「利用者:Notorious/サンドボックス/消滅の悪魔」の版間の差分

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'''第二章 '''
'''第二章 '''
卦伊佐は手袋をつけ、言伝の客室の扉を引き開けた。梅丹も同様に、白い手袋をつけている。


まず、錆のような血の匂いが鼻をついた。部屋は梅丹の客室と同じ構造で、ビジネスホテルの部屋に似ている。ただし、小さな窓から見えるのは、遥か下方をゆっくりと移動する雲である。部屋を入って手前左には、ユニットバスに通じるドア。左奥には、シングルベッド。右奥には、机と椅子。その上には開いたままのパソコンや飲み物がある。床には小ぶりなリュックサックが転がっている。
そして、その横、机の脇に、言伝遺の遺体 <s>遺だけにね!</s> は転がっていた。頭を部屋の奥に向け、仰向けに倒れている。その胸にはナイフが突き刺さり、シャツと床は血で赤く染まっていた。目は虚ろに、机の方を見ている。
卦伊佐は、死体の胸や瞳孔、肘などをチェックしていた。一通り死体の検分を終えたらしい。
<br>「死因は胸の刺し傷だ。ただし、刺されてから少しの間、息はあっただろう。死後半日といったところだろうから、事件が発生したのは昨夜遅くだと思う。」
<br>一方、梅丹は別のものに注意をひかれていた。
<br>「血痕が、いろんなところに残ってますね。」
<br>部屋の扉から死体が倒れているあたりまで、血痕が点々と続いている。さらに、机の上にも、血の手形が一つあった。
<br>「察するに、被害者は扉付近で刺され、その後ここまで移動してきたみたいですね。」
<br>「ああ、そのとおりだろうな。犯人はドアをノックして、ガイシャ──これはウィアーじゃなくて言伝のことだ──がドアを開けた途端、ブスリ。こんなところか。」
<br>「気になるのは、机の血痕ですが……。」
<br>梅丹は、机に近づいた。すると、あることに気がついた。
「卦伊佐さん、ちょっとこれ見てください!」
<br>「なんだ、パソコンか? 今じゃ珍しい型だな。キーボード付きのタブレット型か……。」
<br>「そうじゃなくて、ほら、画面に血痕がついてるんです!」
<br>「うん? 本当だ。血のついた指で画面をタップした見たいだな。」
<br>「そう、そうなんです!」
<br>「だからなんだ?」
<br>「言伝さんは、死に際に最期の力を振り絞って、画面をタップした。これはつまり……。」
<br>探偵らしく、梅丹は宣言した。
<br>「{{傍点|文章=ダイイングメッセージ}}ですよ!」
二人は、さっそくパソコンの調査に取りかかった。パソコンの画面はロックされているが、言伝が死んだときはそうではなかっただろう。パソコンのロックを解除しなくてはならない。幸い、この問題はすぐに解決した。卦伊佐が、死体の顔をカメラにかざし、網膜認証を突破したのだ。旧型のパソコンで助かった、と梅丹は胸を撫で下ろした。現在主流の静脈認証だったら、死体では反応しない。
パソコンはアンロックされると、すぐにある画面を映し出した。二人は顔を寄せ合ってその画面を覗き込んだ。それは、音楽の再生終了画面だった。地球上のありとあらゆる音楽が集う、馴染み深いサイト。画面中央には、「もう一度再生する」というボタン。その下には、シンプルなフォントで、数世紀前のそう有名でない曲の題名とアーティスト名が表記されていた。
いわく、
『ド屑』feat.歌愛ユキ なきそ
と。


'''第三章 快刀乱麻を断つ(使いたいだけ)'''
'''第三章 快刀乱麻を断つ(使いたいだけ)'''
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