「利用者:キュアラプラプ/サンドボックス/乙」の版間の差分

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=しわくちゃ=
=しわくちゃ=
 違う。これはアクセルだ。
 前の人の焼香が終わり、一歩進み出た。目線の先には、ずらりと一列に並ぶ何十枚もの遺影がある。俺が弔いにきた友人の遺影は、右から五番目にあったから、そこを向いて一礼して、香を炉の中に落とした。こういう「集団葬」は、ほんの数年前から普及しはじめた。高齢化に伴って葬儀件数が増加する一方で、社会関係の希薄化というやつなのか、参列者は年々減少し、葬儀の規模は大きく縮小していたらしい。葬儀社は、儲からない割には時間と場所を食う大量の仕事によって、パンク寸前の状況に陥っていた。これを解決するために始めたのが、この格安プランの「集団葬」というわけだ。これなら施設を改修する必要もなく、効率的に死者を弔える。さながら今の社会の縮図だと、俺は思った。
 
 慌てて右足でブレーキを力強く踏みつける。車は停止線を少し超えたところでようやく止まってくれた。衝撃で体が少し跳ね上がる。
 
 ハンドルを握るしわの増えた手が、少し震えた。もしあのままアクセルを踏み続けていたら、もし目の前の横断歩道をちょうど人が渡っていたら、どうなっていただろう。スピーカーから流れてくる鳥の鳴き声は、そんな俺の気持ちも意に介さず、のどかな雰囲気を演出していた。
 
 気を紛らわせるために、カーナビ付属のテレビを点けた。近頃のバラエティ番組は、どのチャンネルを見ても健康食品と終活の話をしている。ニュース番組に切り替えると、いよいよ日本の高齢化率が40%に達したという話でスタジオは持ちきりだった。
目も当てられないメモ、目モ:
 
 
 
◇通夜・葬式導入→煙!
 
・帰りの車内:多くの友人が認知症の中で死んでいく。
 
・衰退テレビのニュースには終活と高齢化の問題が流れる
 
 
 
◇おばあさん受診→治験
 
・祥子を車にのせて走る(危ない運転だが、免許返納もできないわ
 
・治験をとりあえず承認する(みじめにも、聞こえるふりをして
 
 
 
◇"若返り"の作用を見る→一人で病院へ
 
・感情の起伏が激しい:折り鶴を奪われて泣く
 
・娘夫婦は二人の子供を扱うようにする
 
・気持ち悪い。娘夫婦を追い出して車で病院に向かう
 
 
 
◇駐車場からままならず走る。
 
・独白。祥子の尊厳はどこにある!?
 
・車を降りると服装の乱れ、祥子が一人で危ない。帰宅願望。
 
・体は重い。みんなが俺を見ている。
 
・帰ると、祥子は折り紙をアイロンがけしている。
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