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教室へ戻ろうと階段を上がりかけたところに、諏訪が壁にもたれて立っていた。 | 教室へ戻ろうと階段を上がりかけたところに、諏訪が壁にもたれて立っていた。 | ||
<br>「盗み聞きとは趣味が悪いぞ」 | <br>「盗み聞きとは趣味が悪いぞ」 | ||
<br> | <br>「僕も当事者なんだ。話くらい聞かせてよ」 | ||
<br> 諏訪と俺は並んで階段をゆっくりと上がった。気づけば口に出していた。 | <br> 諏訪と俺は並んで階段をゆっくりと上がった。気づけば口に出していた。 | ||
<br>「俺が抜けてるせいで河北に迷惑をかけた。それも多大な」 | <br>「俺が抜けてるせいで河北に迷惑をかけた。それも多大な」 | ||
<br>「それを言うなら、僕にも責任の一端はある」 | <br>「それを言うなら、僕にも責任の一端はある」 | ||
<br>「わがままなことを言うが、気休めを聞きたい気分じゃないな」 | <br>「わがままなことを言うが、気休めを聞きたい気分じゃないな」 | ||
<br> | <br>「そうか。なら、もっと注意深くなれるように心がけるんだね」 | ||
<br>「そうだな」 | <br>「そうだな」 | ||
<br> 教室に着き、俺は河北の机を一瞬見てから、自分の席に座る。諏訪も前の椅子にまたがる。残ったプリントが目の前にあるが、やる気は湧いてこない。青い定規を受け取ったときの河北の、そのときだけは警戒の解けた安心した顔を思い出して、ふと思った。 | <br> 教室に着き、俺は河北の机を一瞬見てから、自分の席に座る。諏訪も前の椅子にまたがる。残ったプリントが目の前にあるが、やる気は湧いてこない。青い定規を受け取ったときの河北の、そのときだけは警戒の解けた安心した顔を思い出して、ふと思った。 | ||
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<br>「明日の昼休みにでも、聞いてみようかな」 | <br>「明日の昼休みにでも、聞いてみようかな」 | ||
<br> 諏訪が吹き出した。腹をかかえて心底おかしそうに笑う。 | <br> 諏訪が吹き出した。腹をかかえて心底おかしそうに笑う。 | ||
<br> | <br>「柏原! 明日は休みだよ! 君ってひとは、本当に抜けてるね!」 | ||
<br> 俺は両手を挙げて天を仰ぎ、笑った。前途はまだまだ険しいらしい。 | <br> 俺は両手を挙げて天を仰ぎ、笑った。前途はまだまだ険しいらしい。 |
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