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(うわあああ!!!)
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「雲の……うえ……。」
「雲の……うえ……。」


 小鳥はたしかに空をじゆうにとべます。けれど、雲の上にまで行ったことはありませんでした。そんなにたかいところまでとぼうとしたら、つかれてへとへとになってしまうし、なにより小鳥はこわがりだったからです。じめんがみえなくなるほど上にいってしまったら、もうかえってこられなくなるんじゃないか――どうしてもそうおもってしまうのです。
 小鳥はたしかに空をじゆうにとべます。けれど、雲の上にまで行ったことはありませんでした。そんなにたかいところまでとぼうとしたら、つかれてへとへとになってしまうし、なにより小鳥はこわがりだったからです。じめんがみえなくなるほど空たかくにいってしまったら、もうかえってこられなくなるんじゃないか――どうしてもそうおもってしまうのです。


 でも、そんなこといったらかっこわるい気がして、小鳥はうそをつきました。
 でも、そんなこといったらかっこわるい気がして、小鳥はうそをつきました。
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 小鳥は、にげるようにしてねむりにおちました。
 小鳥は、にげるようにしてねむりにおちました。
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 お日さまもまだのぼらない朝はやく、ふかいゆめからさめた小鳥は、ゆううつに息つく間もなく、ひどいにおいに顔をしかめました。雨上がりのじめっとした風といっしょにどこからかながれてきた、甘くてすっぱくて、鼻をつくひどいにおいです。あまりのつよいにおいに、小鳥はおもわずせきこんでしまいました。
 お日さまもまだのぼらない朝はやく、甘あいゆめからさめた小鳥は、ゆううつに息つく間もなく、ひどいにおいに顔をしかめました。雨上がりのじめっとした風といっしょにどこからかながれてきた、甘くてすっぱくて、鼻をつくひどいにおいです。あまりのつよいにおいに、小鳥はおもわずせきこんでしまいました。


 ……でも、あたりをさがすまでもなく、小鳥はそのにおいのもとに気づいてしまいました。
 ……でも、あたりをさがすまでもなく、小鳥はそのにおいのもとに気づいてしまいました。
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「ごめんね。ざんねんだけど、いちごさんは治らない。……そろそろ全体がカビにやられてしまうだろう。そうしたら、もう……」
「ごめんね。ざんねんだけど、いちごさんは治らない。……そろそろ全体がカビにやられてしまうだろう。そうしたら、もう……」


 小鳥はじぶんのなかでどくどくという音が大きくなっていくのをかんじました。いちごさんは治らない? じゃあ、あのやくそくは――
 小鳥はじぶんのなかでどくどくという音が大きくなっていくのをかんじました。いちごさんは治らない? じゃあ、ぼくは、ぼくは――


「小鳥さん、わたし、もう、いいの。……もう、いいから。」
「小鳥さん、わたし、もう、いいの。……もう、いいから。」
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「……わたし、あんなふうに食べられて、なくなっちゃうのはぜったいにいや。だから、その……。よ、よければわたしを――」
「……わたし、あんなふうに食べられて、なくなっちゃうのはぜったいにいや。だから、その……。よ、よければわたしを――」


お日さまがようやくのぼりはじめて、空の下の方がきいろくかがやきはじめました。しめってゆがんだいちごのすがたが、うすあかりにてらし出されます。
お日さまがようやくのぼりはじめて、空の下の方が黄色くかがやきはじめました。しめってゆがんだいちごのすがたが、うすあかりにてらし出されます。




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「……わかった。」
「……わかった。」


「え……ほんとうに? ほんとうにいいの? ……わたし、腐ったひどいにおいがするし、カビもいっぱいはえてるし、それに――」
「え……ほんとうに? ほんとうにいいの? ……わたし、腐ったひどいにおいがするし、カビもいっぱいはえてるし、それに――」
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「わたし、小鳥さんに出会えてよかったな。」
「わたし、小鳥さんに出会えてよかったな。」
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 小鳥がおうちを出ると、リスさんとウサギさんにばったり会いました。
「あっ、小鳥さんだ! おはよう!」
「やあ小鳥さん、いっしょに朝ごはん食べよ~!」
「ごめんねウサギさん、ぼくもうさきに食べちゃったんだ。」
「え~そうなの! じゃあ、またあとでね!」
「小鳥さん、またあとでね!」
 森のともだちにさいごのあいさつをして、小鳥は森を出ました。行き先はもちろん、あの空のはるかとおくにある、雲の上です。
 つばさをはためかせ、小鳥は空にとびあがっていきました。きれいな朝やけがかがやいて、ぶあつくうかぶ雲をくっきりとみせてくれます。にぎやかな歌やようきな音楽だって、どこからともなくきこえてきます。すずしい空気が小鳥をやさしくつつんで、とっても気もちよさそうです。
 小鳥は、今ならほんとうに雲の上までとべるだろうとおもっていました。もうかえってこられなくなるほど空たかくにだって、あっというまにとんでいけるだろうとおもっていました。いちごといっしょなら、なにもこわくないような気がしたのです。
 ――しかしそのときとつぜん、ばさばさという大きな音がちかづいてきました。
「小鳥くん、どうもこんにちは。」
 小鳥がうしろをふりかえると、そこにはあの真っ黒でのっぽなカラスがいました。
「きみは……!」
「やあ、ぼくのいとしい小鳥くん。そして――おめでとう。あのときのいちごちゃんを食べてあげられたみたいだね。」
「ど、どうして、それを……。」
「なあに、同族のカンってやつだよ。そんなことより、はやく食べさせて!」
 カラスは大きなつばさをひろげて、小鳥をだきしめようとしますが、ひらりとかわされてしまいました。そのままにげようとした小鳥でしたが、やはりカラスにまわりこまれてしまいます。お日さまはあたたかい色の雲にかくされ、小鳥とカラスを真っ黒なかげがおおいます。
「ひどいなあ小鳥くん、ぼくの言ったこと、ちゃあんとわかっていたくせに。」
「……ちがう! ぼくは……ぼくはあんなりゆうでいちごさんを食べたんじゃない!」
「いいやちがうね、小鳥くん。きみにどんなじじょうがあったのかはしらないけど、これだけはわかる――」
 お日さまはもうはんぶんも顔を出しています。空にはうっすらと、くすんだあお色がかかってきました。
「きみはいちごちゃんのことをほんとうに好きだったんだ。好きだったから――だから食べたくなってしまったんだよ。」
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