「利用者:キュアラプラプ/サンドボックス/丙」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
131行目: 131行目:
「よし、俺のターン。もちろん黒の4だ」
「よし、俺のターン。もちろん黒の4だ」


 そう言って、男はさらに4段を下る。彼はその道中で、幸運にもクリームパンダが使用して投げ飛ばしたJKを拾うことができた。
 そう言って、男はさらに4段を下る。


「お、ラッキー。……で、一応言っとくが、俺はルール違反なんて一切してないぜ? 『相手の手札をどっかにぶちまけてはならない』なんて言ってなかったよな? さて、これでお前は俺を殺せない。さっき見せたばかりの二枚目の黒の4を疑って、無駄な『駄段々』でもしてみるか? 俺がお前の5段下にいる以上、銃を失ったお前の攻撃は、ひとつも俺には届かない。まあ、ゲームのルールを無視して突っ込んできたって、別に俺は構わないぞ。愚かな思想者に出し抜かれた、最も愚かなサーカス執行人として、お前があそこの警官に射殺されるだけだからな。悔し紛れに俺にしょんべんでもひっかけてみるか? 5段下まで届くお前唯一の攻撃手段だ!」
「言っとくが、俺はルール違反なんて一切してないぜ? 『相手の手札をどっかにぶちまけてはならない』なんて言ってなかったよな? さて、これでお前は俺を殺せない。さっき見せたばかりの二枚目の黒の4を疑って、無駄な『駄段々』でもしてみるか? 俺がお前の5段下にいる以上、銃を失ったお前の攻撃は、ひとつも俺には届かない。まあ、ゲームのルールを無視して突っ込んできたって、別に俺は構わないぞ。愚かな思想者に出し抜かれた、最も愚かなサーカス執行人として、お前があそこの警官に射殺されるだけだからな。悔し紛れに俺にしょんべんでもひっかけてみるか? 5段下まで届くお前唯一の攻撃手段だ!」


 観客席はたちどころに動揺し始めた――この状況で、クリームパンダに何ができるだろうか? 彼は拳銃を失い、思想者を殺せなくなったばかりか、このゲーム自体に勝利することさえ不可能になったのではないか? 思想者は黒の4を二回とも使い終わったし、「革命」を起こせるカードも持っていないから、嘘の「数字カード」を宣言して階段を下っていくしかなく、これはクリームパンダにとっても同じことだ。しかし、最も下の段にたどり着いた後、ゴールをするために嘘の宣言をしてしまうと、相手に「駄段々」を行われて即座に敗北のペナルティを食らうことになるのは目に見えている。ルールに則れば、ゲームはここで完全な膠着状態に陥るだろう。
 観客席はたちどころに動揺し始めた――この状況で、クリームパンダに何ができるだろうか? 彼は拳銃を失い、思想者を殺せなくなったばかりか、このゲーム自体に勝利することさえ不可能になったのではないか? 思想者は黒の4を二回とも使い終わったし、「革命」を起こせるカードも持っていないから、嘘の「数字カード」を宣言して階段を下っていくしかなく、これはクリームパンダにとっても同じことだ。しかし、最も下の段にたどり着いた後、ゴールをするために嘘の宣言をしてしまうと、相手に「駄段々」を行われて即座に敗北のペナルティを食らうことになるのは目に見えている。ルールに則れば、ゲームはここで完全な膠着状態に陥るだろう。
149行目: 149行目:
 すると、クリームパンダは観客席に向き直った。
 すると、クリームパンダは観客席に向き直った。


「市民たち、どうだい? 俺様は今、銃も手札も失くしちまったよ。『駄段々』のルールの中では、こいつを殺すことは絶対にできないだろう。俺様はもちろん動けないし、思想者が俺様に殺されるためにわざわざ近づいてきてくれるなんてことはありえない。でも、ルールは死んでも守らないといけないよな。だから、こいつを殺してサーカスをちゃんと成し遂げるためには、一度このゲームを終わらせる必要がある――それも、俺様の勝利によって終わらせる必要がある。もしもこのゲームに負けてしまったら、俺様は不名誉なサーカス執行者としてこいつの言う通り国に殺され、見せしめにされてしまうだろう。サーカスは{{傍点|文章=政策}}だからな。当然だ。……おっと、ちょっと喋りすぎたか。しかし、どうする? このままだと、俺様はゴールの前でこの思想者と延々嘘の宣言の譲りあいをすることになってしまう。こんな状況で、一体どうすれば勝利を掴めるのか……。
「市民たち、どうだい? 俺様は今、銃も手札も失くしちまったよ。『駄段々』のルールの中では、こいつを殺すことは絶対にできないだろう。俺様はもちろん動けないし、思想者が俺様に殺されるためにわざわざ近づいてきてくれるなんてことはありえない。でも、ルールは死んでも守らないといけないよな。思想者に一杯食わされるサーカス執行者なんていらないんだ。癇癪を起こしてルールを破れば、こいつの言う通り俺様は殺されるだろう。だから、こいつを殺してサーカスをちゃんと成し遂げるためには、一度このゲームを終わらせる必要がある――それも、俺様の勝利によって終わらせる必要がある。もしもこのゲームが膠着状態に陥り、こいつの思惑通り身動きが取れなくなってしまうようなことがあっても、恥さらしの俺様は不名誉なサーカス執行者として国に殺され、見せしめにされてしまうだろう。サーカスは{{傍点|文章=政策}}だからな。当然だ。……おっと、ちょっと喋りすぎたか。しかし、どうする? このままだと、俺様はゴールの前でこの思想者と延々嘘の宣言の譲りあいをすることになってしまう。こんな状況で、一体どうすれば勝利を掴めるのか……。


 喜べ。俺様には一つ、{{傍点|文章=驚くべき打開策}}がある!」
 喜べ。俺様には一つ、{{傍点|文章=驚くべき打開策}}がある!」
175行目: 175行目:
「さて、思想者、お前のターンだ。ビッヒッヒ、じっくり考えるがいい」
「さて、思想者、お前のターンだ。ビッヒッヒ、じっくり考えるがいい」


 思想者が持っている手札は、先程と変わらない七枚のカードに、拾ったJKを加えた計八枚で、黒の4が二枚、赤のJが二枚、赤の10が二枚、赤の9が一枚とJKが一枚である。彼は8段目まで階段を下りた後、エスカレーターによって1段上昇させられたから、今は7段目にいることになる。さて、この状況で、彼はどの「数字カード」を使うべきだろうか? 不幸にも、赤のカードの数字はすべて7より大きいから、階段を上りきってしまう。赤のカードは使えない。なら、黒の4か? 否。黒の4はもう二枚とも使ってしまっているし、三枚目があると嘘をつくにしても、JKで手札を見たクリームパンダには通用しない。ここで「駄段々」を行われたが最後、思想者はクリームパンダと階段上の位置を入れ替えられ、エスカレーターの崖際に立たされるだろう。そこからは、先述したのと全く同じ展開になるだろう。この状況を動かす手段は、事実、存在していなかった。思想者はここで嘘の宣言をするしかなく、しかし嘘の宣言をすることは敗北を意味している。このジレンマは、エスカレーターが動かなかった場合に想定された「膠着状態」におけるそれと確かに似ていたが、しかし思想者のジレンマはもっとあくどかった――ゴールをしたら敗北してしまうのではなく、何をしても敗北してしまうのだ。
 思想者が持っている手札は、先程と変わらず、黒の4が二枚、赤のJが二枚、赤の10が二枚、そして赤の9が一枚だ。彼は8段目まで階段を下りた後、エスカレーターによって1段上昇させられたから、今は7段目にいることになる。さて、この状況で、彼はどの「数字カード」を使うべきだろうか? 不幸にも、赤のカードの数字はすべて7より大きいから、階段を上りきってしまう。赤のカードは使えない。なら、黒の4か? 否。黒の4はもう二枚とも使ってしまっているし、三枚目があると嘘をつくにしても、JKで手札を見たクリームパンダには通用しない。ここで「駄段々」を行われたが最後、思想者はクリームパンダと階段上の位置を入れ替えられ、エスカレーターの崖際に立たされるだろう。そこからは、全く同じ展開だ。エスカレーターが起動され、思想者は敗北を強いられる。この状況を動かす手段は、事実、存在していなかった。思想者はここで嘘の宣言をするしかなく、しかし嘘の宣言をすることは敗北を意味している。このジレンマは、エスカレーターが動かなかった場合に想定された「膠着状態」におけるそれと確かに似ていたが、しかし思想者のジレンマはもっとあくどかった――ゴールをしたら敗北してしまうのではなく、何をしても敗北してしまうのだ。


 「膠着状態」ならば、前後に小さな数字を宣言し続けることで、ゴールはできずともターンを回すことはできた。しかし思想者は、何もできない。ターンを回すことすらできないのだ。――そして、それが実際のところ「ターンを渡さないための度を越した遅延行為」などではないとどれだけ主張しようとも、敗北を避けるためにターンを回さないことは、結果として、明確にルールによって禁止されているその行為と見た目上全く変わらなかった。これこそが、クリームパンダの「打開策」だった。{{傍点|文章=何をしても敗北するし、何もしなくても敗北する}}。この思想者は、取りうる行動のすべてが敗北に直結する袋小路に陥れられてしまったのだ。
 「膠着状態」ならば、前後に小さな数字を宣言し続けることで、ゴールはできずともターンを回すことはできた。しかし思想者は、何もできない。ターンを回すことすらできないのだ。――そして、それが実際のところ「ターンを渡さないための度を越した遅延行為」などではないとどれだけ主張しようとも、敗北を避けるためにターンを回さないことは、結果として、明確にルールで禁止されているその行為と見た目上全く変わらなかった。これこそが、クリームパンダの「打開策」だった。{{傍点|文章=何をしても敗北するし、何もしなくても敗北する}}。この思想者は、取りうる行動のすべてが敗北に直結する袋小路に陥れられてしまったのだ。
8,864

回編集

案内メニュー