか。けどもしばし待て。ここからだ、面白くなるのは。さあ君、この問題について考えようじゃないか。

   ・「非自己叙述的」という言葉は非自己叙述的であるか?

 これを解くにあたって、重要なことがある。「すべての言葉は非自己叙述的であるか非自己叙述的でないかのどちらかである。」ということだ。おっと、当たり前だといって笑っちゃいけないぞ君。これはほんとうに大切なことだ。何せ……粛清されました
 本題に戻ろう。ではまず、「『非自己叙述的』は非自己叙述的である」と仮定して話を進めようか。「非自己叙述的」は非自己叙述的である。すなわち「非自己叙述的」はその言葉自体と矛盾した意味を持っている。よって「非自己叙述的」は非自己叙述的でない
 むむ? いま、「非自己叙述的」は非自己叙述的だ、として話を進めたはずだ。しかしそこから、それを否定する結論が得られた。なぜだろうか? うーん。
 あるいは、最初の仮定が間違っていた、と考える方が自然であろう。今度は他の可能性にかけるのだ――ところで先ほど、「すべての言葉は非自己叙述的であるか非自己叙述的でないかのどちらかである。」と述べた。となると他の可能性とは、「『非自己叙述的』は非自己叙述的でない」ということじゃあないか!
 では、そう仮定するとどうなるのだろうか? 「非自己叙述的」は非自己叙述的でない。つまり「非自己叙述的」はその言葉自体と矛盾した意味を持っていない。ゆえに、「非自己叙述的」は非自己叙述的である
 またもや仮定と矛盾する結論を導いてしまった。やあ君、どうしてこうなったのだ? 僕たちはすべての可能性を検討しきったのに、そのどれにおいても矛盾が生まれるだなんて……。
 はっ! 君君、これ、パラドックスじゃないか!

物語(二人の若者の会話)

 ある日の涼しい午後のこと。比路子ひじこさんは言った。
「ねえ、『非自己叙述的』ってどういう意味?」
「『ある言葉の意味がその言葉自身に反していること』さ」十萩じゅってき君が得意げに答えた。
「ちょっとよくわからないわ。たとえば?」十萩君の説明に納得しなかった比路子さんはさらに訊きかさねる。
 十荻君は少し考えてから、丁寧に答えた。「うーんと、たとえば、『動詞』という言葉それ自体・・・・は動詞ではない。名詞だ。あとまあ、英語だと、"hyphenated(ハイフンでつながれた)"という言葉のどこにも、ハイフンなんて無いんだ[3]。つまりこれらの言葉はみんな、意味がその言葉自身に反しているから、非自己叙述的だというわけだ」
「なるほどね」
「わかったようだね。じゃ……」
「あ、帰らないで。また一つ疑問が湧いてきたの」
「ええ、なんだって?」
「『非自己叙述的』っていう言葉は、非自己叙述的なのかしら」
「えっとね……うーん? もし非自己叙述的だとすると……」
「つまり、『非自己叙述的』という言葉はその意味がその言葉自身に反する、ってことだから……」
『非自己叙述的』は非自己叙述的でない、ということか」
「ええ? でも……」
「うん、仮定(注*四行上太字部を参照)と噛み合わないよね」
「そんなことがあるの?」
「いやいや、仮定がつねに正しいとは限らないじゃないか。もし仮定が間違っていたならば、矛盾が起こってもおかしくはないだろう?」
「確かに。じゃあ仮定を変えてみよう。もし『非自己叙述的』が非自己叙述的でないとすると……」
「『非自己叙述的』という言葉はつまり、意味がその言葉自身に反しない、ということ……」
 彼女は結論をまとめる。「うん。つまり、『非自己叙述的』は非自己叙述的である……」
「あれっ、そんなこと……」彼は驚いた様子でつぶやく。
 そのこと・・・・に気づいて彼女もつぶやき返す。「これって……嘘だ……」
 そして彼らは言うのだった。「「私たち、入れ替わってる?」」[4]

物語(若い論理学者の独りごと)

全く、この国も落ちこぼれたものだ。だいいちあいつら、頭が悪すぎる。言語とメタ言語の区別もつかないだなんて、困ったものだ。

ああいや、そのおかげで、猿が考えてもすぐに分かるようなことを1時間か2時間喋るだけで金がもらえるようになったのか。それは大いに感謝しないと。ははっ、最近の収入なんか、もはやほとんど講演だもんね。

そういえば、明日も講演だな。内容のおさらいでもしておくか。ええと、ノート、ノート……あった。

  • テーマ - 「非自己叙述的」
    • 非自己叙述的とは - ある言葉が、その言葉自身に背く意味を持つさま。
        • 「接続詞」という言葉について:この言葉そのものは名詞である。よって「接続詞」という言葉は非自己叙述的である
        • 「かたかな」という言葉について:この言葉そのものはひらがなで書かれている。よって「かたかな」という言葉は非自己叙述的である
    • Q1."Japanese" という言葉は非自己叙述的? - "Japanese" の意味するところは「日本語」であるが、この言葉自身は英語であるため、"Japanese" は非自己叙述的な言葉である
    • Q2.「ヘロイン」という言葉は非自己叙述的? - 「ヘロイン」は「ヘロイン」という言葉それ自体について述べることはできないため、「ヘロイン」という言葉はどちらでもない
      • このことから、ある言葉が非自己叙述的であるかどうか判断するとき、その言葉は前提として「言葉(言語)について述べる言葉(言語)」でなければならない[5]と分かる。ちなみに、「言語について述べる言語」のことをメタ言語という。
    • Q3.「非自己叙述的」という言葉は非自己叙述的?
      • 仮定1――「非自己叙述的」という言葉は非自己叙述的である。
        ∴「非自己叙述的」は「非自己叙述的」という言葉に背いている。
        ∴「非自己叙述的」は非自己叙述的でない。(=仮定と矛盾する結論)
      • 仮定2――「非自己叙述的」という言葉は非自己叙述的でない。
        ∴「非自己叙述的」は「非自己叙述的」という言葉に背いていない。
        ∴「非自己叙述的」は「非自己叙述的」である。(=またもや仮定と矛盾する結論)
      • どうしてこんなことに?――先にも言ったように、ある言葉が非自己叙述的かどうか判断するとき、その言葉はメタ言語でなければならない。ということは、「非自己叙述的」という言葉はメタ言語について述べる言語である。もし仮に、「メタ言語」と「メタ言語について述べる言語」の性質が異なるとすれば、「『非自己叙述的』という言葉は非自己叙述的であるか」という問いに矛盾が生まれることを説明できる。
        要は、「『非自己叙述的』という言葉はメタ言語について述べるために使われるべきなのに、この問いは『非自己叙述的』という言葉をメタ言語について述べる言語について述べるために使おうとしている」すなわち「言葉の使い方を間違えている」ため、「常に偽」つまり「矛盾」が起こる、ということである。
        たとえるならば、「現在のフランス国王は74歳である」という文が常に偽となる(「74歳である」と仮定しても「74歳でない」と仮定しても、「現在のフランス国王」という言い方が間違っている[6]ため)ようなものである。

脚注

  1. この記述は記事自体について述べたものであるから、広い意味では「自己叙述的である(autological)」といえる……のだろうか……いや違うか……。
  2. 厳密には形容動詞だが、論を進めるうえではそれらを区別するのは明らかに無駄な概念である。
  3. ちなみに"non-hyphenated(ハイフンでつながれていない)"という言葉それ自体は、ハイフンでつながれている。よってこれも、非自己叙述的な言葉の一つである。
  4. ええっ、どこで入れ替わったのでしょうか? もう一度読んで考えてみましょう。
  5. すでに例として挙げた "long" も "misspelled" も「動詞」も "hyphnated" も皆、「言語について述べるための言葉」である。
  6. 現在のフランスに国王はいない。