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「ハハ、そうくると思ってたぜ」 | 「ハハ、そうくると思ってたぜ」 | ||
ただし藤原は、不可解なものに関して「理屈付け」をしなければ気が済まない性格をしていた。ひとたびその「モード」に入れば、何時間でも熟考してしまう、まさに悪癖だ。その理屈はたいていの場合バカげた話にしかならないが、時には真実へたどり着くための重大な示唆として機能することもある。八方塞がりの行き詰った捜査には、思いのほかこれが効いたりするらしい。だから赤田はいつも、大して推理能力に長けているわけでもないこの浮気調査探偵を訪れていたのだ。 | |||
「まずこの文面から見て取れる情報は、漠然と二つある。まず『意味不明』、そして『消されていない』ってところだな」 | 「まずこの文面から見て取れる情報は、漠然と二つある。まず『意味不明』、そして『消されていない』ってところだな」 | ||
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「回りくどい言い方だな」 | 「回りくどい言い方だな」 | ||
「一つ目は、『見られた』かつ『不利益だった』場合。犯人は被害者が書いたダイイングメッセージを見て、その意味が分かったにしろ分からなかったにしろ、これが自分の罪の発覚に寄与することを危惧した。……しかしこの文章は残っている。犯人は、これを消そうにも消せなかったんだ」 | |||
「どうしてだ?」 | 「どうしてだ?」 | ||
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「なるほど」 | 「なるほど」 | ||
「ああ、あと、このメッセージは既に改変されている可能性もある。犯人が混乱を生じさせるために、元の文章を削ったり書き換えたりしたんだ。あるいはそもそも、このダイイングメッセージ自体、全て犯人が自分で書いたか被害者を脅して書かせたものだったという可能性だって――」 | |||
「うおっ!?」 | 「うおっ!?」 | ||
110行目: | 110行目: | ||
「犯人はダイイングメッセージを見たが、それが自分にとって悪いものだとは思わなかった。きっと犯人はこれを放置しただろう。わざわざ改変するようなこともしていないはずだ。そしてこの場合……犯人はメッセージの解読に成功していた可能性が高いだろう。意味不明なものが都合よく自分の害にはならないと確信するのは難しい」 | 「犯人はダイイングメッセージを見たが、それが自分にとって悪いものだとは思わなかった。きっと犯人はこれを放置しただろう。わざわざ改変するようなこともしていないはずだ。そしてこの場合……犯人はメッセージの解読に成功していた可能性が高いだろう。意味不明なものが都合よく自分の害にはならないと確信するのは難しい」 | ||
「犯人が異常に楽観的だった可能性は?」 | |||
「もちろんそれも排除できない。だけど……『メッセージを解読し、自分に不利益を及ぼさないと分かった』という方がありえそうだろ? ……俺は妥当な論証を求めているわけじゃない。俺自身が納得できる、俺のための理屈を考えているだけだからな」 | |||
「フン、何よりだよ」 | |||
「それで……三つ目。『見られなかった』かつ『不利益だった』……いや、『不利益ではなかった』でも大して変わらないか。とにかく、犯人はあのメッセージ自体を認識できなかったんだ。被害者が死んだ瞬間を確認せずにどこかへ行ってしまったか、あるいは錯乱していて気づかなかったのか。不利益であろうとなかろうと、見ていないんだからしょうがない。こうしてメッセージはそのまま残った」 | |||
「うーん、それで結局どういう話になるんだ?」 | |||
「オーケー、今まではありえそうな個別の事柄を適当に述べていっただけだ。じゃあまとめると……ああ、その前に一つ言えるのは、あの文章が犯人に『不利益ではなかった』という可能性は低そうってことだ。わざわざ暗号みたいな感じで書いたのは、十中八九その内容が自分を殺そうとしてきた奴にバレたくないものだったからだろう。だから、二つ目に言ったようなことの蓋然性は低い」 | |||
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「筆跡は被害者のもの書き換えもなし」→!*1 | |||
堂々・犯痕跡→!3 | |||
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