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<br>「うーん、まだまだ足りないな。よし、下りるぞ」 | <br>「うーん、まだまだ足りないな。よし、下りるぞ」 | ||
<br> 権田は意外と軽い身のこなしで、ひょいと床に飛び降りた。こっちがヒヤヒヤする。 | <br> 権田は意外と軽い身のこなしで、ひょいと床に飛び降りた。こっちがヒヤヒヤする。 | ||
<br> | <br> 倉庫でカードを見つけた僕らは、この部屋に戻り、ドアに対峙した。目を凝らすと、天井付近にあるのがテンキーであることがよくわかった。テンキーはドアに埋め込まれており、さらに分厚いプラスチックカバーに覆われている。それをパカリと上げないと、ボタンを押せない設計のようだ。約5メートル上方。なんとかテンキーに手が届かないかと頑張ってみたが、到底高さが足りない。番号はわかったのに、それを入力できない。僕は深い落胆に包まれた。 | ||
<br>「おい、落ち込んでじゃねえ。ドアを破れないか試してみるぞ」 | <br>「おい、落ち込んでじゃねえ。ドアを破れないか試してみるぞ」 | ||
<br> 権田はドアの前で仁王立ちして言った。僕は慌てて立ち上がり、権田に並ぶ。せーのでドアに肩から体当たりした。鈍い音が響く。何度も並んでタックルを繰り返す。 | <br> 権田はドアの前で仁王立ちして言った。僕は慌てて立ち上がり、権田に並ぶ。せーのでドアに肩から体当たりした。鈍い音が響く。何度も並んでタックルを繰り返す。 | ||
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<br> 僕らは同時に天井を見上げた。目覚めたときより少し光量を落とした電灯は、天井に埋め込まれている。天井はつるりと滑らかで、何かが引っかかるような突起は全くない。 | <br> 僕らは同時に天井を見上げた。目覚めたときより少し光量を落とした電灯は、天井に埋め込まれている。天井はつるりと滑らかで、何かが引っかかるような突起は全くない。 | ||
<br>「まだだ。小部屋のドアは外開き。あれを開けて登れば、テンキーに届くかも……」 | <br>「まだだ。小部屋のドアは外開き。あれを開けて登れば、テンキーに届くかも……」 | ||
<br> | <br> ベッドを飛び降りて、権田は小部屋のドアを開け、すぐに閉めてすごすごと戻ってきた。そもそも、小部屋はドアがある壁から離れた位置にある。テンキーには、距離も高さも全然足りない。どうやら、このアイデアも不発のようだ。 | ||
「何か長い棒があれば、ボタンを押せるんですけど……」 | 「何か長い棒があれば、ボタンを押せるんですけど……」 | ||
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<br>「食料は、たぶん5年は持ちますよ。毎日トライし続ければ、いつか成功するかも」 | <br>「食料は、たぶん5年は持ちますよ。毎日トライし続ければ、いつか成功するかも」 | ||
<br>「何回間違えたら永久にロックされるみたいな設定が無いことを祈るか。他に妙案が思いつかなければ、試してみよう」 | <br>「何回間違えたら永久にロックされるみたいな設定が無いことを祈るか。他に妙案が思いつかなければ、試してみよう」 | ||
<br>「なら……何か長い紐の先に錘をつけて、鞭みたいに振ってボタンにぶつけるのはどうです? 紐は包帯か、あるいは服の糸を解いて撚り合わせて作る。錘は……歯とか?」 | |||
<br>「怖いな。……ピッチャー作戦と同じく、プラスチックカバーをうまく持ち上げられそうにない」 | |||
<br>「もう一本の鞭をカバーにぶつけて上げるってのはどうです?」 | |||
<br>「力の向きを考えると、難しい。……待てよ、ボタンへの命中率は鞭の方が高い。紐の長さを一定にしてスイングすればいいんだからな。ピッチャー作戦と組み合わせるか」 | |||
<br>「何かを投げてカバーを上げて、鞭でボタンを押すんですね」 | |||
<br>「錘には、救急箱の錠剤とかを使おう。成功率はとんでもなく低いだろうけど、やらないよりはマシだ」 | |||
<br> 歯は抜かないで済みそうだが、この案は別の発想を生んだ。 | |||
<br>「この部屋にあるものとして、僕らの体がありますね。極論になりますけど、僕の体を解体して繋ぎ合わせて長い棒を作れば、テンキーを押せるかもしれませんよ」 | |||
<br>「実行する気は起こらないが、一応論理的に否定しておくと、人体を解体する道具がない。そんなフランケンシュタイン博士もびっくりのことを、まさか手作業でさせる気か?」 | |||
<br>「いやもちろん僕だって、させたいわけじゃないですよ」 | |||
<br> 発想は悪くないと思ったんだが、なかなかうまくいかないものだ。 | |||
そろそろ脱出方法のアイデアが尽きてきた。顎に手を当てて考えていると、権田が呟いた。 | そろそろ脱出方法のアイデアが尽きてきた。顎に手を当てて考えていると、権田が呟いた。 |
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