「利用者:Notorious/サンドボックス/消滅の悪魔」の版間の差分

<br>　残り１分00秒。俺は、意を決して、階段を上る一段目に足をかけた。

<br>　足が、止まる。さっき決したはずの心が、揺らいでいる。何か見落としている。何か、何か……。

<br>　掴みかけた。今、確かに、違和感の正体を掴みかけた。体中がじんわりと温かくなる。もう少し！　もう少しで判る！　何だ？　松葉杖がどうしたんだ？　今掴みかけたものは、何だ？

<br>　俺は頭を抱えて蹲った。何か見落としていると本能が、無意識が、深層心理が告げている。早く気づけと叫んでいる。何だ？　何を、見落とした？　掴むべきものは、何だ？

<br>　松葉杖、松葉杖、松葉杖……。階段？

<br>　残り36秒、考えるより先に、俺は走り出していた。掴んだものを離さないうちに、頭の中で反芻する。