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 「……無辜の小さな子供を巻き込むわけにはいかなかった。それだけだよ」
 「……無辜の小さな子供を巻き込むわけにはいかなかった。それだけだよ」


 「まだそんなこと言ってるのね。近づいて黴野郎だけ狙い撃ちすればそれでよかったじゃない。ま、とにかく……あなたはあの時から民衆の信頼を失ったの。もうあなたは革命の先導者なんかじゃない。自分が何て呼ばれてるか知ってるでしょ?『<ruby>弾詰まりの老翁<rt>ジャムおじさん</rt></ruby>』よ!」
 「まだそんなこと言ってるのね。近づいて黴野郎だけ狙い撃ちすればそれでよかったじゃない。ま、とにかく……あなたはあの時から民衆の信頼を失ったの。もうあなたは革命の先導者なんかじゃない。自分が何て呼ばれてるか知ってるでしょ? 『<ruby>弾詰まりの老翁<rt>ジャムおじさん</rt></ruby>』よ!」


 「……私は気に入っているよ、その呼び名も」
 「……私は気に入っているよ、その呼び名も」
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 青年は、すべてを諦めて、すべてを放棄して、ぼうっとしていた。窓の外に横たわる、美しい山々の、その奥の奥の方を眺めていた。この話が終われば、自分は邪悪な扇動者――{{傍点|文章=次の皇帝}}――の弾丸を受けて死ぬ、そのことが分かりきっていたからだ。青年の感情を司るところは、急速に、氷のように冷たくなっていった。
 青年は、すべてを諦めて、すべてを放棄して、ぼうっとしていた。窓の外に横たわる、美しい山々の、その奥の奥の方を眺めていた。この話が終われば、自分は邪悪な扇動者――{{傍点|文章=次の皇帝}}――の弾丸を受けて死ぬ、そのことが分かりきっていたからだ。青年の感情を司るところは、急速に、氷のように冷たくなっていった。


 「あれ……おーい!聞いてる? もう飽きちゃったの? はあ。つまんないなあ。{{傍点|文章=あの犬}}も最期はこんなだったよ」
 「あれ……おーい! 聞いてる? もう飽きちゃったの? はあ。つまんないなあ。{{傍点|文章=あの犬}}も最期はこんなだったよ」


 青年は、旗子が引き金に指をかけていることに気づいた。しかし、不思議と恐怖は無かった。それどころか、愚鈍にも、いかなる感情さえもが湧いてこなかった。そのあらゆる毛先から骨の髄に至るまで、自身の全てをしてもなお、何も感じ取ることができなかったのである。何にも感動することなく、極めて浅薄に、怠惰の内に、青年は自身の生涯を終えようとしていた。
 青年は、旗子が引き金に指をかけていることに気づいた。しかし、不思議と恐怖は無かった。それどころか、愚鈍にも、いかなる感情さえもが湧いてこなかった。そのあらゆる毛先から骨の髄に至るまで、自身の全てをしてもなお、何も感じ取ることができなかったのである。何にも感動することなく、極めて浅薄に、怠惰の内に、青年は自身の生涯を終えようとしていた。
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