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突然だが、今から日記をつけようと思う。
 あぁ、なんで自分でもこんなことになったんだって思うよ。本当に何故僕だったんだ。僕は貧乏くじを引いた。――――――――もしかしたら、この日記を何十年か後に誰かが見つけるかもしれないから、今の状況を説明しないといけないな。僕の名前はエリック・ハミルトンだ。単刀直入に言うと、僕はこの極寒の南極大陸で遭難した。
 そうだ。そうなんだ。遭難だ。なんてジョークを言ってる場合じゃない。今だって背骨が凍り付くんじゃないかと思ってる程には寒い。それに最悪なのは、、遭難した原因である猛吹雪。これのせいで通信装置が凍り付いた。食料も見事にフリーズドライだ。あぁ、ドライではない。フリーズだ。だが未だ希望はある。自分は幸い科学者だ。知識はある。人類をなめるんじゃねぇ大吹雪さんよ。だから、今から日記をつけて思考を整理しているんだ。
 こうなった原因なんだが、先ず俺たちの探検隊はアメリカから派遣されて、選りすぐりの人選を突破したクルーだ。自慢になるが、それぞれの分野での最高峰だ。そうだ。俺は科学分野での最高峰だ。最悪だな。腕っぷしの最高峰なら未だ望みはあったかもしれん。
 こうなった経緯を順を追って整理しよう。先ず、僕たちはアメリカからの南極大陸調査隊だった。なんでも、南極大陸にはとんでもない量の地下資源が埋まってるらしい。幸いなことにアメリカは南極保護条約の非加盟国だ。だから俺たちの任務は地下資源を探り当てることだ。妙なことに地下資源と言うだけで石油とは言わなかった。俺たちの知らない資源なんだろうが、そんなのはこの際関係ない。そんなこんなで南極に辿り着いた俺たちは、先ずトランサンタークティック山脈を越えようとしていた。かの有名な南極横断山脈だ。世界4番目の長さを誇るこの山脈を越えようとしていた俺たちに、南極の洗礼が降りかかってきた。猛吹雪だ。しかもこれは只の猛吹雪じゃなかった。大嵐を伴っている。あっという間に仮設テントが剥がされ、剥がされたテントシートが俺に直撃した。視界が塞がれて俺は転び、そしてそのまま斜面を転がり落ち、転がり落ち、そして目覚めると仲間は居なかった。幸い登山道具一式はあったものの、全身が凍り付くかと思った。いや実際凍り付いていたかもしれない。とにかく俺は海岸ベースキャンプを目指した。仲間が居るとすればソコしかない。だが、ソコにたどり着き、三日待っても仲間は来なかった。生存者1名というのはあまりにもおかしいだろうと思い、疑念を抱きながら海岸まで行った。そこで悪い予感が的中した。
―――――「船がない」。厳密に言えば、杭は抜けていなかった。嵐が原因なら杭ごと抜けているはずだ。これが意味するのは、嵐によって船が流されたのではなく、乗組員が船で撤退したことを現している。    私は南極で1人になった。
 と言うことで、今日は南極3日目だ。遭難したのは2日目。だがこれじゃあちょっと面倒くさいので、今日を1日目とする。遭難1日目だ。(日記をつけたのが今日だからな。)
=== 1日目 ===
まず最初にやるべき事は食料と温度の確保だ。いくら何でも寒すぎるし、滅茶苦茶腹が空いてる。今ある食料はきっかり30日分。あぁ、これじゃ全然足りない。何か食料を増やす方法を見つけないと。そして温度。携帯カイロが6つ。ガスバーナーが1缶。これだけ。足りないのは火を見るより明らか。先ずはテントの設営だ。吹き飛ばされているが、一応はビニールシートがある。海岸ベースキャンプには装備一式がある。とりあえずはここが根城だ。今あるのは、簡易調理用キットと簡易ベッド、それに緊急フレアガン、シャベルと組み立て式ボーリング機械、移動用小型2人乗りローバーだ。分かってると思うが、タブレットに日記を書けるのはとっても便利だ。手書きだったら手が震えすぎて書けてない。それに、こんなことも出来る。
[[ファイル:テント.jpg|フレームなし|中央]]
これが何かって?僕が撮った写真だ。意外とテントは広い。まぁ結果的に風がバンバン入ってくることになるけどな。元々6人分だったテントを独り占めしてるんだ。これぐらいの広さが妥当だろう。救急セットに腰掛けて今この日記を書いてる。写真にも写ってるいかにもって感じの馬鹿でかい箱だ。他にも色々ある。写真で左側のシャベル、持ち手がエグいことになってると思うんだが、手前のシャベルは二人で持つ用のシャベルなんだ。そのために持ち手が二つあったんだが、片方折れちまった。だから一本だけまっすぐじゃない持ち手になってる。ヨシ、今日はこれで終わりだ。明日はエネルギーを回収してくる。南極にあるエネルギーを幸い知っている。いや知ってはないか。
=== 2日目 ===
このテントとはしばらくお別れだ。まだ1日しか住んじゃないが。今日からは命を賭けなきゃいけない。本来の任務に戻る。そもそも南極に来た理由は何だ?地下資源を採掘するためだ。そのためにボーリング機械がある。荷物を積んだ。後はローバーとそりを連結して操縦するだけだ。それにしてもこのローバー、滅茶苦茶便利だ。馬力が高いし、密閉性があって、進化したキャタピラ構造によって最大効率で雪の中を動ける。ロータリーエンジンで四駆だから、とんでもないパワーだ(燃費が最悪すぎるから一つしかエンジン回してないが)。ヨシ、連結完了。これより地下資源採掘に向かう。だが、ここで日記が終わっててもおかしくない。南極横断山脈を越えなきゃならん。前はそこで挫折した。あの山脈は恐怖の塊だ。白いコートに覆われた真っ黒な肌を持った怪物だ。さぁ、怪物ハントに出かけるとしよう。
=== 3日目 ===
嬉しい知らせだ。2日目を生き残った。現在は標高3500m付近にいる。ローバーの燃料は残り60%。斜面は滑り降りるとして、十分な燃料だ。嘘。斜面を滑り降りれるわけがない。普通にいったら地獄行きだ。今分かってる情報はこれだけ。何かあったら書こうと思う。はい、何かありました。これはとんでもないことになった。今俺が目指してるのは南極横断山脈の東側、南緯80°線だ。で、今いるのが山脈の真上、3200m付近。ぶっちゃけこれは重要じゃない。だが、ローバーが急に動かなくなったから外に出て見たんだ。結果は前輪に雪が積もってたからで、雪を取り除けばすぐに走るようになった。その時に気づいたんだ。俺が今いる地点、ここだけ雪が解けてる。明らかに温度が熱い。ここは山脈のど真ん中。これは、活火山の噴火口だ。
=== 4日目 ===
昨日は活火山を見つけたときから一文字も書けなかった。いろいろなことが起こりすぎている。まず、500mぐらい先の火山が噴火したのが見えた。真っ先に休火山であるヘアビル山に避難した。ここは安全だろう。もう体が限界だ。昨日は寝なかった。食料も食べてない。軽食をとって少し寝ることにする。
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