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「……あーあー、もしもし? じゃあ、第一発見者のワタクシから行きましょう。そもそもは週刊誌記者として、良い感じのゴシップとか持ってないかなあと思って律家豪氏に会いに来たんですよ。あ、もちろんアポは取ってますよ? んでまあ、大した情報も得られなかったんでそのまま帰ろうとしたら、どうにも玄関にたどり着けない。何時間も右往左往して、なんと結局豪さんに取材した書斎に戻ってきちゃったんですね。このままじゃ埒が明かないし、家主である豪さんに道を聞いて帰ろう、と思って部屋に入ったら……胸に包丁が刺さって死んでました。アポ取りの時にノレさんに電話した履歴が残ってたので、そこからノレさんに連絡して……今に至る、って感じですね。皆さんダイニングルームにいるんですよね? 今屋敷の道を総当たりで攻略してるので、絶対動かないでくださいね!?」
「……あーあー、もしもし? じゃあ、第一発見者のワタクシから行きましょう。そもそもは週刊誌記者として、良い感じのゴシップとか持ってないかなあと思って律家豪氏に会いに来たんですよ。あ、もちろんアポは取ってますよ? んでまあ、大した情報も得られなかったんでそのまま帰ろうとしたら、どうにも玄関にたどり着けない。何時間も右往左往して、なんと結局豪さんに取材した書斎に戻ってきちゃったんですね。このままじゃ埒が明かないし、家主である豪さんに道を聞いて帰ろう、と思って部屋に入ったら……胸に包丁が刺さって死んでました。アポ取りの時にノレさんに電話した履歴が残ってたので、そこからノレさんに連絡して……今に至る、って感じですね。皆さんダイニングルームにいるんですよね? 今屋敷の道を総当たりで攻略してるので、絶対動かないでくださいね!?」


「……その電話をもらった私が、みんなにこれを伝えたの。私を含めた残りの五人はダイニングルームで各々くつろいでた。娘のラレは自室で寝てるわ。」
「……その電話をもらった私が、みんなにこれを伝えたの。私を含めた残りの五人はダイニングルームで各々くつろいでた。娘のラレは自室で寝ていたわ。豪の書斎に行って、此井江さんの言ってたことがが本当だったと分かってから、またこの部屋に戻って来たってところね。」


「いーや違うね。俺はダイニングルームで瞑想をしてたんだ。寛いでるだなんて人聞きの悪い。」
「いーや違うね。俺はダイニングルームで瞑想をしてたんだ。寛いでるだなんて人聞きの悪い。」
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「ほう……詳しく聞かせてもらいたい。」
「ほう……詳しく聞かせてもらいたい。」


「俺が代わりに説明しよう。何分血を分けた兄弟だからな、俺はこの家によく来るんだが……その度にこいつは兄貴に怪しいビジネスを持ちかけてた。ヘリウム水だのオーガニック水だの……だが、兄貴は人一倍優しい奴だったからな。こいつが家に来るのを禁止するようなことはしなかったんだ。その結果が今日だ。大方こいつは遂に逆上し、兄貴を殺したんだろうな。うう……」
「俺が代わりに説明しよう。何分血を分けた兄弟だからな、俺はこの家によく来るんだが……その度にこいつは兄貴に怪しいビジネスを持ちかけてた。ヘリウム水だのオーガニック水だの……だが、兄貴は人一倍優しい奴だったからな。こいつが家に来るのを禁止するようなことはしなかったんだ。その結果が今日だ。大方こいつは遂に逆上し、兄貴を殺したんだろうな。うう……。」


「私刑! 私刑! 準備は良いかてめえら!」
「私刑! 私刑! 準備は良いかてめえら!」
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「おいおい待て待て待ちやがれ絶世の馬鹿ども、このエジソンに向かってなんて口の利き方だ。動機の話をするんならお前らにもデケえのがあるだろうが!」
「おいおい待て待て待ちやがれ絶世の馬鹿ども、このエジソンに向かってなんて口の利き方だ。動機の話をするんならお前らにもデケえのがあるだろうが!」


「続けてくれ」
「続けてくれ。」


「ああ、ああ、そうだよ。ニュートンとして言わなくちゃいけねえ。威山横世哉にはな、多額の遺産が相続されるんだ!真実はいつも小説より平凡だ。オッカムの剃刀は面白みに欠ける。だから物書きは刺激的なトリックや動機を考えるんだ。しかしここは現実!これは現実の事件!金持ちの殺害動機に遺産ほどシンプルなものはねえ!」
「ああ、ああ、そうだよ。ニュートンとして言わなくちゃいけねえ。威山横世哉にはな、多額の遺産が相続されるんだ!真実はいつも小説より平凡だ。オッカムの剃刀は面白みに欠ける。だから物書きは刺激的なトリックや動機を考えるんだ。しかしここは現実!これは現実の事件!金持ちの殺害動機に遺産ほどシンプルなものはねえ!」
「うあうあああうあふさふあっしゅああさうさふさうああああ!!!!」
怒号と奇声が飛び交い、ダイニングルームでの口論は白熱する。しびれを切らした卦伊佐は、質問を変えることにした。
「じゃあ、事件発生までの被害者の行動を知ってる人はいるか?」
「豪はずっと部屋にいたわ。……あ、そうだ、もしかしたら……。」
「何だ?」
「いや、夫はとても几帳面な人で、自分の書斎に来る人の順番まで決めちゃうほどだったの。だからもしかしたら、最後に書斎に行った人が分かれば、犯人が分かるんじゃないかな……って。確か今日は、ラレと卦伊佐さん以外の全員が書斎に行ってたわよね。」
全員が頷く。うち一人は、ブリッジしながらヘドバンしていると形容する方が適切であるが。
「なるほど……まあ取り敢えず、その書斎に案内してくれないか。」
「……もしもし? ついでにワタクシも探してくれませんかね? この調子だと餓死しちゃいますよ……。」
卦伊佐とノレが書斎に赴き、ダイニングルームには言い争いをする三人と発狂するキチガイだけが残った。
'''第二章 几帳面すぎる男'''
「これは驚いた。書斎というからには、現代レトロ趣味で集めた紙の本とか、インクのペン付きのデスクとかが並んでるのを想像していたが……。」
白を基調とした書斎には、流し台や食器棚、コーヒーメーカーが据え付けられており、この部屋に初めて入った者にはキッチンだとしか思えない。
部屋の中心にあるテーブルには向かい合わせに椅子が二脚。そして、奥の方の椅子から転げ落ちるようにして倒れていたのが、律家豪の遺体だった。激しく抵抗した痕跡が残っており、左胸にはナイフが刺さっている。
「っ……。」
「あー、無理にここに居続ける必要はないからな。」
「……いいえ、大丈夫です。」
「そうか。じゃあ、遺体の状態を確認させていただこう。」
そう言って、卦伊佐は手早く検分を終わらせた。
「死因は外傷による心破裂。被害者はナイフを持った犯人を前に抵抗したものの、心臓を一突き、即死だ。死後硬直が始まっているが、まだピークには達していない、死亡したのは十九日の夕方から夜ほどだろうな。」
「……ところでさっきの話だが、この部屋に来る順番というのは?」
「ああ、そうね、ネモー!」
ノレがそう呼ぶと、クソデカ屋敷に似つかわしいクソデカ大型犬、ネモが書斎の隅の方から現れた。背の丈は、ガタイの良い卦伊佐をも優に超えている。
「書斎に行く順番が回ってくると、夫が派遣したネモがやって来て、それを教えてくれるの。ネモったら頭が良いから、写真を見せられるだけでその人を識別できちゃうのよ。」
「なるほど、つまり部屋に来た順番を知っているのは、被害者とネモだけ……。」
「あー、でも、数時間前に案内した人の順番は流石にネモでも覚えてないと思うわ。」
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