「利用者:キュアラプラプ/サンドボックス/戊」の版間の差分

ギギイーーッッ
編集の要約なし
(ギギイーーッッ)
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「あっ、小鳥さんだ! 空をとんできた!」
「あっ、小鳥さんだ! 空をとんできた!」


「やあ小鳥さん。わあ、お~いしそうな木の実!」
「やあ小鳥さん。わあ、お~いしそうっ!」


「ほうほう、さすが小鳥くん、木の実をとるのがじょうずだねえ。」
「ほうほう、さすがは小鳥くん、くだものをとるのがじょうずだね。」


 小鳥には森のともだちがたくさんいます。いつも元気なりすさんに、食いしんぼうなうさぎさん、とっても頼りになるふくろうさん! 小鳥はみんなに木の実をすこしずつ分けてあげました。みんながおいしそうにたべているのをみて、小鳥はちょっぴりほこらしくなりました。
 小鳥には森のともだちがたくさんいます。いつも元気なりすさんに、食いしんぼうなうさぎさん、とっても頼りになるふくろうさん! 小鳥はみんなにとってきたものをすこしずつ分けてあげました。みんながおいしそうにたべているのをみて、小鳥はちょっぴりほこらしくなりました。


「えっへん、ぼくがえらんだ木の実はおいしいでしょう?」
「えっへん、ぼくがえらんできたくだものはおいしいでしょう?」


「うん、とっても!」
「うん、とっても!」
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 小鳥は、すごくしあわせでした。
 小鳥は、すごくしあわせでした。
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 じぶんが食べる分を木のみきのほら穴につめこんだあと、小鳥は日がくれるまであたりをさんぽすることにしました。この森をぬけたすぐそばには、にんげんたちのくらす街があります。そこにはにぎやかな歌やようきな音楽がいつもなりひびいていて、おいしい食べものもそこら中にあふれているのです。小鳥はこの街を、とーっても気にいっていました。
 じぶんが食べる分を木のみきのほら穴につめこんだあと、小鳥は日がくれるまであたりをさんぽすることにしました。この森をぬけたすぐそばには、にんげんたちのくらす街があります。そこにはにぎやかな歌やようきな音楽がいつもなりひびいていて、おいしい食べものもそこら中にあふれています。小鳥はこの街を、とーっても気にいっていました。


 はなうたまじりに街に入ろうとした小鳥は、ひんやりとした風といっしょにどこからかながれてきたものに心をうばわれました。甘くてきれいで、しっとりしたいいにおいです! そのおいしそうなかおりにつられ、しばらくそのままさまよって、小鳥はついににおいのもとまでたどりつきました。そこは、街のはずれにあるケーキやさんでした。
 はなうたまじりに街に入ろうとした小鳥は、ひんやりとした風といっしょにどこからかながれてきたものに心をうばわれました。甘くてきれいで、しっとりしたいいにおいです! そのおいしそうなかおりにつられ、しばらくそのままさまよって、小鳥はついににおいのもとまでたどりつきました。そこは、街のはずれにあるケーキやさんでした。


 かちゃかちゃぐつぐつ音がして、えんとつからはもくもくとけむりが立ちのぼっています。小鳥がおみせのなかをのぞいてみると、そこにはもちろんたくさんのケーキ! どれもおいしそうで、みているだけでおなかがへってきてしまいます。
 かちゃかちゃぐつぐつ音がして、えんとつからはもくもくとけむりが立ちのぼっています。小鳥がおみせのなかをのぞいてみると、そこにはもちろんたくさんのケーキ! どれもおいしそうで、みているだけでおなかがへってきてしまいます。すると――


「こんにちは、小鳥さん。」
「こんにちは、小鳥さん。」
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「雲の……うえ……。」
「雲の……うえ……。」


 小鳥はたしかに空をじゆうにとべます。けれど、雲の上にいったことはありませんでした。そんなにたかいところまでとぼうとしたら、つかれてへとへとになってしまうし、なにより小鳥はこわがりだったからです。じめんがみえなくなるほど上にいってしまったら、もうかえってこられなくなるんじゃないかと、どうしてもそうおもってしまうのです。
 小鳥はたしかに空をじゆうにとべます。けれど、雲の上にいったことはありませんでした。そんなにたかいところまでとぼうとしたら、つかれてへとへとになってしまうし、なにより小鳥はこわがりだったからです。じめんがみえなくなるほど上にいってしまったら、もうかえってこられなくなるんじゃないか――どうしてもそうおもってしまうのです。


 でも、そんなこといったらかっこわるい気がして、小鳥はうそをつきました。
 でも、そんなこといったらかっこわるい気がして、小鳥はうそをつきました。
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「……ご、ごめんね! 会ったばっかりなのにこんなこと聞いちゃって! め、めいわくだったよね! やっぱりこのことはわすれて!」
「……ご、ごめんね! 会ったばっかりなのにこんなこと聞いちゃって! め、めいわくだったよね! やっぱりこのことはわすれて!」


 いちごはかなしそうにうつむいています。それをみた小鳥は、ついあせって……。
 いちごはかなしそうにうつむいています。それをみた小鳥は、ついあせって、言ってしまいました。


「わ、わかった! つれていってあげるよ! 雲の上!」
「わ、わかった! つれていってあげるよ! 雲の上!」
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「……どうしてぼくを食べようとするのさ! 街にはもっとほかにおいしい食べものがあるでしょう!」
「……どうしてぼくを食べようとするのさ! 街にはもっとほかにおいしい食べものがあるでしょう!」


 小鳥とカラスはつかずはなれず、ついに街の真ん中にある時計台のてっぺんまできました。空はくらくなってきて、お日さまはもうはんぶんしかありません。早くおみせに戻らないと、いちごはすてられて、ゴミばこに入れられてしまいます。ついさっきいちごと出会ったばっかりなのに、どうしてこんなふうにおもっているのか、じぶんにもわからなかったけれど、小鳥にとってそんなことはぜったいにいやでした。
 小鳥とカラスはつかずはなれず、ついに街の真ん中にある時計台のてっぺんまできました。空はくらくなってきて、お日さまはもうはんぶんしかありません。早くおみせに戻らないと、いちごはすてられて、ゴミばこに入れられてしまいます。……ついさっきいちごと出会ったばっかりなのに、どうしてこんなふうにおもっているのか――じぶんにもわからなかったけれど、小鳥にとってそんなことはぜったいにいやでした。


 小鳥はいつのまにか、森のともだちとおなじくらい、もしかしたらそれいじょうに、いちごのことをだいじにおもっていたのです。
 小鳥はいつのまにか、森のともだちとおなじくらい、もしかしたらそれいじょうに、いちごのことをだいじにおもっていたのです。
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「ぐっ……小鳥くん……ぼくはあきらめないからね! いつかきみのことを食べてあげるから!」
「ぐっ……小鳥くん……ぼくはあきらめないからね! いつかきみのことを食べてあげるから!」


 カラスのことばには耳もかさず、小鳥はあのケーキやさんに向かってぜんそくりょくでかけていきます。お日さまはついに、とおくに見える山の向こうにしずんでしまいました。小鳥の中でいやなそうぞうがふくらんできます。ちかづいてきたケーキやさんのえんとつからは、もうけむりはのぼっていません。……いちごさん、おねがい、ぶじでいて!
 カラスのことばには耳もかさず、小鳥はあのケーキやさんに向かってぜんそくりょくでかけていきます。お日さまはついに、とおくに見える山の向こうにしずんでしまいました。小鳥の中でいやなそうぞうがふくらんでいきます。ちかづいてきたケーキやさんのえんとつからは、もうけむりはのぼっていません。……いちごさん、おねがい、ぶじでいて!


 小鳥はなりふりかまわず、いまさっきみちでひろった小石をまどガラスになげつけました。おおきな音を立てて、とうめいなガラスへんがくずれおちます。おみせのだれかのひめいもよそに、小鳥はわれたまどのすきまから中におし入って、目線はたなのはじっこの、ショートケーキのてっぺんの――
 小鳥はなりふりかまわず、いまさっきみちでひろった小石をまどガラスになげつけました。おおきな音を立てて、とうめいなガラスへんがくずれおちます。おみせのだれかのひめいもよそに、小鳥はわれたまどのすきまから中におし入って、目線はたなのはじっこの、ショートケーキのてっぺんの――
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「すごいなあ……空ってこんなにひろかったんだね。」
「すごいなあ……空ってこんなにひろかったんだね。」
「……そうだね。」
   
   
 ほほえましい気もちもひるがえって、雲の上へいちごをつれていくやくそくをおもいだした小鳥は、じぶんのなさけなさが憎らしくなりました。あのときうそをついてしまったことが、ぜんぶをだいなしにしているようにおもえました。だから小鳥は、いちごにほんとうのことをはなすことにきめました。
 ほほえましい気もちもひるがえって、雲の上へいちごをつれていくというやくそくをおもいだした小鳥は、じぶんのなさけなさが憎らしくなりました。あのときうそをついてしまったことが、いちごとのあいだの全てをだいなしにしているようにおもえました。
 
 だから小鳥は、いちごにほんとうのことをはなすことにきめました。


「あ、あのさ、雲の上につれていくってはなしなんだけど……。」
「あ、あのさ、雲の上につれていくってはなしなんだけど……。」
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「あっ、小鳥さんだ! 今日はおそかったね!」
「あっ、小鳥さんだ! 今日はおそかったね!」


「やあ小鳥さん。あれ? ま~た木の実をとってきたの?」
「やあ小鳥さん。あれ? ま~たくだものをとってきたの?」


「ほうほう、けっこう大きいね。これは……イチゴ、とかいったかな?」
「ほうほう、けっこう大きいね。これは……イチゴ、とかいったかな?」


 小鳥は、いちごといっしょに森にかえってきました。りすさん、うさぎさん、ふくろうさんの顔をみてすこしだけ元気になれたけれど、明日のことをかんがえると気もちはしずむ一方です。
 小鳥は、しばらくしていちごといっしょに森へかえってきました。りすさん、うさぎさん、ふくろうさんの顔をみてすこしだけ元気になれたけれど、明日のことをかんがえると気もちはしずむ一方です。


「こ、こら、いちごさんは食べものじゃない! ぼくのともだちだよ!」
「こ、こら、いちごさんは食べものじゃない! ぼくのともだちだよ!」
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「え、そうなの! ごめんごめん、しらなかったよ!」
「え、そうなの! ごめんごめん、しらなかったよ!」


 森のみんなはびっくりしているようすです。……小鳥は、すこしだけぞっとしてしまいました。いちごさん――イチゴを、……木の実を食べものだとおもうのは、じぶんたちにとってべつにおかしなことでもないのに、なにかすごくいやなかんじがしたのです。……あのおかしなカラスのことばをおもいだしたせいでしょうか。
 森のみんなはびっくりしているようすで、ふだんとかわらず明るくわらっています。……でも小鳥は、なぜだかぞっとしてしまいました。
 
 いちごさん――イチゴを、……くだものを食べものだとおもうのは、べつにおかしなことではないし、むしろとうぜんのことです。なのに、いちごさんと「食べもの」をむすびつけることばには、なにかとってもいやなかんじがするのです。
 
 ……あのおかしなカラスのことばをおもいだしたせいでしょうか。


「……ごめんねいちごさん、ここにいるみんなは、ぼくのともだち! ちかくにすんでるんだよ!」
「えっと……ごめんねいちごさん、ここにいるみんなは、ぼくのともだち! ちかくにすんでるんだよ!」


「だいじょうぶ、気にしてないよ。……でも、わたしのからだをかじったりするのはやめてね!」
「だいじょうぶ、気にしてないよ。……でも、わたしのからだをかじったりするのはやめてね!」
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 小鳥は、にげるようにしてねむりにおちました。
 小鳥は、にげるようにしてねむりにおちました。
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 お日さまもまだのぼらない朝はやく、ゆめもみることなくねむりからさめた小鳥は、ひんやりとした風といっしょにどこからかながれてきたものに顔をしかめました。甘くてすっぱくて、鼻をつくひどいにおいです。……でも、あたりをさがすまでもなく、小鳥はそのにおいのもとに気づいてしまいました。
 お日さまもまだのぼらない朝はやく、ふかいゆめからさめた小鳥は、ひんやりとした風といっしょにどこからかながれてきたものに顔をしかめました。甘くてすっぱくて、鼻をつくひどいにおいです。
 
 ……でも、あたりをさがすまでもなく、小鳥はそのにおいのもとに気づいてしまいました。
 
「あ、あれ?」


 それは小鳥のすぐとなりにありました。しなびた形がどんよりと黒ずんだ赤にいろどられ、ぽつぽつと粉をふくそれは――。
 それは小鳥のすぐとなりにありました。しなびた形がどんよりと黒ずんだ赤にいろどられ、ぽつぽつと粉をふくそれは――


「い、いちご……さん?」
「い、いちご……さん?」
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