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財団は、各地に民家に見せかけた小基地を持っている。いかなる時、いかなる場所でも、突発事態に対応できるようにだ。そして、現場に近い小基地の中に、二人はいた。予告された時刻通りに、財団の秘密回線が開き、会議が始まった。 | 財団は、各地に民家に見せかけた小基地を持っている。いかなる時、いかなる場所でも、突発事態に対応できるようにだ。そして、現場に近い小基地の中に、二人はいた。予告された時刻通りに、財団の秘密回線が開き、会議が始まった。 | ||
浩司と樋口は、白い椅子に並んで腰掛け、正面のスクリーンに目を向けていた。22時30分、それまで黒かったスクリーンに、突如としていくつかの人の姿が映し出された。その中には、機動部隊総督・剣崎剛毅の姿もある。と、一人の姿を見て、浩司は驚愕した。モザイクがかかっていて、人影しか見えないのだ。財団内部の人間にも顔を知られてはいけないという、第一級秘密保持体制。これは、人影がW5評議員であることを指す。浩司の驚愕と緊張をよそに、スーツに銀縁眼鏡の男が口火を切った。 | |||
<br>「新規YGT緊急対策会議を始めます。では、まずは被害状況の確認を、第十二分隊隊長、お願いします」 | <br>「新規YGT緊急対策会議を始めます。では、まずは被害状況の確認を、第十二分隊隊長、お願いします」 | ||
<br>「はい!」 | <br>「はい!」 | ||
<br> | <br>“さきがけ”分隊長の男は、勢いよく立ち上がった。顔が紅潮している。当たり前だ。総督だけでなくW5評議員までもが会議に同席しているのだ。人生で一度あるかわからない事態。たぶん自分も、この男と同じような表情をしているだろうな、と思った。 | ||
<br> | <br>「当該YGTは、本日20時23分に出現、同日20時51分に消失しました。その過程で、現在確認が取れているだけでも、131人が死亡しました。この数は、これから増えていくと思われます。負傷者数も千人単位。また、31戸の家屋が全壊、200戸以上が半壊しました。機動部隊の損害といたしましては、本分隊航空部隊のA15型ヘリコプター2機が撃墜され、乗組員4人が死亡しました。以上です」 | ||
<br>「では次に、当該YGTについて、対策研究員として私から報告させていただきます」 | |||
<br>銀縁眼鏡はメモも見ずに話し始めた。 | |||
<br>「このYGTを、我々はYGT-362“<ruby>引力者<rt>グラビティア</rt></ruby>”と呼称することに決定しました。引力者の調査自体は、しばらく前から開始されていました。しかし、なかなか尻尾を出さないものですから、進展はほとんどありませんでした」 | |||
<br>YGTの調査が十年単位に及ぶことも、珍しいことではない。 | |||
<br>「結局、調査で得られたのは、噂・伝説程度の信憑性しか持たない情報です。それを総合すると、次のようになります」 | |||
<br>一度、唇を舐めた。 | |||
<br>「まず、引力者の伝説は世界各地に遍在しています。よって、引力者は世界中に広く存在していると考えられます。そして、いずれにおいても、掌を中心にして強力な引力を発生させる、という情報が大まかに共通していました」 | |||
<br>今回安里に現れた引力者にも当てはまる特徴だ。 | |||
<br>「次に、今回の攻撃でわかったことを報告いたします。今回出現した引力者は、高さ23メートル。出現時には、半径300メートルに及ぶ重力異常 |
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