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(草子)
 
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[[余談だよ|余談]]だが、個人的には論理的伏線が上手いのがとある大御所作家、感覚的伏線が上手いのがとある寡作な作家だと思っている。前者の某作品の、あまりの伏線量とスケールのデカさ。後者の某作品を読んだ時の、感嘆と多幸感、そして伏線の大胆さ。忘れがたい体験だ。叙述トリックが仕掛けられていると言ってしまった時点でネタバレになるため、大々的に言えないのが悲しい定めだ。そのくせ、あらすじや本の帯なんかには「驚異のどんでん返し!」「世界が一変!!」などと書いてある。[[死ね]]。だが、知らずに不意打たれた時の衝撃や、薄々わかっていても想像を超えられた時の感覚は素晴らしい。
[[余談だよ|余談]]だが、個人的には論理的伏線が上手いのがとある大御所作家、感覚的伏線が上手いのがとある寡作な作家だと思っている。前者の某作品の、あまりの伏線量とスケールのデカさ。後者の某作品を読んだ時の、感嘆と多幸感、そして伏線の大胆さ。忘れがたい体験だ。叙述トリックが仕掛けられていると言ってしまった時点でネタバレになるため、大々的に言えないのが悲しい定めだ。そのくせ、あらすじや本の帯なんかには「驚異のどんでん返し!」「世界が一変!!」などと書いてある。[[死ね]]。だが、知らずに不意打たれた時の衝撃や、薄々わかっていても想像を超えられた時の感覚は素晴らしい。
追記になるが、某作を読んで、叙述トリックの可能性を最近感じた。叙述トリックは、読者に何かを誤認させるものだ。だから、読者が勘違いして思い描く「虚像」と、真相たる「実像」があるわけである。そして、この両者の間の隔たりが大きければ大きいほど、驚きは増す(傾向にあると思う。一概には言えないけど)。桃太郎が仲間を連れて鬼退治に行く物語だと思っていたのに、実は亀に連れられて竜宮城で享楽に耽る話だったらびっくりするだろう。しかし、限界というものがある。亀に連れられて竜宮城で享楽に耽る話を、桃太郎が仲間を連れて鬼退治に行く物語に見せかけるのは至難の業だろう。どんなトリックを使えばいいのか見当もつかない。
しかし、しかしである。私は先日、某作を読んだ。<s>君も読め!</s> その作品は終盤、怒涛の展開を迎えた。私は何が起こっているのか、しばし理解できなかった。ありえないことが語られているのである。しかし、混乱した頭でなおも読み進めると、朧げながら別の「像」が見えてきた。ありえない像だった。そこで私は焦ってページを巻き戻した。なんとなんと、ありえたのである。まさに離れ業であった。唖然呆然、世界が見事なまでのシライ3を決めたのである。
この離れ業を成り立たしめたのは、叙述トリックの組み合わせ技であった。明言は避けるが、二つのトリックを用いて二つの誤認を生じさせ、実像とはねじれの位置にある虚像を、読者の目に映し出したのである。叙述トリックは、あまり種類があるわけではない。亀を雉に、玉手箱をきび団子に、乙姫を鬼に見せかけるトリックは存在しない(いやあるかもしれんけど)。だが、たとえ単純なトリックでも、それらを組み合わせることで、全く違う虚像を見せることができるのだと、私は知った。叙述トリックが10しかなくても、そこから二つ選ぶ組合せは45にものぼる。叙述トリック界の未来は、まだまだ明るいなあと、私は嬉しくなったものである。


ここまで、私が叙述トリックについて考えることを書いてきた。「叙述トリック」を書いてみて、やはり名作と言われるものには到底及ばないなと感じた。発想もそうながら、驚きを演出するための筆力と大胆不敵さ。プロの作家はやはり物凄いと思い知った。拙作は優秀な叙述トリックものとは言えないだろう。でも、もしあなたがこれをきっかけに、叙述トリック作品に興味を持ってくれたなら、そしてあの驚きを味わってくれたなら、これほど嬉しいことはない。でも、「叙述トリック 名作」とかでググってくれるなよ? 絶対な? 広範にミステリに手を出して、偶然ぶつかるのが一番幸せな読み方だぞ??
ここまで、私が叙述トリックについて考えることを書いてきた。「叙述トリック」を書いてみて、やはり名作と言われるものには到底及ばないなと感じた。発想もそうながら、驚きを演出するための筆力と大胆不敵さ。プロの作家はやはり物凄いと思い知った。拙作は優秀な叙述トリックものとは言えないだろう。でも、もしあなたがこれをきっかけに、叙述トリック作品に興味を持ってくれたなら、そしてあの驚きを味わってくれたなら、これほど嬉しいことはない。でも、「叙述トリック 名作」とかでググってくれるなよ? 絶対な? 広範にミステリに手を出して、偶然ぶつかるのが一番幸せな読み方だぞ??
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