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じぶんが食べる分を木のみきのほら穴につめこんだあと、小鳥は日がくれるまであたりをさんぽすることにしました。この森をぬけたすぐそばには、にんげんたちのくらす街があります。そこにはにぎやかな歌やようきな音楽がいつもなりひびいていて、おいしい食べものもそこら中にあふれているのです。小鳥はこの街を、とーっても気にいっていました。 | じぶんが食べる分を木のみきのほら穴につめこんだあと、小鳥は日がくれるまであたりをさんぽすることにしました。この森をぬけたすぐそばには、にんげんたちのくらす街があります。そこにはにぎやかな歌やようきな音楽がいつもなりひびいていて、おいしい食べものもそこら中にあふれているのです。小鳥はこの街を、とーっても気にいっていました。 | ||
はなうたまじりに街に入ろうとした小鳥は、ひんやりとした風といっしょにながれてきたものに心をうばわれました。甘くてきれいで、しっとりしたいいにおいです! そのおいしそうなかおりにつられ、しばらくそのままさまよって、小鳥はついににおいのもとまでたどりつきました。そこは、街のはずれにあるケーキやさんでした。 | |||
かちゃかちゃぐつぐつ音がして、えんとつからはもくもくとけむりが立ちのぼっています。小鳥がおみせのなかをのぞいてみると、そこにはもちろんたくさんのケーキ! どれもおいしそうで、みているだけでおなかがへってきてしまいます。 | かちゃかちゃぐつぐつ音がして、えんとつからはもくもくとけむりが立ちのぼっています。小鳥がおみせのなかをのぞいてみると、そこにはもちろんたくさんのケーキ! どれもおいしそうで、みているだけでおなかがへってきてしまいます。 | ||
103行目: | 103行目: | ||
カラスのこうげきはつづきます。小鳥はかんがえるひまもないまま、こうさけびました。 | カラスのこうげきはつづきます。小鳥はかんがえるひまもないまま、こうさけびました。 | ||
「わ、わかった! 日がしずむまでにここにもどってくるから、それまでまってて!」 | |||
「……! うん! あ、ありがとう!」 | 「……! うん! あ、ありがとう!」 | ||
157行目: | 157行目: | ||
七時をつげる時計台のおとが、小鳥をわれにかえらせました。にしの方をみると、あおぐろい雲の下、お日さまはほとんどしずみかかっています。小鳥は、かんがえるよりさきに、じめんに向かってすごいスピードでおちはじめました。カラスもやっぱりあとをおって、まっさかさまにおちてきます。 | 七時をつげる時計台のおとが、小鳥をわれにかえらせました。にしの方をみると、あおぐろい雲の下、お日さまはほとんどしずみかかっています。小鳥は、かんがえるよりさきに、じめんに向かってすごいスピードでおちはじめました。カラスもやっぱりあとをおって、まっさかさまにおちてきます。 | ||
「どうしたの小鳥くん、そのさきにはじめんしかないよ! このままだとぶつかっちゃう!」 | |||
カラスのいうとおり、小鳥はじめんに向かってまっしぐら。あぶない、ぶつかる――! というところでおっとっと、くるりとからだをひるがえします。しかしのっぽのカラスは小回りがきかず、そのままじまんの大きな羽をじめんに打ちつけてしまいました。これでカラスも、しばらくのあいだはおいかけてこられないでしょう。 | |||
「ぐっ……小鳥くん……ぼくはあきらめないからね! いつかきみのことを食べてあげるから!」 | 「ぐっ……小鳥くん……ぼくはあきらめないからね! いつかきみのことを食べてあげるから!」 | ||
カラスのことばには耳もかさず、小鳥はあのケーキやさんに向かってぜんそくりょくでかけていきます。お日さまはついに、とおくに見える山の向こうにしずんでしまいました。小鳥の中でいやなそうぞうがふくらんできます。ちかづいてきたケーキやさんのえんとつからは、もうけむりはのぼっていません。……いちごさん、おねがい、ぶじでいて! | |||
小鳥はなりふりかまわず、いまさっきみちでひろった小石をまどガラスになげつけました。おおきな音を立てて、とうめいなガラスへんがくずれおちます。おみせのだれかのひめいもよそに、小鳥はわれたまどのすきまから中におし入って、目線はたなのはじっこの、ショートケーキのてっぺんの―― | |||
「いちごさん!」 | |||
「あ、小鳥さんっ!」 | |||
「さあ、つかまって!」 | |||
小鳥はつめのあいだに大切にいちごをかかえて、ケーキやさんをあとにしました。空はすっかりほのぐらくなっていて、お月さまとお星さまが白くかがやいています。つめたくふく風が小鳥といちごをくすぐって、ひゅうひゅうと音を立てました。 |
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