「利用者:キュアラプラプ/サンドボックス/丙」の版間の差分

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 鳴りやまない拍手の中、思想者はクリームパンダと位置を交換した。クリームパンダは目を細めて、5段上にいる思想者の男を見上げている。とどめだ。彼は助手に合図を送り、助手は力を籠めてレバーを押し下げ――その瞬間、思想者はしゃがんで、自身が乗っているステップの前面に立てかけられた何かを拾い、真上に掲げた。トランプのカード。それも、Kだ。
 鳴りやまない拍手の中、思想者はクリームパンダと位置を交換した。クリームパンダは目を細めて、5段上にいる思想者の男を見上げている。とどめだ。彼は助手に合図を送り、助手は力を籠めてレバーを押し下げ――その瞬間、思想者はしゃがんで、自身が乗っているステップの前面に立てかけられた何かを拾い、真上に掲げた。トランプのカード。それも、Kだ。


 摩擦と回転の音がして、エスカレーターが動き始める。思想者が乗っているステップがエスカレーターの終端に飲み込まれるその瞬間、彼は「革命」を宣言し、Kのカードを5段下にいるクリームパンダに投げつけた。{{傍点|文章=勝利条件と敗北条件が入れ替わり}}、思想者は勝利した。
 摩擦と回転の音がして、エスカレーターが動き始める。思想者が乗っているステップがエスカレーターの終端に飲み込まれるその瞬間、彼は「革命」を宣言し、Kのカードを5段下にいるクリームパンダに投げつけた。{{傍点|文章=勝利条件と敗北条件が入れ替わり}}、思想者はエスカレーターの終端、銀色の板の上に流れ着いて、勝利した。




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 思想者はそもそも、手札が渡された時点で、このゲームが仕組まれていることをほとんど確信していたし、当然ながら、エスカレーターはどこかのタイミングで動くだろうとも思っていた。この自分の動きを操作するようなカードの組み合わせに加え、その後パンダが{{傍点|文章=都合よく}}一段上に来て、{{傍点|文章=都合よく}}二枚もKを持っている自らにあの「取引」を仕掛けてきたことで、彼は「仕組まれたゲーム」の考えが十中八九正しいだろうとして、さらにこう考えた――ここに来た他の思想者も、自分と同じ手札を渡され、自分がこれから辿る展開と同じ展開を辿っただろう。とすると、この血の付いた3・4段目では、何らかの戦闘行為が発生する可能性が高い。だから、その{{傍点|文章=戦闘に乗じてクリームパンダの手札を失わせ}}、さらに{{傍点|文章=Kを赤の9と交換してここに立てかけておく}}のには、絶好の機会だ!
 思想者はそもそも、手札が渡された時点で、このゲームが仕組まれていることをほとんど確信していたし、当然ながら、エスカレーターはどこかのタイミングで動くだろうとも思っていた。この自分の動きを操作するようなカードの組み合わせに加え、その後パンダが{{傍点|文章=都合よく}}一段上に来て、{{傍点|文章=都合よく}}二枚もKを持っている自らにあの「取引」を仕掛けてきたことで、彼は「仕組まれたゲーム」の考えが十中八九正しいだろうとして、さらにこう考えた――ここに来た他の思想者も、自分と同じ手札を渡され、自分がこれから辿る展開と同じ展開を辿っただろう。とすると、この血の付いた3・4段目では、何らかの戦闘行為が発生する可能性が高い。だから、その{{傍点|文章=戦闘に乗じてクリームパンダの手札を失わせ}}、さらに{{傍点|文章=Kを赤の9と交換してここに立てかけておく}}のには、絶好の機会だ!


 彼は、恣意的なエスカレーターの作動・停止によってあのような状態に追い込まれるゲームのパターン、そしてその解決策である「傍に『革命』のカードを隠しておくこと」を最初から思いついていた。クリームパンダが説明した「駄段々」のルールには、「捨てられたカードは拾ってもいい」とこそあったが、「{{傍点|文章=カードを勝手に捨ててはならない}}」などというものは存在しなかった。だから、こうしてKをステップの隅に捨てておき、その時が来たタイミングで再び取得することは、完全に{{傍点|文章=適法}}の行いだったのだ。
 彼は、恣意的なエスカレーターの作動・停止によってあのような状態に追い込まれるゲームのパターン、そしてその解決策である「傍に『革命』のカードを隠しておくこと」を最初から思いついていた。クリームパンダが説明した「駄段々」のルールには、「捨てられたカードは拾ってもいい」とこそあったが、「{{傍点|文章=カードを勝手に捨ててはならない}}」などというものは存在しなかった。だから、こうしてKをステップの隅に捨てておき、その時が来たタイミングで再び取得することは、完全に{{傍点|文章=適法}}の行いだったのだ。赤の9は実際手に入れなくても大した支障はなかったが、カードが一枚失くなっているという状況で下手に粗をつかれるよりは、むしろ最初から手札にあったのは二枚目のKではなく赤の9だというふうに見せておくことで、クリームパンダに「自分が不正に操作したはずの相手の手札が不正に改竄されている」という馬鹿馬鹿しい主張以外の何も言えないようにさせるという意味があった。


 実際、このゲームを仕組んでいたのは、最終的には思想者の方だったと言っていい。彼は、この「解決策」を用いるために、「革命」を隠しておく場所から逆に考えて、クリームパンダをこの3段目のステップに立ち往生させることにした。「革命」のカードは、「駄段々」を成功させて自身と位置を交換してくるプレイヤーが、ステップを移動せずとも手が届く距離になければならなかったからだ。無論、そうでなければ、位置交換後の自身が「革命」を取得できないだろう。――そして、相手を立ち往生させるための最も手っ取り早い方法は、すべての手札を失わせることだった。
 実際、このゲームを仕組んでいたのは、最終的には思想者の方だったと言っていい。彼は、この「解決策」を用いるために、「革命」を隠しておく場所から逆に考えて、クリームパンダをこの3段目のステップに立ち往生させることにした。「革命」のカードは、「駄段々」を成功させて自身と位置を交換してくるプレイヤーが、ステップを移動せずとも手が届く距離になければならなかったからだ。無論、そうでなければ、位置交換後の自身が「革命」を取得できないだろう。――そして、相手を立ち往生させるための最も手っ取り早い方法は、すべての手札を失わせることだった。


 ――思想者がこのゲームの流れを{{傍点|文章=採用}}したのは、実際クリームパンダに吠え面をかかせてやろうという気持ちも無くはなかったが、それよりもむしろ{{傍点|文章=より安全な脱出経路}}のためだった。
 ――思想者がこのゲームの流れを{{傍点|文章=採用}}したのは、実際、クリームパンダに吠え面をかかせてやろうという気持ちも無くはなかったが、それよりもむしろ{{傍点|文章=より安全な脱出経路}}のためだった。


「じゃあ、ゲームは終わりだな」
「お前……お前え……ぶち殺してやる!」
 
 クリームパンダは激昂し、思想者の元に駆け上がってくる。このゲームは思想者の勝利という形で幕を閉じたから、勝手に階段を移動するのも最早ルール違反ではなくなった。屈辱的にも、クリームパンダは思想者を殺すための行動を思想者のおかげでようやく開始することができた。怒りに我を忘れたクリームパンダを前にして、思想者は冷静に、手札の中から適当に見繕ったカードを、エスカレーターのステップの隙間に挿し込んだ。その瞬間、警報音がけたたましく鳴り響き、エスカレーターの安全装置が作動した。ステップの移動は急停止し、これによってバランスを崩したクリームパンダは滑稽にすっ転んでしまった。
 
 観客席でゲームを監視していた二人の警官は、ここでようやく状況を理解した――思想者がサーカスから脱走した! すでに彼は二階のフロアの角を曲がり、姿を消してしまっていた。クリームパンダは思想者の処刑のために「駄段々」を利用したつもりだったが、蓋を開けてみれば、「駄段々」はただ思想者の逃走のために利用されていたのだ。思想者がこのような迂遠な道筋に基づいてゲームを展開させたのは、すべて{{傍点|文章=ゲーム終了時にクリームパンダが無力化され}}、{{傍点|文章=自分はエスカレーターを上りきっている}}という状況をつくりあげるためだった。警官はすぐさま思想者を追おうとしたが、観客席は混乱状態で、まともに進むことができない。それは、「クリームパンダが敗北した」という現前の事実に加え、どこから漏れ出したのか、ある驚くべき事実が広まったことによるパニックだった――あの思想者は、我らが元首を裏切って鉛玉の制裁を受けたものの、その悪臭を放つ気性によってか死神にさえ拒まれ、未だに危険思想活動を繰り返している「第一級国賊」の一人、「<ruby>青臭い黴<rt>ブルーチーズ</rt></ruby>」その人だ!
 
「なあ、待ってくれ、憲兵の兄貴たち。俺様の人気はこんなもんじゃあ衰えねえ。まだ得意の{{傍点|文章=集客能力}}は見込めるぜ。だから……」
 
 言い終わらないうちに、羽虫が耳の傍を通り過ぎるような音――サイレンサー付きライフルの射撃音――を感じて、クリームパンダの視界がひっくり返った。こうして、ショッピングモールの中央、停止したエスカレーターに、また新しい鮮血の{{傍点|文章=しみ}}が与えられたのだった。
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