「館シリーズ」の版間の差分

123 バイト追加 、 3年1月28日 (K)
更新
編集の要約なし
(更新)
2行目: 2行目:


==概要==
==概要==
1987年、館シリーズ1作目で綾辻のデビュー作でもある「十角館の殺人」が刊行された。これは高い評価を受け、「'''新本格'''」と呼ばれる本格ミステリ復権ムーブメントの嚆矢となった。
その翌年、第2作「水車館の殺人」を発表し、その帯で初めて「新本格」という言葉が用いられた。
1991年に発表された第5作「時計館の殺人」は、第45回日本推理作家協会賞を受賞している。文藝春秋編「[[東西ミステリーベスト100]]」では、「十角館の殺人」が国内編8位、「時計館の殺人」が同20位にランクインしている。
6作目「黒猫館の殺人」までは半年〜2年おきに新作が刊行されていたが、第7作「暗黒館の殺人」の発表は前作から12年かかっている。また、現段階での最新作「奇面館の殺人」の発表から現在までは、{{#expr:{{CURRENTYEAR}}-2012}}年経っている。
館シリーズは、既刊9作であり、次の第10作で完結するとされている。そして、その完結巻の題名は「天竺鼠館の殺人」に決定したと、綾辻は2021年4月1日に<del>中国の</del>SNSアプリ「Twitter」で発表した<ref>[https://mobile.twitter.com/ayatsujiyukito/status/1377342045866483716 当該ツイート]</ref>。
エイプリル・フールの冗談はさておき、2022年に完結作の第10作は「双子館の殺人」となると告知された。メフィストリーダーズクラブにて連載予定である。
シリーズ作品は全て講談社文庫に収録されており、「黒猫館の殺人」までの6作は、全面改稿された「新装改訂版」が出版されている。


1987年、館シリーズ1作目で綾辻のデビュー作でもある「十角館の殺人」が刊行された。これは高い評価を受け、「'''新本格'''」と呼ばれる本格ミステリ復権ムーブメントの嚆矢となった。
2012年9月時点で、売上はシリーズ累計409万部を突破している。
<br>その翌年、第2作「水車館の殺人」を発表し、その帯で初めて「新本格」という言葉が用いられた。
<br>1991年に発表された第5作「時計館の殺人」は、第45回日本推理作家協会賞を受賞している。文藝春秋編「[[東西ミステリーベスト100]]」では、「十角館の殺人」が国内編8位、「時計館の殺人」が同20位にランクインしている。
<br>6作目「黒猫館の殺人」までは半年〜2年おきに新作が刊行されていたが、第7作「暗黒館の殺人」の発表は前作から12年かかっている。また、現段階での最新作「奇面館の殺人」の発表から現在までは、{{#expr:{{CURRENTYEAR}}-2012}}年経っている。
<br>館シリーズは、既刊9作であり、次の第10作で完結するとされている。そして、その完結巻の題名は「天竺鼠館の殺人」に決定したと、綾辻は2021年4月1日に<del>中国の</del>SNSアプリ「Twitter」で発表している<ref>[https://mobile.twitter.com/ayatsujiyukito/status/1377342045866483716 当該ツイート]</ref>。
<br>シリーズ作品は全て講談社文庫に収録されており、「黒猫館の殺人」までの6作は、全面改稿された「新装改訂版」が出版されている。
<br>2012年9月時点で、売上はシリーズ累計409万部を突破している。


==特徴==
==特徴==
このシリーズの特徴として、各作品に独特の'''館'''が登場することが挙げられる。シリーズを通して'''中村青司'''という建築家の館が登場する。そしてその多くが物語の、ひいては事件の舞台となる。この中村青司という建築家は、遊び心から「自らが設計した館に、''秘密の通路''や''隠し部屋''といったギミックを盛り込む」という設定がある。すなわち、本格ミステリ界では普通ご法度とされる'''「隠しギミック」ありきでの本格ミステリ'''となっているのだ。
また、'''伏線の多さ'''も大きな特徴である。作品により多少の差異はあれど、おしなべて伏線が多い作品群だと言える。


このシリーズの特徴として、各作品に独特の'''館'''が登場することが挙げられる。シリーズを通して'''中村青司'''という建築家の館が登場する。そしてその多くが物語の、ひいては事件の舞台となる。この中村青司という建築家は、遊び心から「自らが設計した館に、''秘密の通路''や''隠し部屋''といったギミックを盛り込む」という設定がある。すなわち、本格ミステリ界では普通ご法度とされる'''「隠しギミック」ありきでの本格ミステリ'''となっているのだ。
さらに、[[クローズドサークル]]で起こることが多いということも挙げられる。「人形館の殺人」「びっくり館の殺人」の2作以外は、クローズドサークルで事件が起こっている<ref>ただし、「十角館の殺人」「黒猫館の殺人」のように、探偵役や語り手がクローズドサークルの中にいないものもある</ref>。
<br>また、'''伏線の多さ'''も大きな特徴である。ネタバレに繋がるため深くは述べられないが、作品により多少の差異はあれど、おしなべて伏線が多い作品群だと言える。
<br>さらに、[[クローズドサークル]]で起こることが多いということも挙げられる。「人形館の殺人」「びっくり館の殺人」の2作以外は、クローズドサークルで事件が起こっている<ref>ただし、「十角館の殺人」「黒猫館の殺人」のように、探偵役や語り手がクローズドサークルの中にいないものもある</ref>。


==作品リスト==
==作品リスト==
32行目: 40行目:


2015年には「十角館の殺人」の英訳版「The Decagon House Murders」が海外で出版されている。
2015年には「十角館の殺人」の英訳版「The Decagon House Murders」が海外で出版されている。
<br>2019年から、清原紘の作画により、「十角館の殺人」のコミックリメイクが「月刊アフタヌーン」にて連載中である。原作からの変更点としては、主要人物<ruby>江南孝明<rt>かわみなみたかあき</rt></ruby>の名前が<ruby>江南<rt>かわみなみ</rt></ruby>あきらとなり、性別も男性から女性になっていることなどが挙げられる。
 
<br>館シリーズとは別に、綾辻行人原作、[https://ja.m.wikipedia.org/wiki/佐々木倫子 佐々木倫子]作画の漫画「月館の殺人」が、2004年から2006年にかけて、「月刊IKKI」にて連載されている。しかし、これは館シリーズとは関連が無い。「月館」も、「つきだて」という地名であり、建造物の名前ではない。
2019年から2022年にかけて、清原紘の作画により、「十角館の殺人」のコミックリメイクが「月刊アフタヌーン」にて連載された。原作からの変更点としては、主要人物<ruby>江南孝明<rt>かわみなみたかあき</rt></ruby>の名前が<ruby>江南<rt>かわみなみ</rt></ruby>あきらとなり、性別も男性から女性になっていることなどが挙げられる。
<br>また、綾辻の作品「霧越邸殺人事件」<ref>「東西ミステリーベスト100」では、国内編第82位にランクインしている</ref>は、幻想的な館、クローズドサークルなど館シリーズとの共通点が多いこと、さらには冒頭に「もう一人の中村青司氏に捧ぐ」という献辞があることから、「館シリーズの番外編」と位置づけられることもある。
 
館シリーズとは別に、綾辻行人原作、[https://ja.m.wikipedia.org/wiki/佐々木倫子 佐々木倫子]作画の漫画「月館の殺人」が、2004年から2006年にかけて、「月刊IKKI」にて連載されている。しかし、これは館シリーズとは関連が無い。「月館」も、「つきだて」という地名であり、建造物の名前ではない。
 
また、綾辻の作品「霧越邸殺人事件」<ref>「東西ミステリーベスト100」では、国内編第82位にランクインしている</ref>は、幻想的な館、クローズドサークルなど館シリーズとの共通点が多いこと、さらには冒頭に「もう一人の中村青司氏に捧ぐ」という献辞があることから、「館シリーズの番外編」と位置づけられることもある。


==脚注==
==脚注==
<references/>
<references/>
{{foot|cat=ミステリ|cat2=文学作品|ds=やかたしりいす}}
{{foot|cat=ミステリ|cat2=文学作品|ds=やかたしりいす}}
2,085

回編集