「Sisters:WikiWikiオンラインノベル/スノータイムリミット」の版間の差分

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 <br> すると祐介が口を開いた。
 <br> すると祐介が口を開いた。
<br> 「1―Cの青崎由紀だよ。ほら、エルサって呼ばれてる子だ。光太も知ってるだろ?」
<br> 「1―Cの青崎由紀だよ。ほら、エルサって呼ばれてる子だ。光太も知ってるだろ?」
 <br> ああ、瞳に聞くより何倍もわかりやすい。青崎由紀、叉の名を1のCのエルサ。この学校ではちょっとした有名人だ。整った容姿に良い成績。運動神経も抜群で、今目の前にいる瞳と同じように、一年生ながらも不動のレギュラーの座に着いている。そのうえ品行方正で、自分にも他人にも厳格なその姿は不思議と見る人に自然と“お嬢様”を思わせるのだ。そして、何より目立つのはその白みがかったグレイの髪だろう。人より色彩が薄く目立つその髪は、その容姿と相まって素晴らしい造形を作り出しているのだ…ということらしい。僕の知っていることはどれも噂の域を出ないものだ。正直なところ何回か見かけた覚えがあるくらいで、殆ど知らないのだ。まあ、噂と明らかに違うようなところは無かったと思う。
 <br> ああ、瞳に聞くより何倍もわかりやすい。青崎由紀、またの名を1のCのエルサ。この学校ではちょっとした有名人だ。整った容姿に良い成績。運動神経も抜群で、今目の前にいる瞳と同じように、一年生ながらも不動のレギュラーの座に着いている。そのうえ品行方正で、自分にも他人にも厳格なその姿は不思議と見る人に自然と“お嬢様”を思わせるのだ。そして、何より目立つのはその白みがかったグレイの髪だろう。人より色彩が薄く目立つその髪は、その容姿と相まって素晴らしい造形を作り出しているのだ…ということらしい。僕の知っていることはどれも噂の域を出ないものだ。正直なところ何回か見かけた覚えがあるくらいで、殆ど知らないのだ。まあ、噂と明らかに違うようなところは無かったと思う。
 <br> 彼女はそのハイスペックさと厳格な性格、そして何よりその髪色からだろうか、数年前に流行った児童向け映画に出てくる氷の女王の名前が冠され、嫉妬と尊敬の入り混じった視線を向けられている。
 <br> 彼女はそのハイスペックさと厳格な性格、そして何よりその髪色からだろうか、数年前に流行った児童向け映画に出てくる氷の女王の名前が冠され、嫉妬と尊敬の入り混じった視線を向けられている。
<br> 「それで、由紀さんがどうかしたの?」
<br> 「それで、由紀さんがどうかしたの?」
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 <br> これは伝わってないな。言い方を変えてみよう。
 <br> これは伝わってないな。言い方を変えてみよう。
<br> 「じゃあ、今日起きた事をはじめから全部説明してくれないかい?」
<br> 「じゃあ、今日起きた事をはじめから全部説明してくれないかい?」
<br> 「わかった…」
<br> 「わかった……」
 <br> 瞳と話す時には、工夫が大事だ。
 <br> 瞳と話す時には、工夫が大事だ。
<br> 「今日はいつも通り朝練のために登校したよ。その時にはもう由紀はいたかな。」
<br> 「今日はいつも通り朝練のために登校したよ。その時にはもう由紀はいたかな。」
<br> 「ああ、由紀さんは朝練の時は部活をしていたんだね。それは何時頃?」
<br> 「ああ、由紀さんは朝練の時は部活をしていたんだね。それは何時頃?」
<br> 「確か…7時ちょうどくらいだよ。由紀はもう来てて、ひとりで壁打ちしてた。偉いよね。家も部内で1番遠いはずなのにいつも1番乗りなの。…それから5分くらいしたら先輩も全員集まったらから、いつも通り練習を始めたの。そして朝練を終えて8時に教室に行ったわ。おかしな事は何も無かった。ちょっと由紀はソワソワしてたけど、大会前だし緊張してたからみんなそんな感じだったよ。そっから普通に授業を受けた。あ、そういえば…」
<br> 「確か……7時ちょうどくらいだよ。由紀はもう来てて、ひとりで壁打ちしてた。偉いよね。家も部内で1番遠いはずなのにいつも1番乗りなの。…それから5分くらいしたら先輩も全員集まったらから、いつも通り練習を始めたの。そして朝練を終えて8時に教室に行ったわ。おかしな事は何も無かった。ちょっと由紀はソワソワしてたけど、大会前だし緊張してたからみんなそんな感じだったよ。そっから普通に授業を受けた。あ、そういえば…」
 <br> 彼女は何か思い出したようだ。
 <br> 彼女は何か思い出したようだ。
<br> 「…そういえば、由紀、昼休みに西棟の副生徒会に生徒会活動をしに行ったよ。確か…」
<br> 「……そういえば、由紀、昼休みに西棟の第二生徒会に生徒会活動をしに行ったよ。確か…」
 <br> 彼女はこめかみに指先を当てて思い出そうとしている。少し時間がかかりそうだ。僕は紅茶をひと口飲んだ。窓の外では数名の陸上部がトラックを走っている。先程教室にいた時から少しだけ空が曇ってしまって、どんよりとした雰囲気が漂っている。
 <br> 彼女はこめかみに指先を当てて思い出そうとしている。少し時間がかかりそうだ。僕は紅茶をひと口飲んだ。窓の外では数名の陸上部がトラックを走っている。先程教室にいた時から少しだけ空が曇ってしまって、どんよりとした雰囲気が漂っている。
<br> 「あっ、そうそう。由紀ね。部活用の鞄を持って、制服で向かったのに、なぜかジャージに着替えて帰ってきたんだ。どうしてかな〜とは思ったけど、理由は聞かなかったなぁ。」
<br> 「あっ、そうそう。由紀ね。部活用の鞄を持って、制服で向かったのに、なぜかジャージに着替えて帰ってきたんだ。どうしてかな〜とは思ったけど、理由は聞かなかったなぁ。」
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<br> 「出ていったと言ったけど、由紀さんが帰った事はしっかり確認したのかい?」
<br> 「出ていったと言ったけど、由紀さんが帰った事はしっかり確認したのかい?」
<br> 「うん。窓から、校門から走って帰ってく由紀を見たんだ。」
<br> 「うん。窓から、校門から走って帰ってく由紀を見たんだ。」
 <br> そうか…。僕は思案した。これだけじゃ何もわからないな。僕はそう思いながらホワイトボードに向かった。ホワイトボードを裏返し、新しい真っ新なところにこう書く。
 <br> そうか……。僕は思案した。これだけじゃ何もわからないな。僕はそう思いながらホワイトボードに向かった。ホワイトボードを裏返し、新しい真っ新なところにこう書く。
<br> 『由紀さん部活サボり事件』
<br> 『由紀さん部活サボり事件』
<br> 「ねえ、由紀はサボってるわけじゃないよ。きっと理由があるから、それを考えようって…。」
<br> 「ねえ、由紀はサボってるわけじゃないよ。きっと理由があるから、それを考えようって……。」
 <br> 瞳が不服そうに言う。
 <br> 瞳が不服そうに言う。
<br> 「そういえば今女バレは部活中だと思うけど、大会前なんだろ、瞳は行かないの?」
<br> 「そういえば今女バレは部活中だと思うけど、大会前なんだろ、瞳は行かないの?」
<br> わ、私はいいのよ。よくサボるし。今は由紀が来ないのが心配なの。」
<br> 「わ、私はいいのよ。よくサボるし。今は由紀が来ないのが心配なの。」
 <br> そう言って瞳は顔を赤くした。何故赤くなるのかわからなかったが、僕はそのまま作業を続ける。
 <br> そう言って瞳は顔を赤くした。何故赤くなるのかわからなかったが、僕はそのまま作業を続ける。
<br> 「今回の謎は『いつもなら人一倍努力するはずの由紀さんが部活をサボって帰ってしまった。それは何故か?』だな。そして今まで確認できたおかしな事は昼休みに生徒会活動へ行き、帰ってきた時にジャージに着替えていた事、これだけだ。」
<br> 「今回の謎は『いつもなら人一倍努力するはずの由紀さんが部活をサボって帰ってしまった。それは何故か?』だな。そして今まで確認できたおかしな事は昼休みに生徒会活動へ行き、帰ってきた時にジャージに着替えていた事、これだけだ。」
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 <br> そうだった。こいつはこういう奴だ。
 <br> そうだった。こいつはこういう奴だ。
<br> 「それで、どうだったんだ?その時の由紀さんの様子は。」
<br> 「それで、どうだったんだ?その時の由紀さんの様子は。」
<br> 「青崎は俺とクラスが一緒だからな、普通なら2人で西棟に行けば良かったんだが。俺は職員棟に用があったからそこに寄ってから西棟の副生徒会室へ向かったんだ。そこで昼休みに会計の仕事をするはずだった。」
<br> 「青崎は俺とクラスが一緒だからな、普通なら2人で西棟に行けば良かったんだが。俺は職員棟に用があったからそこに寄ってから西棟の第二生徒会室へ向かったんだ。そこで昼休みに会計の仕事をするはずだった。」
<br> 「はず?やらなかったのか?」
<br> 「はず?やらなかったのか?」
<br> 「ああ、そうだ。実はこの作業、会計係の俺と青崎、2人でやる仕事だったんだ。しかし、青崎が来なくてね。結局1人でやる事になったから、終わらせる事ができなかったんだ。」
<br> 「ああ、そうだ。実はこの作業、会計係の俺と青崎、2人でやる仕事だったんだ。しかし、青崎が来なくてね。結局1人でやる事になったから、終わらせる事ができなかったんだ。」
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<br> 「由紀さんは体調が悪かったのかもしれない。でもこれは違うかな。体調が悪い時により防寒性の低いジャージに着替えることは考えにくい…。または、何か家の用事があって早めに帰ったのかもしれない。昼休みに生徒会活動をサボってまでジャージに着替えないといけないような用事が…。」
<br> 「由紀さんは体調が悪かったのかもしれない。でもこれは違うかな。体調が悪い時により防寒性の低いジャージに着替えることは考えにくい…。または、何か家の用事があって早めに帰ったのかもしれない。昼休みに生徒会活動をサボってまでジャージに着替えないといけないような用事が…。」
<br> 僕は苦しい仮説に沈黙した。ダメだ。これでは完全に行き詰まってしまっている。この情報量では、僕に結論を出すことはできない…。
<br> 僕は苦しい仮説に沈黙した。ダメだ。これでは完全に行き詰まってしまっている。この情報量では、僕に結論を出すことはできない…。
<br> 「僕が考え得る学校で起きた事象によって由紀さんが部活に行くのを止め、家に帰ってしまう可能性はとても低い。だから何か別の、外部の理由があったんじゃないか…?なんにせよ瞳の話だけで推理できる物じゃない気がするんだ。彼女は学校でも有名な完璧人間だし…」
<br> 「僕が考え得る学校で起きた事象によって由紀さんが部活に行くのを止め、家に帰ってしまう可能性はとても低い。だから何か別の、外部の理由があったんじゃないか……? なんにせよ瞳の話だけで推理できる物じゃない気がするんだ。彼女は学校でも有名な完璧人間だし…」
<br> 「え?由紀が完璧人間?」
<br> 「え? 由紀が完璧人間?」
 <br> 瞳が僕の言葉に目を見開いて驚いた。
 <br> 瞳が僕の言葉に目を見開いて驚いた。
<br> 「あれ、何か間違えてる?」
<br> 「あれ、何か間違えてる?」
<br> 「それは違うよ!確かに勉強も運動もすごく出来るけど…。まあ、コータは由紀のことあんまり知らないものね。由紀も人とはあんまり関わらないタイプだし、誤解されてるのかなぁ…。」
<br> 「それは違うよ! 確かに勉強も運動もすごく出来るけど…。まあ、コータは由紀のことあんまり知らないものね。由紀も人とはあんまり関わらないタイプだし、誤解されてるのかなぁ……。」
 <br> どうやら重大な僕は勘違いをしていたらしい。青崎由紀の人柄を、噂ばかりのバイアスのみで考えていた。これは僕の完全な失態だ。初歩的な過ちを恥じる心と、これで解決に近づくかもしれないと期待する心、それぞれ半々の状態で瞳に聞く。
 <br> どうやら重大な僕は勘違いをしていたらしい。青崎由紀の人柄を、噂ばかりのバイアスのみで考えていた。これは僕の完全な失態だ。初歩的な過ちを恥じる心と、これで解決に近づくかもしれないと期待する心、それぞれ半々の状態で瞳に聞く。
<br> 「じゃあ…その、由紀さんはどんな人なんだい?」
<br> 「じゃあ……その、由紀さんはどんな人なんだい?」
<br> 「由紀はね。簡単に言うと真面目でかわいいドジっ子だよ。」
<br> 「由紀はね。簡単に言うと真面目でかわいいドジっ子だよ。」
 <br> 瞳は破顔した。
 <br> 瞳は破顔した。
<br> 「この間だってね、料理が苦手だから練習したいって由紀の家で2人でお菓子を作ったんだけど、その時由紀、砂糖と塩を間違えて入れちゃって、本当に塩辛いマフィンが出来たんだもの。あの時は笑ったなぁ…」
<br> 「この間だってね、料理が苦手だから練習したいって由紀の家で2人でお菓子を作ったんだけど、その時由紀、砂糖と塩を間違えて入れちゃって、本当に塩辛いマフィンが出来たんだもの。あの時は笑ったなぁ…」
 <br> 瞳の話を聞いて、僕は頭のなかで再び事実を確認しはじめた。可能性が限りなく広がっていく感覚がする。
 <br> 瞳の話を聞いて、僕は頭のなかで再び事実を確認しはじめた。可能性が限りなく広がっていく感覚がする。
 そ<br> して、僕はすぐに一つの仮説に辿り着いた。初めの方に捨ててしまっていた仮説だ。確認は必要だけど、きっと間違いは無いだろう。しかし、これは…この状況はまずい。
 <br> そして、僕はすぐに一つの仮説に辿り着いた。初めの方に捨ててしまっていた仮説だ。確認は必要だけど、きっと間違いは無いだろう。しかし、これは……この状況はまずい。
 <br> 僕は少し考え、瞳にお願いをすることにした。
 <br> 僕は少し考え、瞳にお願いをすることにした。
<br> 「ねえ、瞳。ちょっとお遣いを頼まれてくれない?」
<br> 「ねえ、瞳。ちょっとお遣いを頼まれてくれない?」
235行目: 235行目:
 <br> 私は教卓に置かれていたエプロンを素早く着て、由紀に近づいていく。
 <br> 私は教卓に置かれていたエプロンを素早く着て、由紀に近づいていく。
<br> 「瞳ちゃん、助けて。」
<br> 「瞳ちゃん、助けて。」
 <br> 由紀が涙目で私に助けを求めてくる。彼女が混ぜるボウルの横には近くのスーパーの袋に入った複数枚の板チョコと、昼休みに壊してしまったであろう手作りのチョコレートが置いてある。手作りチョコの方は割れてしまうまでは綺麗なハート型だったのだろうが、今は無惨な形になってしまっている。でも…これなら。
 <br> 由紀が涙目で私に助けを求めてくる。彼女が混ぜるボウルの横には近くのスーパーの袋に入った複数枚の板チョコと、昼休みに壊してしまったであろう手作りのチョコレートが置いてある。手作りチョコの方は割れてしまうまでは綺麗なハート型だったのだろうが、今は無惨な形になってしまっている。でも……これなら。
<br> 「由紀、大丈夫だよ。これなら間に合う。とびきり美味しいの作ろ!」
<br> 「由紀、大丈夫だよ。これなら間に合う。とびきり美味しいの作ろ!」
 <br> 私はエプロンの紐をキュッと締めなおした。
 <br> 私はエプロンの紐をキュッと締めなおした。
253行目: 253行目:
 <br> 祐介は事態が飲み込めない様子で、唖然としていたが、ちょっと遅れて。
 <br> 祐介は事態が飲み込めない様子で、唖然としていたが、ちょっと遅れて。
<br> 「わ、わかった。青崎。どうしたんだ?」
<br> 「わ、わかった。青崎。どうしたんだ?」
<br> 「えっと、私…」
<br> 「えっと、私……」
 <br> そう言って由紀さんは俯いてしまう。ここに来て、勇気が出ないのだろうか。僕は心の中で応援した。頑張れ!
 <br> そう言って由紀さんは俯いてしまう。ここに来て、勇気が出ないのだろうか。僕は心の中で応援した。頑張れ!
 <br> その時だった。
 <br> その時だった。
 <br> 何かが空から降ってきて、僕の頬を濡らした。
 <br> 何かが空から降ってきて、僕の頬を濡らした。
<br> 「雪だ…。」
<br> 「雪だ……。」
 <br> 僕が言うと、由紀さんと祐介も空を見上げた。粉のような雪がふわりふわりと、無数に空から舞い降りてくる。
 <br> 僕が言うと、由紀さんと祐介も空を見上げた。粉のような雪がふわりふわりと、無数に空から舞い降りてくる。
 <br> 僕らはその光景にしばし目を奪われていた。それはとても美しい景色であった。そして、空を見上げたままの由紀がポツリと言った。
 <br> 僕らはその光景にしばし目を奪われていた。それはとても美しい景色であった。そして、空を見上げたままの由紀がポツリと言った。
270行目: 270行目:
<br> 「うん。その通りだと思うよ。」
<br> 「うん。その通りだと思うよ。」
 <br> 僕は同意した。
 <br> 僕は同意した。
<br> 「ねえ、今日、一緒に帰らない?聞きたいことがあるの。」
<br> 「ねえ、今日、一緒に帰らない? 聞きたいことがあるの。」
<br> 「いいよ。」
<br> 「いいよ。」
 <br> 僕は答える。雪も降ってきたし、もうこんな時間だ。
 <br> 僕は答える。雪も降ってきたし、もうこんな時間だ。
313行目: 313行目:
 <br> 瞳と由紀さんはバレーの大会で市民体育館へ行っており、祐介も由紀さんの応援の為に同行しているそうだ。祐介はあの日から目に見えてデレデレしている。あれから毎日、映研に付き合わされているので、正直言って非常に不愉快である。 
 <br> 瞳と由紀さんはバレーの大会で市民体育館へ行っており、祐介も由紀さんの応援の為に同行しているそうだ。祐介はあの日から目に見えてデレデレしている。あれから毎日、映研に付き合わされているので、正直言って非常に不愉快である。 
 <br> 映画制作の方は、今僕が有吾さんのためにせっせと映画の“謎”を考えている最中だ。これがなかなか楽しい作業でこれからは読書くらいはまってしまいそうだ。まだ脚本の状態で、一ヶ月後の締め切りに間に合うかどうかはわからないが、ベストを尽くそうと思う。久々に夢中になれることを見つけられた気がする。
 <br> 映画制作の方は、今僕が有吾さんのためにせっせと映画の“謎”を考えている最中だ。これがなかなか楽しい作業でこれからは読書くらいはまってしまいそうだ。まだ脚本の状態で、一ヶ月後の締め切りに間に合うかどうかはわからないが、ベストを尽くそうと思う。久々に夢中になれることを見つけられた気がする。
 <br> 一方瞳と僕はというもの、あれから何もない。正直どう接すればいいのか分からないのだ。自分には全く縁のない物だと思っていた世界に、たった一つのチョコで放り出されてしまったのだ。僕はまだ、自分の気持ちさえ掴めていない。まあ、これにも一ヶ月あまりのの余裕がある。
 <br> 一方瞳と僕はというもの、あれから何もない。正直どう接すればいいのか分からないのだ。自分には全く縁のない物だと思っていた世界に、たった一つのチョコで放り出されてしまったのだ。僕はまだ、自分の気持ちさえ掴めていない。まあ、これにも一ヶ月あまりの余裕がある。
 <br> そう、僕のタイムリミットは約1ヶ月後、ホワイトデーのその日なのだ。
 <br> そう、僕のタイムリミットは約1ヶ月後、ホワイトデーのその日なのだ。
 <br> だからそれまで、気長に考えようと思う。
 <br> だからそれまで、気長に考えようと思う。
                                  
                                  
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