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「う、うわあ!?」
「う、うわあ!?」


 とつぜんこえをかけられて小鳥はびっくり! まどガラスごしにはなしかけてきたのは、たなのはじっこにあるショートケーキ、その上にいるいちごでした。なめらかな形がさえた真っ赤にいろどられ、まわりのホイップクリームはまるでドレスのよう。小鳥はなんだかどきどきしながらへんじをしました。
 とつぜんこえをかけられて小鳥はびっくり! まどガラスごしにはなしかけてきたのは、たなのはじっこにあるショートケーキ、その上にあるいちごでした。なめらかな形がさえた真っ赤にいろどられ、まわりのホイップクリームはまるでドレスのよう。小鳥はなんだかどきどきしながらへんじをしました。


「こ、こんにちは、いちごさん!」
「こ、こんにちは、いちごさん!」
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「え!? あ、その、えーっと……。」
「え!? あ、その、えーっと……。」


 どうしよう! どうしよう! ほんとうは雲の上にいくなんてできないのに! 小鳥はうそをついたさっきのじぶんにもんくをいいました。
 どうしよう! どうしよう! ほんとうは雲の上にいくなんてできないのに! 小鳥はうそをついたさっきのじぶんにもんくを言いました。


「……ご、ごめんね! 会ったばっかりなのにこんなこと聞いちゃって! め、めいわくだったよね! やっぱりこのことはわすれて!」
「……ご、ごめんね! 会ったばっかりなのにこんなこと聞いちゃって! め、めいわくだったよね! やっぱりこのことはわすれて!」
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「ううん、今はじめてあったとこ……うわあ!」
「ううん、今はじめてあったとこ……うわあ!」


 気づいたら、いつのまにかカラスは小鳥のすぐとなりにきていて、えがおでこういいました。
 気づいたら、いつのまにかカラスは小鳥のすぐとなりにきていて、えがおでこう言いました。


「ねえねえ小鳥くん、かわいいかわいい小鳥くん、きみを食べてもいいかい?」
「ねえねえ小鳥くん、かわいいかわいい小鳥くん、きみを食べてもいいかい?」
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「どうしたの小鳥くん、そのさきにはじめんしかないよ! このままだとぶつかっちゃう!」
「どうしたの小鳥くん、そのさきにはじめんしかないよ! このままだとぶつかっちゃう!」


 カラスのいうとおり、小鳥はじめんに向かってまっしぐら。あぶない、ぶつかる――! というところでおっとっと、くるりとからだをひるがえします。しかしのっぽのカラスは小回りがきかず、そのままじまんの大きな羽をじめんに打ちつけてしまいました。これでカラスも、しばらくのあいだはおいかけてこられないでしょう。
 カラスの言うとおり、小鳥はじめんに向かってまっしぐら。あぶない、ぶつかる――! というところでおっとっと、くるりとからだをひるがえします。しかしのっぽのカラスは小回りがきかず、そのままじまんの大きな羽をじめんに打ちつけてしまいました。これでカラスも、しばらくのあいだはおいかけてこられないでしょう。


「ぐっ……小鳥くん……ぼくはあきらめないからね! いつかきみのことを食べてあげるから!」
「ぐっ……小鳥くん……ぼくはあきらめないからね! いつかきみのことを食べてあげるから!」
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 ――気づけば空はすっかりまっくらになっていて、ともだちもみんなじぶんのおうちにかえっていったので、小鳥ももうねむることにしました。いちごといっしょに、木のみきのほら穴の中にねころがります。
 ――気づけば空はすっかりまっくらになっていて、ともだちもみんなじぶんのおうちにかえっていったので、小鳥ももうねむることにしました。いちごといっしょに、木のみきのほら穴の中にねころがります。


「小鳥さんは、もうねむっちゃうの?」
「小鳥さんのおうちのなか、あったかいね。」
 
「えへへ、いいところでしょ?」
 
「ええ、とっても。……小鳥さんは、もうねむっちゃうの?」


「もう夜もおそいからね。……いちごさんはねむらないの?」
「もう夜もおそいからね。……いちごさんはねむらないの?」
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「……。」
「……。」
 ぽつぽつと、雨の音が聞こえてきました。


「小鳥さん、ほんとうにありがとう。会ったばかりのわたしに、こんなに良くしてくれて。」
「小鳥さん、ほんとうにありがとう。会ったばかりのわたしに、こんなに良くしてくれて。」
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 小鳥は、にげるようにしてねむりにおちました。
 小鳥は、にげるようにしてねむりにおちました。
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 お日さまもまだのぼらない朝はやく、ふかいゆめからさめた小鳥は、ゆううつに息つく間もなく、ひどいにおいに顔をしかめました。ひんやりとした風といっしょにどこからかながれてきた、甘くてすっぱくて、鼻をつくひどいにおいです。あまりのつよいにおいに、小鳥はおもわずせきこんでしまいました。
 お日さまもまだのぼらない朝はやく、ふかいゆめからさめた小鳥は、ゆううつに息つく間もなく、ひどいにおいに顔をしかめました。雨上がりのじめっとした風といっしょにどこからかながれてきた、甘くてすっぱくて、鼻をつくひどいにおいです。あまりのつよいにおいに、小鳥はおもわずせきこんでしまいました。


 ……でも、あたりをさがすまでもなく、小鳥はそのにおいのもとに気づいてしまいました。
 ……でも、あたりをさがすまでもなく、小鳥はそのにおいのもとに気づいてしまいました。
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「……うん、あとすこしですてられてしまうところを、ぎりぎりで助けだせたんだ。」
「……うん、あとすこしですてられてしまうところを、ぎりぎりで助けだせたんだ。」


「ほうほう、そうか……じゃあきっと『賞味期限切れ』……いや、これは『消費期限切れ』か。そのせいでこうなっているんだろう。」
「ほうほう、そうか……じゃあきっと『賞味期限切れ』……いや、これは『消費期限切れ』か。それにくわえて昨日は雨で湿気もあった……。」


「しょーみきげん? しょーひきげん? ど、どういうこと?」
「しょーみきげん? しょーひきげん? ど、どういうこと?」
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「……! た、食べるとか腐るとか言って、だからいちごさんは食べものじゃなくてぼくのともだちで……!」
「……! た、食べるとか腐るとか言って、だからいちごさんは食べものじゃなくてぼくのともだちで……!」


「たしかに、小鳥くんにとっては友達かもしれない。けど、ケーキやさんに来る人間にとっては、いちごさんはただの『イチゴ』なんだ。腐ることだってある。ただの食べものなんだよ。」
「たしかに、小鳥くんにとってはともだちかもしれない。けど、きびしいことを言うと……けっきょくいちごさんはただのくだものなんだ。もちろん腐ることだってある。……どこまでいっても、食べものにすぎないんだよ。」


「そ、そんな、そんなこと……!」
「そ、そんな、そんなこと……!」
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「ごめんね。ざんねんだけど、いちごさんは治らない。……そろそろ全体がカビにやられてしまうだろう。そうしたら、もう……」
「ごめんね。ざんねんだけど、いちごさんは治らない。……そろそろ全体がカビにやられてしまうだろう。そうしたら、もう……」


 小鳥はじぶんのなかでどくどくという音がおおきくなっていくのをかんじました。いちごさんは治らない? じゃあ、あの約束は――
 小鳥はじぶんのなかでどくどくという音がおおきくなっていくのをかんじました。いちごさんは治らない? じゃあ、あのやくそくは――


「小鳥さん、もう、いいの。……もういいから。」
「小鳥さん、わたし、もう、いいの。……もう、いいから。」
 
 いちごが泣きそうな声で言いました。ぶよぶよとしたかんしょくは、さっきよりもっとひどくなっています。小鳥にはもう、どうすればいいのかわかりませんでした。
 
「……いったん、おうちにかえろうか。」
 
 小鳥は、また吐き気をこらえました。
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