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「まあ、まず俺からかな。俺は威山横世哉。……旧姓は律家世哉。知っての通り律の弟だ。うう……兄貴い……。」
「まあ、まず俺からかな。俺は威山横世哉。……旧姓は律家世哉。知っての通り律の弟だ。うう……兄貴い……。」


「こっちは妻の威山横<ruby>亜奈秋<rt>あなあき</rt></ruby>。大切なお義父さんを殺した奴は、ゴリゴリの私刑に処そうと思っているわ。」
「こっちは妻の威山横<ruby>亜奈秋<rt>あなあき</rt></ruby>。大切なお義兄さんを殺した奴は、ゴリゴリの私刑に処そうと思っているわ。」


「……私は律の妻、律家ノレよ。……とてもお喋りなんかできる気持ちじゃないわ。」
「……私は律の妻、律家ノレよ。……とてもお喋りなんかできる気持ちじゃないわ。」
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 ネモは、いつの間にか眠ってしまっていた。
 ネモは、いつの間にか眠ってしまっていた。


 ――深夜二時、再び六人がダイニングルームに集まった。未だに電話越しの奴を含めると七人である。
 ――深夜二時、再び六人がダイニングルームに集まった。未だに電話越しの奴を含めると七人である。死体の状況を共有し、卦伊佐は続けた。


「えー、まあ、そういうわけで、各自書斎に行ったときのこと、特に{{傍点|文章=その時間}}や{{傍点|文章=部屋の状態}}を、今度は覚えているだけ精細に話してほしい。」
「えー、まあ、そういうわけで、各自書斎に行ったときのこと、特に{{傍点|文章=その時間}}や{{傍点|文章=部屋の状態}}を、今度は覚えているだけ精細に話してほしい。」
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 しかしラレは、この奇妙な状況が気になって仕方ないようだった。
 しかしラレは、この奇妙な状況が気になって仕方ないようだった。


「最後にパパの部屋に行った人を探してるの? なんで警察の人がいるの? どういうこと?」
「最後にパパの部屋に行った人を探してるって? なんで警察の人がいるの? どういうこと?」


「え、あ、そ、それは……あの、そう、そうよ。パパの部屋に忘れ物があって、そう、誰かがお金を落としちゃったみたいなの。で、えっと、パパは……もう寝ちゃったから、だからあの、来た人の順番を推理してるのよ。警察の人は……お客さん。ただのお客さんよ。」
「え、あ、そ、それは……あの、そう、そうよ。パパの部屋に忘れ物があって、そう、誰かがお金を落としちゃったみたいなの。で、えっと、パパは……もう寝ちゃったから、だからあの、来た人の順番を推理してるのよ。警察の人は……お客さん。ただのお客さんよ。」
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 「じゃあ、私は別の事件の現場に行かなくてはならんから、そろそろ失礼するぞ。容疑者をそのままにしておくのは危険だから、こいつは責任を持って私が預かっておく。警察が流石にそろそろ来るだろうから、それまで待機しておいてくれ。」
 「じゃあ、私は別の事件の現場に行かなくてはならんから、そろそろ失礼するぞ。容疑者をそのままにしておくのは危険だから、こいつは責任を持って私が預かっておく。警察が流石にそろそろ来るだろうから、それまで待機しておいてくれ。」


 喚く世哉を小指と薬指でつかんで、卦伊佐は勢いよく律家館を飛び出した。発生したソニックブームが、シャンデリアをコマみたいなことにしていった。ダイニングルームに残された五人と、未だに電話越しの一人は、ビビった。
 喚く世哉を小指と薬指でつかんで、卦伊佐は勢いよく律家館を飛び出した。発生したソニックブームが、シャンデリアをコマみたいなことにしていった。
 
 「ママ、容疑者ってどういうこと? 世哉おじさんは何か悪い事したの?」
 
 「ラレ……ううん、何も無いわよ。もうこんなこと忘れて、早く寝ましょう。」
 
 ダイニングルームに残された五人と、未だに電話越しの一人は、深く息をついた。




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<big>'''第四章 殺人を知らない探偵'''</big>
<big>'''第四章 殺人を知らない探偵'''</big>
 ──二月二十日・深夜──
 二月二十日午前三時、めっちゃデカい屋敷に悲鳴が響き渡った。
 ダイニングルームに残っていた橘地と宇曾都は、慌てて声のする方へと駆け出した。さっき亜奈秋は憔悴した様子で客室に帰っていったし、ノレも既にラレを連れて部屋に帰ってしまっている。此井江はというと、未だに家の中で迷っているらしい。
 ――悲鳴の主はラレだった。それもそのはず、部屋に包丁を持った女が侵入してきたのだから。
「あ、あ、秋ちゃん……?」
「おかしい……こんなのおかしい! 世哉がお義兄さんを殺した!? いったい何を根拠にそんなことが言えるの!」
 亜奈秋はヒステリックを起こしている。手に持っているのは、家のキッチンにあったナイフだ。
「ど、どういうこと? 殺した? 世哉おじさんがパパを?」
「そもそも最後に書斎に行った人が犯人だなんて、明らかに暴論だろうが! 世哉の後に誰かが入って殺したという可能性はちっとも考えないわけ!? なぜそれを無視するの! それにあいつも……此井江もおかしい! この家は確かに豪邸だけど、道に迷うほど複雑な造りじゃない! ダイニングルームなんて、ちょっと廊下を歩けばすぐ見つかる! ……有曾津もきな臭い。あいつの証言の時、卦伊佐は示し合わせたようにウソ発見器を破壊した! 嘘をついてもバレないようにしたんだよ! 普通だったらもし壊したとしてもすぐに予備を使うはずなのに、そうしなかった! ええ、ノレだっておかしい! あいつはお義兄さんのことが好きだったから結婚したんじゃない。金が好きだったから結婚したんだよ! {{傍点|文章=連れ子}}のてめえのことなんて微塵も良く思ってないわ!」
 声を荒らげて震える亜奈秋は、凶器の切っ先をラレに向ける。
「てめえも……てめえもだよ。べらべらべらべら自慢げに喋って、世哉を陥れようとしてたんだ。……父親が殺されていることにすら気づいてないのに! 探偵ごっこだなんて! ああ許せない許せない許せない! 私刑! 私刑! 私刑の時間よ!」
「や……いや! やめて!」
「殺人を知らない探偵だなんて笑えちゃうわ……。だから私が教えてあげる。{{傍点|文章=殺人を}}!」
 ――ナイフが振り下ろされ、辺りに血が飛び散った。
「凱兄……! 大変! ち、血が!」
 間一髪のところで、橘地がラレを庇って刺されたのだ。ラレは今にも泣きそうになっている。
「ぐ……ラレ様……。無事で……よかった。……ここは私が何とかしますから、ラレ様は……早く、早く{{傍点|文章=屋敷の外に}}お逃げください……!」
「で、でも、凱兄を置いていくなんて――」
 二人の会話を待たずして、亜奈秋は再び包丁を振り回し襲い掛かってくる。
「いいから早く!」
 ラレは無言で頷き、部屋を出ていった。
「このキチガイ野郎……! お前も私刑執行よ!」
 何度も包丁を突き立てられる橘地だが、それでも亜奈秋に必死にしがみつき、ラレを追うのを制止する。
「律様は……こんな私を雇ってくれた大恩人……! 彼の忘れ形見を守るのは、私にとって命より重いことなんだ……!」
 そう言って、橘地は仰向けになり、肘と膝を持ち上げた。亜奈秋の額に冷や汗が流れる。
「まさかお前……その体勢は……!」
「ぎいっ! ぎじじじっ!」
 奇声を上げ、体を弓のようにしならせて、橘地は俊敏に飛び回りはじめた――ラレを守るために。
「じっ! じっじじじぎぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃざあっざあっざざあざじじゃいじあzじじあじあじあじじゃいじあじじじゃいじあじあああ!!!」
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