「Sisters:WikiWikiオンラインノベル/疑心暗鬼」の版間の差分

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<br> 麗は玄関へと歩いていき、サムターンに手をかけた。
<br> 麗は玄関へと歩いていき、サムターンに手をかけた。
<br> その時、一つの疑念が首をもたげた。馬鹿馬鹿しいはずなのに、どうしても捨てきれない疑念。
<br> その時、一つの疑念が首をもたげた。馬鹿馬鹿しいはずなのに、どうしても捨てきれない疑念。
<br> 燿が、通り魔なんじゃないか? 家に上げていいのか? 匿ってもらうためにきたんじゃないか? いや、ひょっとしたら私も刺されるかもしれないんじゃないか? 女の麗が、力で燿に敵う訳がない。部屋に入ったら、いやドアを開けた瞬間、殺されてもおかしくないのではないか?
<br> 燿が、通り魔なんじゃないか? 家に上げていいのか? 匿ってもらうためにきたんじゃないか? いや、ひょっとしたら私も刺されるかもしれないんじゃないか? 女の私が、力で燿に敵う訳がない。部屋に入ったら、いやドアを開けた瞬間、殺されてもおかしくないのではないか?
<br> 体が固まった。嫌な汗が滲み出てくる。
<br> 体が固まった。嫌な汗が滲み出てくる。
<br>「……姉貴?」
<br>「……姉貴?」
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<br> この部屋の間取りは、風呂・トイレ付きの1DK。燿が通り魔なら、家に入れた時点で逃げ場はない。
<br> この部屋の間取りは、風呂・トイレ付きの1DK。燿が通り魔なら、家に入れた時点で逃げ場はない。
<br> いや、周りに助けを求めれば……。そこまで考えて麗は頭を抱えた。2階の住人は麗を除いて1人だが、その1人は長期旅行中。更に、下の階の管理人老夫婦は耳が遠い。いくら泣き叫んでも助けは来ないだろう。
<br> いや、周りに助けを求めれば……。そこまで考えて麗は頭を抱えた。2階の住人は麗を除いて1人だが、その1人は長期旅行中。更に、下の階の管理人老夫婦は耳が遠い。いくら泣き叫んでも助けは来ないだろう。
<br> 燿を部屋に入れないのが一番安全だが、潔白だったら入れない訳にはいかない。追い返されて家に帰っている間に刺されました、なんてことになるかもしれないのだ。やはり、燿が通り魔か否か、慎重に見極めねばならない。
<br> 燿を部屋に入れないのが一番安全だが、潔白だったら入れない訳にはいかない。追い返されて家に帰っている間に燿が本物の通り魔に刺されました、なんてことになるかもしれないのだ。やはり、燿が通り魔か否か、慎重に見極めねばならない。




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<br>「酒に弱いあんたが、よく面接通ったわね」
<br>「酒に弱いあんたが、よく面接通ったわね」
<br>「店員は酒飲まねえからいいんだよ。それに、最近はそこそこ飲めるようになったんだぜ?」
<br>「店員は酒飲まねえからいいんだよ。それに、最近はそこそこ飲めるようになったんだぜ?」
<br> 燿は、生粋の下戸だ。少し杯を舐めただけで、ベロベロに酔ってしまう。燿が二十歳になった日、あっという間に酔い潰れた燿を担いで店を出たのはいい思い出だ。
<br> 燿は、生粋の下戸だ。少し杯を舐めただけで、ベロベロに酔ってしまう。燿が二十歳になった日の夜、あっという間に酔い潰れた燿を担いで店を出たのはいい思い出だ。
<br> そんな弟が通り魔じゃないかと疑っている、私の頭のネジが数本飛んでいることは間違いない。
<br> そんな弟が通り魔じゃないかと疑っている、私の頭のネジが数本飛んでいることは間違いない。
<br>「とにかく、もうしばらく待ってなさい」
<br>「とにかく、もうしばらく待ってなさい」
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<br>「{{傍点|文章=ギャルの証言よ}}」
<br>「{{傍点|文章=ギャルの証言よ}}」
<br> 麗をテレビを指した。丁度写真を撮ったギャルのインタビューシーンが流れている。
<br> 麗をテレビを指した。丁度写真を撮ったギャルのインタビューシーンが流れている。
<br>「彼女は、{{傍点|文章=自撮り中に画面の中で通り魔が右手で}}女性を刺したのを見た、と証言しているわ。最初はスルーしてたけど、よく考えたら解釈を間違えていたのに気づいたわ。{{傍点|文章=スマホの内カメの画面だと}}、{{傍点|文章=左右は反転する}}」
<br>「彼女は、{{傍点|文章=自撮り中に画面の中で通り魔が右手で}}女性を刺したのを見た、と証言しているわ。最初はスルーしてたけど、よく考えたら解釈を間違えていたのに気づいたわ。{{傍点|文章=スマホのインカメラの画面だと}}、{{傍点|文章=左右は反転する}}」
<br> 麗はプルタブを引き起こし、ビールを呷った。
<br> 麗はプルタブを引き起こし、ビールを呷った。
<br>「テレビで『犯人は右利き』なんて吹聴されていたから、テレビクルーと同じ勘違いをしてしまったわ。本当は、{{傍点|文章=通り魔は左利き}}なのよ」
<br>「テレビで『犯人は右利き』なんて吹聴されていたから、テレビクルーと同じ勘違いをしてしまったわ。本当は、{{傍点|文章=通り魔は左利き}}なのよ」
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<br> 変な酔い方をするのね。麗は呆然としていたが、ゆっくりと歩き出す。
<br> 変な酔い方をするのね。麗は呆然としていたが、ゆっくりと歩き出す。
<br> {{傍点|文章=2人目の通り魔が怖くなかったのも}}、{{傍点|文章=こんなことが起こるなんてと驚いたのも}}、「{{傍点|文章=それらの可能性は低い}}」{{傍点|文章=と判断できたのも}}、{{傍点|文章=家族が通り魔で襲われるんじゃないかなんて発想ができたのも}}。
<br> {{傍点|文章=2人目の通り魔が怖くなかったのも}}、{{傍点|文章=こんなことが起こるなんてと驚いたのも}}、「{{傍点|文章=それらの可能性は低い}}」{{傍点|文章=と判断できたのも}}、{{傍点|文章=家族が通り魔で襲われるんじゃないかなんて発想ができたのも}}。
<br> 雑多にものが詰まった鞄から、新聞紙で包まれたものを取り出す。中から出てくるのは、赤と銀のきらめき。
<br> 押し入れに放り込んでいた、雑多にものが詰まった鞄を拾い上げ、新聞紙で包まれたものを取り出す。中から出てくるのは、赤と銀のきらめき。
<br> {{傍点|文章=全て}}、{{傍点|文章=私が2人目の通り魔だから}}。
<br> {{傍点|文章=全て}}、{{傍点|文章=私が2人目の通り魔だから}}。
<br> アルコールには、幾つもの作用がある。判断力の低下、入眠作用、そして何より{{傍点|文章=運動機能の低下}}。酒に弱い人ほど、効果は大きい。
<br> アルコールには、幾つもの作用がある。判断力の低下、入眠作用、そして何より{{傍点|文章=運動機能の低下}}。酒に弱い人ほど、効果は大きい。
<br> ああ、本当に可愛い私の弟。でも、ちょっと賢すぎたわね。
<br> ああ、本当に可愛い私の弟。でも、ちょっと賢すぎたわね。
<br> 血に塗られたナイフを振り下ろす。
<br> 燿の後ろに立った私は、血に塗られたナイフを振り下ろす。
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