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気づけば、カラスはいつのまにか小鳥のすぐとなりにきていて、えがおでこういいました。 | 気づけば、カラスはいつのまにか小鳥のすぐとなりにきていて、えがおでこういいました。 | ||
「ねえねえ小鳥くん、かわいいかわいい小鳥くん、きみを食べてもいいかい?」 | |||
「え?」 | 「え?」 | ||
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「……! うん! あ、ありがとう!」 | 「……! うん! あ、ありがとう!」 | ||
つばさをはためかせ、小鳥は空にとびあがります。しかし、ケーキやさんがみえなくなっても、カラスはしつこく小鳥をおいかけてきました。それもものすごい速さで! 小鳥はひっしで小回りをきかせ、どうにか出しぬこうとしますが、カラスにはつうようしません。夕やけはもうむらさきがかってきていて、お日さまはしずみはじめています。 | |||
「小鳥くんはすばしっこいなあ。もういいからはやく食べさせてよう。」 | 「小鳥くんはすばしっこいなあ。もういいからはやく食べさせてよう。」 | ||
113行目: | 113行目: | ||
「……どうしてぼくを食べようとするのさ! 街にはもっとほかにおいしい食べものがあるでしょう!」 | 「……どうしてぼくを食べようとするのさ! 街にはもっとほかにおいしい食べものがあるでしょう!」 | ||
小鳥とカラスはつかずはなれず、ついに街の真ん中にある時計台のてっぺんまできました。空はくらくなってきて、お日さまはもうはんぶんしかありません。早くおみせに戻らないと、いちごはすてられて、ゴミばこに入れられてしまいます。ついさっきいちごと出会ったばっかりなのに、どうしてこんなふうにおもっているのか、じぶんにもわからなかったけれど、小鳥にとってそんなことはぜったいにいやでした。 | |||
小鳥はいつのまにか、森のともだちとおなじくらい、もしかしたらそれいじょうに、いちごのことをだいじにおもっていたのです。 | 小鳥はいつのまにか、森のともだちとおなじくらい、もしかしたらそれいじょうに、いちごのことをだいじにおもっていたのです。 | ||
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「ずっとしあわせにするから。」 | 「ずっとしあわせにするから。」 | ||
「ど、どうして、じゃあ、たべる、なんて。」 | |||
ちく、たく、ちく、たく。 | ちく、たく、ちく、たく。 | ||
155行目: | 155行目: | ||
七時をつげる時計台のおとが、小鳥をわれにかえらせました。にしの方をみると、あおぐろい雲の下、お日さまはほとんどしずみかかっています。小鳥は、かんがえるよりさきに、じめんに向かってすごいスピードでおちはじめました。カラスもやっぱりあとをおって、まっさかさまにおちてきます。 | |||
「小鳥くん、どうしたの? そのさきにはじめんしかないよ! このままだとぶつかっちゃう!」 | |||
カラスのいうとおり、小鳥はじめんに向かってまっしぐら。あぶない、ぶつかる――! というところでおっとっと、くるりとからだをひるがえします。しかしのっぽのカラスは小回りがきかず、そのままじまんの大きな羽をじめんに打ちつけてしまいました。これでカラスも、当分のあいだはうごけないでしょう。 | |||
「ぐっ……小鳥くん……ぼくはあきらめないからね! いつかきみのことを食べてあげるから!」 | |||
カラスのことばには耳もかさず、小鳥はあのケーキやさんに向かってぜんそくりょくでかけていきます。お日さまはついに、とおくに見える山のあいだにしずんでしまいました。いちごさん、おねがい、ぶじでいて! |
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