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<br> 静かな夜だった。花残りの、薄く紫がかった月明かりが辺りを淡く照らし出していた。二人は約束した通りの時間に落ち合い、学校へと向かった。 | <br> 静かな夜だった。花残りの、薄く紫がかった月明かりが辺りを淡く照らし出していた。二人は約束した通りの時間に落ち合い、学校へと向かった。 | ||
<br>「ちゃんと持ってきた?」 | <br>「ちゃんと持ってきた?」 | ||
<br> | <br> 道中、颯が聞くと、澪は首に下げた紐についた小さなコルク蓋の空瓶を、「安心して」というように掲げた。 | ||
<br> 二人は通学路を歩いた。毎日行く道なのだけれど、夜二人だけで歩くというのは、前の教室海以来ずいぶんと久しぶりで、澪は夜特有の辺りの様相――道端の誘蛾灯の揺らぎや木々のざわめき、誰もいない畦道の匂い、虫が奏でる物悲しい響き――がどこか懐かしく思えた。 | <br> 二人は通学路を歩いた。毎日行く道なのだけれど、夜二人だけで歩くというのは、前の教室海以来ずいぶんと久しぶりで、澪は夜特有の辺りの様相――道端の誘蛾灯の揺らぎや木々のざわめき、誰もいない畦道の匂い、虫が奏でる物悲しい響き――がどこか懐かしく思えた。 | ||
<br> 橋に差し掛かったところで、澪は雲の少ない空を見上げた。そこには星が消えてしまうくらいの光りを放つ大きな満月が、まるで夜の支配者のような面持ちで鎮座している。 | <br> 橋に差し掛かったところで、澪は雲の少ない空を見上げた。そこには星が消えてしまうくらいの光りを放つ大きな満月が、まるで夜の支配者のような面持ちで鎮座している。 |
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