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(あとちょい) |
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街の時計台の音が、すぐ上からきこえてきました。きっと小鳥は、もうそろそろじめんにおちてしまうのでしょう。 | |||
けっきょく、小鳥のうそはうそのまま。雲の上にだなんて、まったくとどきませんでした。だけど小鳥は、だいきらいなじぶんがこんなさいごをむかえられて、とってもうれしそうです。 | けっきょく、小鳥のうそはうそのまま。雲の上にだなんて、まったくとどきませんでした。だけど小鳥は、だいきらいなじぶんがこんなさいごをむかえられて、とってもうれしそうです。 | ||
「小鳥くん……?」 | |||
――ハトさんの言ったとおり、いちごは「消費期限切れ」でした。腐っているし、カビだってはえているんだもの。とうぜんのことです。……だけど、すくなくとも小鳥にとって、いちごは「賞味期限切れ」ではありませんでした。 | |||
だって、あの腐ったいちごの味は、あの甘くてすっぱくて、鼻をつくひどい味は、小鳥にとってまちがいなく――おいしかった、から。 | |||
「まさかほんとうになにもせずおちるなんて……。」 | |||
じめんにおりたったカラスは、真っ黒なつばさをはためかせ、みずをはらっています。雨のいきおいはましていくばかりで、小鳥のからだはすでにみずびたしです。 | |||
「まあいいや。……好きだよ、小鳥くん。」 | |||
小鳥は、カラスに食べられました。 |
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