「利用者:キュアラプラプ/サンドボックス/丁」の版間の差分

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「これは驚いた。書斎というからには、現代レトロ趣味で集めた紙製の本とか、インク入りのペン……確かボールペンとか言ったか。ああいうのが散らかったデスクがあるような部屋を想像していたが……。」
「これは驚いた。書斎というからには、現代レトロ趣味で集めた紙製の本とか、インク入りのペン……確かボールペンとか言ったか。ああいうのが散らかったデスクがあるような部屋を想像していたが……。」


大理石の白を基調とした書斎には、流し台や食器棚、コーヒーメーカーが据え付けられており、この部屋に初めて入った者にはキッチンだとしか思えない。
大理石の白を基調とした書斎には、流し台や食器棚、ドリップ式コーヒーメーカーが据え付けられており、この部屋に初めて入った者にはキッチンだとしか思えない。


ただしこの部屋は、書斎だろうがキッチンだろうが紛う方なき殺人現場だ。部屋の中心にあるテーブルには向かい合わせに椅子が二脚。そして、奥の方の椅子から転げ落ちるようにして倒れていたのが、律家律の遺体だった。激しく抵抗した痕跡が残っており、左胸にはナイフが刺さっている。
ただしこの部屋は、書斎だろうがキッチンだろうが紛う方なき殺人現場だ。部屋の中心にあるテーブルには向かい合わせに椅子が二脚。そして、奥の方の椅子から転げ落ちるようにして倒れていたのが、律家律の遺体だった。激しく抵抗した痕跡が残っており、左胸にはナイフが刺さっている。
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「……なるほど。」
「……なるほど。」


「そうねえ……。うん……夫はね、本当に几帳面な人だったわ。起きたらまず20秒間顔を洗う、流しに置いたままにしていい食器は一つまで。ネクタイピンの位置は毎日10分くらいかけて調整してたし、お辞儀の角度だって完璧になるまで練習してた。ほんと、馬鹿げてるわ。でも、どんなに忙しくても朝食は家族で一緒にとってくれた。特別な日には仕事をほっぽり出して、みんなで遊んだわよね。ねえ、覚えてる? 律……。」
「そうねえ……。うん……夫はね、本当に几帳面な人だったわ。起きたらまず20秒間顔を洗う、使った食器は流しに一つだけ残しておき、増え次第すぐに洗って交換する。ネクタイピンの位置は毎日10分くらいかけて調整してたし、お辞儀の角度だって完璧になるまで練習してた。ほんと、馬鹿げてるわ。でも、どんなに忙しくても朝食は家族で一緒にとってくれた。特別な日には仕事をほっぽり出して、みんなで遊んだわよね。ねえ、覚えてる? 律……。」


ネモは、いつの間にか眠ってしまっていた。
ネモは、いつの間にか眠ってしまっていた。
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「よし、反応は出なかったな、じゃあ次は弟さんの方から。」
「よし、反応は出なかったな、じゃあ次は弟さんの方から。」


「うい。えー、俺はまあ、母の話をしたよ。そろそろ認知症がやばいから、施設に預けたほうがいいかもしれないってな。飲み物は俺もコーヒーだったぜ。時間は知らん。俺はそういうの気にしないタイプなんでな。状態……うーん、流しは見てなかったけど、律が洗ったらしいマグカップを拭いてたのは覚えてる。あーあと、コーヒーマシーンのスイッチを切ってたっけか。こんなとこかな。」
「うい。えー、俺はまあ、母の話をしたよ。そろそろ認知症がやばいから、施設に預けたほうがいいかもしれないってな。飲み物は俺もコーヒーだったぜ。時間は知らん。俺はそういうの気にしないタイプなんでな。状態……うーん、流しは見てなかったけど、律が洗ったらしいマグカップを拭いてたのは覚えてる。あーあと、コーヒーの粉を棚に戻してたっけか。こんなとこかな。」


「よし、これも無反応。じゃあ続いてそっちの……亜奈秋さんだっけ?」
「よし、これも無反応。じゃあ続いてそっちの……亜奈秋さんだっけ?」
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「よし。あー、じゃあ次は奥さんで。ウソ発見器の予備はちゃんとあるのでご安心を。」
「よし。あー、じゃあ次は奥さんで。ウソ発見器の予備はちゃんとあるのでご安心を。」


「……あ、はい、えっと、私はまあ……なんというか、とりとめのないどうでもいいような話をしに行きました。今日は天気がいいね、とか。飲み物はミルクでした。時間は……覚えてないけど、そんなに遅くではなかったと思います。あ、あと、入るときに冷蔵庫からミルクを出してるところが見えたのは覚えてます。ちょっと来るのが早かったかな、って思って。あ、あと、私が出ていくときにコーヒーマシーンのスイッチを入れてました。それくらい……ですね。」
「……あ、はい、えっと、私はまあ……なんというか、とりとめのないどうでもいいような話をしに行きました。今日は天気がいいね、とか。飲み物はミルクでした。時間は……覚えてないけど、そんなに遅くではなかったと思います。あ、あと、入るときに冷蔵庫からミルクを出してるところが見えたのは覚えてます。ちょっと来るのが早かったかな、って思って。あ、あと、私が出ていくときに氷を出してました。それくらい……ですね。」


「よし、無反応。じゃあ次は……その……そちらの方は……。」
「よし、無反応。じゃあ次は……その……そちらの方は……。」
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調子に乗って五百六回転アクセルまで成功させてしまった橘地は、遂にその口を開いた。
調子に乗って五百六回転アクセルまで成功させてしまった橘地は、遂にその口を開いた。


「はい。そうですね。私もノレ様と同様、大した目的があったわけではありませんでしたが、ご主人様とお話がしたいなという事で、八時半ごろに書斎へ伺いました。いただいた飲み物はホットミルクでしたね。部屋の状態はあまり観察しておりませんでしたが、コーヒーマシーンをオンにしていたことは記憶しています。」
「はい。そうですね。私もノレ様と同様、大した目的があったわけではありませんでしたが、ご主人様とお話がしたいなという事で、八時半ごろに書斎へ伺いました。いただいた飲み物はホットミルクでしたね。部屋の状態はあまり観察しておりませんでしたが、冷蔵庫から氷を出していたことは記憶しています。」


「え……!? え、あ、うん。はい。よし、無反応。無反応だったな。……うーむ、証言は集まったが……順番の特定は難しそうだな。ヒントがあまりにも少なすぎる。」
「え……!? え、あ、うん。はい。よし、無反応。無反応だったな。……うーむ、証言は集まったが……順番の特定は難しそうだな。ヒントがあまりにも少なすぎる。」
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「ふふ、仕方ないなあ。教えてあげよう。」
「ふふ、仕方ないなあ。教えてあげよう。」


ラレはドヤ顔で説明を始めた。
ラレは超ドヤ顔で説明を始めた。
 
「私はヒントの多いママを軸に考えたわ。まず、入るときに冷蔵庫からミルクを出していたことから、前に出された飲み物がミルクではないことが分かる。前の飲み物がミルクだった場合、次もミルクはホットミルクにしないといけないんだから、わざわざ一旦冷蔵庫に入れる意味なんてないもの。そして、帰り際に氷を出していたことから、次に出る飲み物がコーヒーであることも分かるわね。うちのコーヒーメーカーはドリップ式だから、出てくるのはホットコーヒーになる。ここから急冷式のアイスコーヒーにするには、当然冷やすための氷が必要になるわ。
 
 で、ママの前の人でありうる人は、コーヒーを飲んだコノイエさん、世哉おじさん、ウソツさんの三人になる。だけどコノイエさんは、次の人は秋ちゃんで確定してるから除外できるわね。ということで、まずはママの前の人を世哉おじさんとするわ。ところで、世哉おじさんとウソツさんは、どっちもパパがマグカップを拭いていたのを見ている。このことから、二人のそれぞれ二つ前に出された飲み物はミルクだと分かるわ。『使った食器は流しに一つだけ残しておき、増え次第すぐに洗って交換する』。パパの変なトコの一つね。
 
 このとき、ママの前の世哉おじさんには確実に二つ前の人までいるんだから、ママの前にいる人は少なくとも三人。となると逆説的には、ママの後ろには少なくとも一人コーヒーを飲んだ人がいるけど、多くたってその人の後ろには一人までしかいないことになる。パパのところに行った人は六人しかいないんだもの。このことから、ママの前に世哉おじさんがいる場合のウソツさんの順番は、二つにまで絞れるわ。一つは世哉おじさんの直前、もう一つは一番最後ね。」
 
「……もしもし? ちょっと待ってくださいよ、全然分かりませんって。」
 
此井江の言葉に全員が激しく頷く。
 
「もう、ちゃんと説明するってば。だからつまり、」
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