「ミルン現象」の版間の差分

人類においては、特に子供にミルン現象が見られる。古くから、子供が塀や柵、板の上などの細長い部分を歩きたがることは経験的によく知られていた。現代でも同様の行動はよく見られる。子供が塀の上をバランスを取りながら歩行したり、道の白線だけを踏んで帰ったりすることがこれに当たる。<br>一方で、子供がある特定の色のタイルを踏んで歩くという現象もある。しかしこの現象は、人類の他には見られていない<ref>そもそも色分けられた地面自体が人工物であり、当然と言える。</ref>。この現象は、俗に'''色タイル現象([[英]]:color tile phenomenon)'''と呼ばれている。

前述の通り、ジョン・エルロンが提唱した<ref>正確には陸棲哺乳類に限っていた。</ref>。後続の研究により、この学説はほぼ定説化している。<br>大型哺乳類での実験でも、人類や小型哺乳類ほど顕著ではないが、ミルン現象が確認されている。<br>水棲哺乳類では、水底の細長い突起に沿って泳いだり、それに身を擦りつけたりする行動が確認された。特にイルカでは顕著な反応が見られた。<br>身近な例としては、ネコが塀の上を歩いたり、サルが縄をつたって遊んだりすることが挙げられる。<br>ミルン現象が見られたどの哺乳類においても、若い個体で特にミルン現象が見られる傾向があった。このことは'''若個体偏向性'''の典型的な例とされている。<br>また、体に対する脳の体積比が大きい動物は、より強い反応が見られている。

ハチやアリなどのハチ目の昆虫にミルン現象が確認されている。これらの生物はいずれも社会性昆虫であり、知能的な行動をすることが多い種である。また、哺乳類におけるミルン現象と区別するために、'''「特殊ミルン現象」'''と呼称される。<br>しかし、昆虫におけるミルン現象は、テントウムシによく見られる、'''ヤコブの梯子現象([[英]]:Jacob's ladder phenomenon)'''(可能な限り上へ歩行しようとし、限界に達すると飛び立つ現象のこと)の一部ではないかという説もある<ref>チャン・リーバイ氏は、ミルン現象は突起の上を平行に移動する現象であり、ヤコブの梯子現象とは根本的に異なるという立場を取っている。</ref>。

ミルン現象には、脳の下垂体から放出される、[[アントルキシン]]という物質が関係している。アントルキシンは授乳に関わるホルモンとして知られている。ミルン現象が見られた多くの哺乳類で、このホルモンの血中濃度が上がることが観測されている。アントルキシンは、授乳を行う哺乳類特有のホルモンである。ミルン現象が起こる理由は、哺乳類に必須である'''アントルキシンの副作用として細長い突起の上を歩行したくなるから'''だと考えられている。<br>また、若個体偏向性がある理由は、アントルキシンは本来授乳をするためのホルモンであり、'''個体が成長し授乳が可能になるに伴って、副作用を引き起こす量が減るため'''だと考えられている<ref>この理論は、人間において女性に比べ男性の方によくミルン現象が見られることへの説明にもなっている。この理論に沿い、その他の哺乳類でも同様の傾向があるか研究が続けられている。</ref>。<br>脳の体積比が大きいほど顕著にミルン現象が見られる理由は、'''アントルキシンの血中濃度が高くなるため'''だと推測されている。