利用者:キュアラプラプ/サンドボックス/戊
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弾ける音。体をひとつに維持しようとする力を逃れ、なるがまま空中に脱出した小さなかけらが、精一杯手足を引っ込めて、小さいボールの形になっている。彼らはすぐに元の体に飲み込まれる。世界を隔てる無数の境界のうち二つが、重なって、同じになる。その弾ける音が、誰の耳にも届かないようなささやかな音が、ひょっとすると人一人の人生よりもっと多彩な命をたたえて、あらゆる速さで、あらゆる角度で、あらゆる場所から水平線を埋め尽くしている。無数の音が折り重なり、なめらかな、まるでこぼれる砂のような、涼しい深みのグラデーションを伝える。
唸る音も聞こえる。途方もなく大きい体に縛られて、つかのまの自由すら手にできない部分が、それでもバラバラになろうとしてもがく。しかし、ねじられ、折られ、つぶされてさえ、その体はすべてを抱擁し、受け入れてしまう。聞こえてくるのは、その抵抗がもたらした、ただ無限に深くぶあつい永遠の音だけだ。今度はその低さという意味で、誰の耳にも届かないようなどす黒い音が、まるで幽霊のようにこの宇宙に沈殿していると思うと、ぞっとする。
これは海の音だ。ようやく気付いた。急速に意識が覚醒し、視界が開く。宇宙服が体にのしかかる。
宇宙飛行士は、ある星系の調査に来ていた。グローバル化が完成し、あらゆる社会制度、文化、価値観が一元的に集約・規定されてから、人類は宇宙への進出を激化させていった。この宇宙飛行士も、その末端の一人だったのだ。不運なことに、違法なスペースデブリとの衝突によって宇宙船の機体が損傷し、宇宙飛行士はこの未知の惑星への不時着を余儀なくされていた。気を失う前、最後に見たのは、星一面に広がる青黒い海だった。