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 しかし、時には恵みもある。宇宙飛行士が彼らから聞かされた言い伝えによると、浮島を守るものは稀に「空から落ちてくる」という。これは基本的に、この星に住む翼竜のようなある大型生命体を指している。この巨鳥は生態系の頂点に立っており、陸地期にも海洋期にも変わらず空を飛び回る。巨鳥は時に彼らの浮島にさえ襲い掛かるが、その死体、特にその翼の部分は強固かつ軽いので、浮島を修復する助けになった。しかし驚くべきことは、これが異星人を指している場合もあるということだ。彼らの記録によると、この惑星には少なくとも十四回以上にわたって異星人が不時着しているらしい。彼らは、異星人の使う、人類が呼ぶところの「パラシュート」を引き上げて、補修材に用いていた。
 しかし、時には恵みもある。宇宙飛行士が彼らから聞かされた言い伝えによると、浮島を守るものは稀に「空から落ちてくる」という。これは基本的に、この星に住む翼竜のようなある大型生命体を指している。この巨鳥は生態系の頂点に立っており、陸地期にも海洋期にも変わらず空を飛び回る。巨鳥は時に彼らの浮島にさえ襲い掛かるが、その死体、特にその翼の部分は強固かつ軽いので、浮島を修復する助けになった。しかし驚くべきことは、これが異星人を指している場合もあるということだ。彼らの記録によると、この惑星には少なくとも十四回以上にわたって異星人が不時着しているらしい。彼らは、異星人の使う、人類が呼ぶところの「パラシュート」を引き上げて、補修材に用いていた。


 これを言われて初めて、宇宙飛行士はこの浮島の一部に自身の機体に搭載されていたパラシュートが充てられていることに気づいた。こうやって惑星にやってくるパラシュートは、当然ながら高度な宇宙進出文明によって作られており、非常に強固な繊維を有しているため、これによる補修は数十年から長ければ百年もの間機能する。彼らの歓迎は、どうやらこの「恵み」に対する感謝の表れだったらしい。彼らは豪華に盛り付けられた魚料理を宇宙飛行士に捧げてきたが、未知の異星人の提供するものを食べるのは危険だし、そもそもこの惑星の外気はヒトに適さず、宇宙服を脱いで何かを食べるということ自体ができなかったので、汎用翻訳機を通じて丁重に断っておいた。
 これを言われて初めて、宇宙飛行士はこの浮島の一部に自身の機体に搭載されていたパラシュートが充てられていることに気づいた。こうやって惑星にやってくるパラシュートは、当然ながら高度な宇宙進出文明によって作られており、非常に強固な繊維を有しているため、これによる補修は数十年から長ければ百年もの間機能する。彼らの歓迎は、どうやらこの「恵み」に対する感謝の表れだったらしい。彼らは豪華に盛り付けられた「魚料理」を宇宙飛行士に捧げてきたが、未知の異星人の提供するものを食べるのは危険だし、そもそもこの惑星の外気はヒトに適さず、宇宙服を脱いで何かを食べるということ自体ができなかったので、汎用翻訳機を通じて丁重に断っておいた。


 こういった宇宙遭難に備えて、宇宙船には救難信号の発信機と、半永久的に稼働できる生命維持室が用意されていた。しかし、宇宙服単独の生命維持機能は、わずか5日間で終了する。宇宙飛行士は、それまでに海底のどこかに沈む宇宙船を捜し出さなければならなかった。このだだっ広い、青黒い四角形の世界で、何をどう見つけることができるのか。幸いにも、浮島の住民たちは宇宙飛行士に休息の場を与えてくれたが、疲労は募るばかりであった。
 こういった宇宙遭難に備えて、宇宙船には救難信号の発信機と、半永久的に稼働できる生命維持室が用意されていた。しかし、宇宙服単独の生命維持機能は、わずか5日間で終了する。宇宙飛行士は、それまでに海底のどこかに沈む宇宙船を捜し出さなければならなかった。このだだっ広い、青黒い四角形の世界で、何をどう見つけることができるのか。幸いにも、浮島の住民たちは宇宙飛行士に休息の場を与えてくれたが、疲労は募るばかりであった。
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 水平線に、この星の太陽が、沈んでいる。海から反射する白い閃光が、まるで生き物のような軌道を描いて泳ぐ。雲は濃い青の夕焼けに飲み込まれ、褪せた埃のように見えた。この星の生物が地球を訪れ、昼と夜との間に挟まる毒々しいオレンジの空を見たとき、やはり不気味に思うだろうか。日の入りの逆方向に目を向けると、夜空が暗くて見えないせいで、そこに輝く星が見えることに気づいた。
 水平線に、この星の太陽が、沈んでいる。海から反射する白い閃光が、まるで生き物のような軌道を描いて泳ぐ。雲は濃い青の夕焼けに飲み込まれ、褪せた埃のように見えた。この星の生物が地球を訪れ、昼と夜との間に挟まる毒々しいオレンジの空を見たとき、やはり不気味に思うだろうか。日の入りの逆方向に目を向けると、夜空が暗くて見えないせいで、そこに輝く星が見えることに気づいた。
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 翌朝、宇宙飛行士が目を覚ますと、何やら辺りが騒がしかった。事情を聴いてみると、どうやら昨夜、住民の一人が寿命を迎えて死んだらしく、今は葬儀を行っているという。しかし、宇宙飛行士の目に映るのは、悲しみに暮れる住民たちの姿ではなく、むしろ陽気な宴会とさえいえる代物だった。住民は「魚」をたらふく食べ、酩酊作用を引き起こすらしい貝のエキスを呑みながら、例のうがいのような音でかすれた弦楽器のようなハーモニーを奏でている。宇宙飛行士はたまらず近くの住民をつかまえ、その老人の死が悲しいとは思わないのかと尋ねた。その住民が訝しげに語ったことによれば、確かに彼が陸地期を待たずして死ぬことになったのは残念だが、結局はいつかのタイミングで、陸地期の周期と何度めかも分からない生まれ変わりの周期を一致させ、陸地に還っていくものだという。それが遅かろうが早かろうが、本質的には違わず、海の底に名前を刻む瞬間は誰にでも訪れるのだ。
 海だけの世界に生まれ落ちて、全てを海に見出し、かつ海に全てを見いだす彼らの自然観は、しかし宇宙飛行士には少し不気味に映っていた。それはあるいは、この時遠くの空に浮かんでいた黒く分厚い雲の接近や、徐々に高く、激しくとぐろを巻きはじめた海流の縦横のうねりに、恐るべき嵐の動乱を予感させられたからかもしれない。とにかく、その日が沈まないうちに、浮島は暴風雨に見舞われた。
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